Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

シーズン最後を飾るツアー

2013-10-27 | アウトドーア・環境
素晴らしい黄金の十月であった。週後半から天候の推移を注視していたので最も条件の良いバーデン・バーデンに出かけることになった。出かける前には雨が降っていたのだが、南へ車を走らせるとそこは乾燥して陽がさんさんと射していた。予想以上に岩肌も乾いていて、夏よりも条件が良いぐらいであった。

出かける前に本来は同行する筈であったルートヴィヒスハーフェン支部の登山リーダーの家に立ち寄って、ガイドブックを二冊貸して貰った。何よりもクラシックの推薦ルートを登りたいからである。一つには条件に拘わらず比較的安全に登れることと、ハイシーズンではなくなっているので待たないでも登れると思ったからである。

案の定、バーデン・バーデンのバッテルトのクラシックルートの二つを登れた。一つは今まであまり登っていない最も大きく急峻な壁であるファルケンヴァントのボックグラートと呼ばれるもので、その大きな壁を直接攻めるものではなく、横の肩から入って行って最後に壁の上部に出るというものである。所謂ノーマルルートで難易度の評価も4bぐらいであるが、推薦五つ星なので登っておかないと話にならない。

最初の出だしは肩の岩角に登るまでの緩傾斜のより難しいルートを壁の美しさから選んだ。最初の楔を効かすまでの緊張とその肩に登りつくまでの細かな動きは十二分に難易度五級であった。その肩から本尾根の肩までの短めなピッチを相棒に任せた。彼の比較的得意な手掛かりでぐいぐいと登れる場所で危なげなかった。さて最後の仕上げは、尾根の急峻な場所を綺麗な割れ目に手を掛けて攀じ登り、そこから本壁に出て頂上に抜ける。そこはもうアルテスシュロースから降りてくる登山道にあるパトロール小屋だ。如何にもメインのメインコースらしい環境でもある。若い単独のクライマーに声を掛けられたが、なるほど彼の言うように難易度以上に緊張感もあり、最初の出だしから素晴らしいのはまさに五つ星であった。次回は先行してフランス人が登っていた壁のど真ん中のルートを登ろう。それ以外にも沢山のルートが開拓されていて涎の出そうな壁であった。

午前中最初に出会ったのが若いテーュビンゲンからのペアーで、最もそこで難易度の高い岩を示してくれた。難易度5.13程度らしい、自身は5.12以上の難易度の開拓に来ていた。彼らは、「プファルツから来ているんだから中間支点の設置には全く問題ないんだろうね」と、我々のことを評価していた。上から懸垂下降で降りて、軽く昼食とする。

その後、次の目標であるここでボックグラートに次ぐぐらいに大きな標高差を登れるブロックグラートを目指す。そのお目当てはドイツで最も美しいクライミング写真が撮れるという場所である。なるほど月末には映画撮影グループが入るらしい。誰の映画だろうか?そして取り付まで行くと登ったことがあるのを思い出した。昨年の事だ。なぜ思い出さなかったかというと、肝心の前峰の頭から本峰南壁への乗り移りをやっていなかったからである。先ずは最初の頭までを相棒に遣らせて、そこからいよいよ対岸に乗り移るのである - 丁度この写真の場所である。先日あまりにも広いツッパリ登攀が足の長さで熟せなかった危惧はここではなかった。下方に行けば多少近づくからで、対岸を観察して楔を準備してから、足を掛けるが上からの確保になるのでザイルの張力も使えて全く問題とはならない。

しかし、対岸に移ってから最初のハーケンに至るまでが中々の迫力である。割れ目を使うのであるが、小さめの足場や斜めの足場を上手に使わないといけないので本格的な割れ目登攀である。冬の室内ではなかなか練習の出来ないものであるが、左右への緊張の作り方で登った。右側のハーケンからその上も再び左の割れ目に戻る形で中々細かな動きを要求されるので緊張も続き、その難易度や推薦四つ星以上に登り甲斐があった。頭に出るとバーデン・バーデンが美しく、隣の前回も登った塔の人影などを上から俯瞰できるのだ。そして最後の尾根筋を相棒が登ると、夕焼けに染まるパトロール小屋であった。夏シーズンの締めくくりを飾るにふさわしい素晴らしいツアーであったのだ。



参照:
バーデン・バーデンを登る 2012-06-17 | アウトドーア・環境
礫岩の黄金の十月 2013-10-04 | アウトドーア・環境
ガブリエリ・ルッペに学ぶ 2013-07-23 | 文化一般
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