「つべこべいわずにベートーヴェン」(砂川しげひさ)を読み終えた。
軽く明るいエッセイ集なので、楽しく読むことができた。
著者は漫画家でもあるので、漫画の挿絵が面白かった。
後半になると、かなり悪ふざけしている感あり。
原稿が進まないので、出版社の人に缶詰めにされて強制されて書いている場面がある。
そんな中で、ついには過去にタイムスリップして、ベートーベンに会いに行き、言葉を交わしたりしているのだ。
ふざけすぎてはいても、さすがにクラシックマニアだけあって、とても詳しい。
私にはついていけない部分もあった。そして、とても勉強になった。
これまでも最近のブログに感想などは書いているので、それ以外に印象に残ったことなどを書いておこうと思う。
ベートーヴェンは、頼まれた曲をお望みどおりに作るというような要領の良い作曲家ではなく、自分の理想や理念や想いに合わないものは作れない気質だったようだ。
だから、曲作りにおいては、自分自身が納得できるまでは、とことんこだわり続け、苦労して完成させた。それによって素晴らしい出来栄えの曲もあり、また逆に、世間に受けなかったこともあったようだ。
カタブツだから歌劇などはあまり得意ではなかったようだ。それに比べるとモーツアルトはのびのびと才能を発揮していたのだろう。
余り知られていない曲に、戦争交響曲「ウェリントンの勝利」というのがある。これは注文に従って、戦争に勝ったイギリスのために作った曲らしいが、銃の音などが多量にドンパチ入っていて、とても音楽を追及したものとは言えないように感じる。なんでこんなものを作ったのか、ベートーヴェンらしからぬ作品である。これはユーチューブで私も聴いてみたが、繰り返し聴きたいとは思えないものだった。しかしそのような曲を作ったこともあるということは、それがベートーヴェンの一面でもあることを知った。
ベートーヴェンについて、とても分かりやすいエピソードは有名な肖像画のことだ。
ヨーゼフ・カルル・シュティーラーという人が書いたもので、誰もが音楽室や教科書の中で目にしたことがある。
楽譜のようなものに、音符か何かを書き込んでいる場面である。
これは1819年に描かれたものだそうで、ベートーヴェンはこの肖像画のために3日しかモデルにならなかったのだそうだ。だから画家は細部を描くことはできず、手などは後で別人をモデルにして描いたと思われ、女性のような優しい手が描かれている。とてもベートーヴェンの手とは思えない。
そういわれてみると確かに顔などに比べると、手があまりにも白く柔らかそうで、きれいすぎる。もっとごつごつしていてもよさそうである。しかし、これまでこの肖像画を見て手に意識を向けたことがなかった。
それ以上に顔の表情や髪の毛が印象的だったからだろう。
そして、このベートーヴェンが持っている譜面のようなノートのようなものだが、その表紙には「ミサ・ソレムニス」と書かれているそうだ。当時、ベートーヴェンが作曲していたミサ曲だそうだ。
この曲は、ベートーヴェンの弟子でもあるルドルフ大公という人が、大司教に任命されたので、その式典に合うような壮大なミサ曲を作ろうと考えて、ベートーヴェンが作曲していたそうだが1820年3月の叙任式には間に合わず、1823年に完成したそうである。
「ミサ・ソレムニス」は、それだけ年月をかけて、ベートーヴェンが魂を込めて作った曲だ。
従来の儀礼的な音楽ではなく、ベートーヴェンの個人的な宗教精神が歌い上げられているそうである。
2000 ベートーヴェン 「ミサ・ソレムニス」(荘厳ミサ)ニ長調 作品123 BEETHOVEN 《MISSA SOLEMNIS》 D dur op.123
引き続き、ベートヴェンについての本を読みたいと思う。
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