説明板
公園内にある鼻ぐり井手の原寸模型
馬場楠井手の鼻ぐり ( ばばくすいでのはなぐり ) は、
熊本県菊陽町の馬場楠にある特別な構造の用水路で、
この構造により、阿蘇方面から流れてくる土砂が堆積することなく水を通す仕掛けである。
加藤清正が造らせたものである。
鼻ぐりの語源
鼻削 ( はなぐり ) 、鼻木、牛の鼻に通す環とある。
穴を穿って水流を結ぶやり方がこれに似ているからである。
別名
この場所の地名 「 辛川の九十九刎 」 ともいう。
発音はからかわの つくもばね、外に つづらおれとも称した。
辛川は当時の名称で、益城郡沼山津 ( ぬやまづ ) 手永、辛川村。
沼山津は横井小楠の私塾 「 四時軒 」 があった場所でもある。
加藤清正は白川沿いの馬場楠 ( ばばぐす )村に大きな堰を作り、
頑丈な人工の用水路 ( 井手 ( いで ) =人工の川 ) を掘り、
下流の託麻、益城、合志の3郡の田に水を引いた。
その方法とは
1.石堰1か所 長さ63間 ( 約113メートル ) 馬場楠村
2.井手 913間 ( 約1638メートル ) 堰の取り入れ口から鼻ぐりまで
3.井手 215間 ( 約387メートル ) 山中の岩を掘りぬいた距離を造り、
3番目の387メートルの所は山の中を掘り抜いている。
底は岩になっており、
白川の流域では阿蘇の火山灰 ( ヨナと称する ) による土砂が多く、
岸が高いところでは、さらえても土砂は捨てることができない。
そこで鼻ぐり ( 地下の穴 ) を80箇所作った。
これは岩の上の方を、橋の如く残し、
その下だけを刳りぬくことで穴になっており ( はなぐり ) 、
水は狭いところを流れ、上の広いところに水を貯えるようにする。
すると川底の水は激流となり、土砂がかき回され、川下に流れるという仕掛けである。
別の言葉でいうと、川底に高さ4m×幅1mの仕切岩盤を残し、
水の通る下辺には直径約2mの穴が左右交互にくり抜かれ、
一つの穴から出た水は必ず壁につきあたり渦巻くことになる。
流れくる火山灰は舞い上がり、底に堆積することなく下流に流れる仕組みになっている。
沈砂施設
『 肥後藩農業水利施設の歴史的研究 』 による沈砂施設とあり、
加藤清正は 「 湾洞 」 という言葉で用水路内の沈没を防いでいるとある。