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武富士、追徴課税1330億円取消し判決に違和感

2007-05-28 18:01:50 | Weblog
 消費者金融大手「武富士」元会長の長男が元会長夫妻から贈与された海外法人株をめぐる税務訴訟で、東京地裁は23日、長男に対する約1330億円の追徴課税を取り消す判決を言い渡した。長男は国税局の指摘に応じて延滞税を含めた約1585億円を全額納付したうえで争ってきた。原告側代理人の試算では、現時点で判決が確定した場合、国は還付加算金を含め約1715億円を返還する必要があるという。(asahi.comより要約)

 私は法に関しては全くの素人であるが、金額がすごいので興味をもってしまった。弁護士の報酬も桁外れだと思うが、そういう勘ぐりはさて措き、素人の立場から疑問を述べたい。

 当時の税法では、国内に住所がない場合は国外財産の贈与には課税されないと規定されていたそうだ。争点は、香港約65%、国内約26%の長男の生活の本拠をどう判断するかであった。

 東京地裁は原告の住所を海外であると認めたわけだが、その判断には多くが納得するような合理的な根拠があったわけではないと思う。裁判官が違えば別の判断をする可能性が高い。つまり裁判官の恣意性がたいへん出やすいケースで、判決がどちらに転んでも敗訴した方は納得がいかないだろう。

 贈与された巨額の財産は金に困った人々から集められたものであり、それが税法の抜け穴を利用して贈与税を免れたという点に、納税者として不快を感じる人がいるかもしれない。しかしそれは別の問題なので触れない。

 双方の言い分の妥当性が、たとえば51:49であっても判決は100:0という極端なものになってしまうことが気になるのだ。ここに合理性があるとは思えない。51:49のような、判断が極めて困難な場合、当事者にとって、判決は運まかせに近いのではないか。つまりくじ引きのように、裁判官の当たり外れによることになる。

 世代間の格差固定の防止や人生の出発点での機会均等という、贈与税の精神を重視する裁判官ならば、海外居住を課税逃れの方便として否定し、課税を認めるだろう。また法の精神よりも条文を厳格に解釈する立場の裁判官であれば、今回の判断になるだろう。

 わが国には、自衛隊は憲法9条で禁止されている「戦力」ではないという「自在な解釈」が行われてきた伝統がある。条文の厳格な解釈より現実を優先したわけだ。衆人監視の憲法解釈でもこのとおりなのだから、海外居住の当否などその気になれば自由にできる。

 巨額の資産の所有権すべてをどちらかの一方だけが得るという判決、そして判決は合理性よりも偶然の要素に左右される、という司法の現実には違和感がある。交通事故では過失割合に応じて損害を分担することが普通であるが、このような経済事件にもある比率で按分することは考えられないだろうか。

 むろんこの種の事件に中間的な判決が難しいのはわかる。それは素人の暴論といわれるかもしれない。法の論理に折り合いをつけなければならないからだ。しかし多少無理でも極端な判決しか出せない制度よりはいくらかまし、と言えるのでないかと思う。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (memaido)
2007-05-28 18:38:55
はじめまして、楽しく拝見させていただきました。
またちょくちょく拝見させていただきます。
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memaidoさま (okada)
2007-05-28 21:52:45
ご覧いただきありがとうございます。楽しく読めるようなものを目指します。どうぞよろしくお願いします。
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