2月8日(水)、昨日から始まった標記の書道展の展示の調整作業に行ったついでに、学生1名を同行させて、デモンストレーションを実施してきました。3年生の渡邊浩樹くんです。彼は書も水墨画も堪能ですので、美波町の方々にも喜んでいただけることを期待しての選定です。10:00に大学を出て、11:30に会場に到着しました。

例によって、南部地区コーディネーターの久米さんにもお手伝いいただきました。ここは彼の住宅から歩いて数分の場所です。会場の日和佐図書・資料館の前には、既に2年生の遠山颯希さんが5日に書いてくれた、立派な看板が展示されていました。

2階ギャラリーで、展示の調整をおこないました。5日の搬入では作品を多く展示しすぎて、会場が狭くなってしまった反省があって、パネルを2枚減らし、作品は12点減らしました。だいぶすっきりして鑑賞しやすくなりました。今回は展覧会のテーマ通り、梅に関係する作品だけに限定し、全部で58点の作品を展示することにしました。この日は、NHK阿南放送局の記者の方も来られて、渡邊くんはインタビューを受けました。数日後にローカルニュースのコーナーで紹介されるそうです。

その後、会場で鑑賞していらっしゃたお客様や、館長様の前で、渡邊くんが短冊に梅の墨彩画を描き始めました。館長様が、会場に「しだれ紅梅」の鉢物を飾って下さっていたので、渡邊くんは短冊にそれを写生しました。お客様も興味深そうに見ておられます。落款もしっかりいれました。


でき上った作品は記念にお客様たちにプレゼントして、とても喜ばれました。ご自宅に飾って下さるそうです。

15:00になったので片付けをして帰ることにしました。渡邊くんが折角はじめて美波町まで来たので、久米さんにご案内いただき薬王寺に参拝しました。

これが、書道展の題材にも使われた俳句に登場する「厄坂」です。参拝者はこの石段に厄年の数だけ銭を置いていって厄を祓うまじないをします。角度が緩めの女厄坂とさらに急な男厄坂があります。写真は女厄坂です。

坂を上り切った境内からは、港と太平洋がきれいに見えました。この日はとても天気が良くラッキーでした。

薬王寺の一番奥まったところに建っているのが「瑜伽塔」です。通常のお寺では「多宝塔」と呼んだりしますが、瑜伽は現代風にいえば「ヨガ」で、瞑想修行をする場所だったと思います。現代になって再建されたもので紅白が青空に映えていました。・・・平面が方形の初層の上に平面が円形の上層を重ね、宝形造(四角錐形)の屋根を有する二層塔婆を「多宝塔」と呼称します。真言宗寺院によくある形式だそうです。唐の顔真卿の40歳頃の作品に有名な「多宝塔碑」があります。

薬王寺の本堂の扁額「医王閣」が、すばらしい「デザイン書道」でした。空海の書法の延長にある看板用鳥書の一種ですが、おそらくは江戸時代の勘亭流の影響も受けています。看板全体の面積の中で中央に文字を小さくまとめ、文字周囲に極めて大きな余白を開けている一方で、書の線は力士の腕の様に太くし、文字外形は四角に収め、文字内の余白は最小限に抑えています。文字周囲の余白が大きい分だけ、文字内の小さな余白はむしろ目立ってきます。対比の妙です。醫の右上部分には鳥がいますし、醫の下の酉や閣の書は人の顔のように見えます。

帰り道に、勝浦町坂本の「風の駅さかもと」に立ち寄り、鴻本さんに展示作品の一部を手渡しました。天気が良かったので、庭から稼勢山がとても美しく見えて、素晴らしい風景です。渡邊くんも感動していました。

2月19日(日)から、こちらの会場でも四国大学書道文化学科の学生の作品展示が始まります。鴻本さんが、立派な看板を作成してくださっていました。

絶景の中で、コーヒーを飲みながら学生の書道作品を楽しむことができます。詳しくはまたご紹介します。ぜひお出かけ下さい。