1970年
こんなうれしいことはない。きょうはうちに帰って乾杯だ。あれだけ期待していた鬼頭がやっとその力を出してくれたんだからね。きょうの試合前にも鬼頭にいったんだ。「おまえの1勝5敗という成績をよく考えてみろ。これだけ使うということは、おまえがチームのカギを握っている証拠なんだ。もし逆に5勝1敗なら、うちはとっくの昔に首位だ。もしきょうもだめなら二軍落ちだからね」と。発奮させようなんていう意味ではなかった。ワン・ポイントならルーキーの間柴のほうがよっぽど度胸がいい。もしこの日に鬼頭がだめなら、とうぶんあきらめようと思っていたのだ。鬼頭が入団した六年前、私のバリバリの重役で問題にもしなかったが、球が速い投手だという印象がある、ただ、ブルペンでは速いが、マウンドに立つとその半分も力を出せないのが玉にキズだった。だから毎年期待されながら、いつもファームの選手でいたのだ。そこでもっと青年なら元気を出せ、というところからコーチを始めた。オドオドした内気な性格がわざわいしていると見たからだ。「ホラでもいいからしゃべりまくれ」というのだが、どうも引っ込み思案が気になった。おれの心臓をかしてやりたいと思ったこともたびたびだ。ただ感心するのはだれにも負けない努力家ということ。やれといったらどんな苦しい練習でもやってきたし、ミーティングでもせっせとメモをとるのはチームでも一番だ。その努力が実ったということを決して忘れないでほしい。そして、1勝5敗という成績なのに先発に使ってくれた監督の好章も忘れてはいけない。たしかにきょうはブルペンと同じほどのスピードがあった。でも自分でもやったと思ってはいけない。バックと好リードした大橋のおかげだということをキモにきざんでおくことだ。ファームに落とされてもそのたびに一軍に上がってくるねばりはみごとなものだが、この大記録を境にピッチングにもねばりをつけるように研究してほしい。きょうを土台におれにファームなんていうことばをいわせないでくれ。たった一人の左腕投手なんだからー。これをきっかけにどんなピッチングをするかそれがたのしみだ。
こんなうれしいことはない。きょうはうちに帰って乾杯だ。あれだけ期待していた鬼頭がやっとその力を出してくれたんだからね。きょうの試合前にも鬼頭にいったんだ。「おまえの1勝5敗という成績をよく考えてみろ。これだけ使うということは、おまえがチームのカギを握っている証拠なんだ。もし逆に5勝1敗なら、うちはとっくの昔に首位だ。もしきょうもだめなら二軍落ちだからね」と。発奮させようなんていう意味ではなかった。ワン・ポイントならルーキーの間柴のほうがよっぽど度胸がいい。もしこの日に鬼頭がだめなら、とうぶんあきらめようと思っていたのだ。鬼頭が入団した六年前、私のバリバリの重役で問題にもしなかったが、球が速い投手だという印象がある、ただ、ブルペンでは速いが、マウンドに立つとその半分も力を出せないのが玉にキズだった。だから毎年期待されながら、いつもファームの選手でいたのだ。そこでもっと青年なら元気を出せ、というところからコーチを始めた。オドオドした内気な性格がわざわいしていると見たからだ。「ホラでもいいからしゃべりまくれ」というのだが、どうも引っ込み思案が気になった。おれの心臓をかしてやりたいと思ったこともたびたびだ。ただ感心するのはだれにも負けない努力家ということ。やれといったらどんな苦しい練習でもやってきたし、ミーティングでもせっせとメモをとるのはチームでも一番だ。その努力が実ったということを決して忘れないでほしい。そして、1勝5敗という成績なのに先発に使ってくれた監督の好章も忘れてはいけない。たしかにきょうはブルペンと同じほどのスピードがあった。でも自分でもやったと思ってはいけない。バックと好リードした大橋のおかげだということをキモにきざんでおくことだ。ファームに落とされてもそのたびに一軍に上がってくるねばりはみごとなものだが、この大記録を境にピッチングにもねばりをつけるように研究してほしい。きょうを土台におれにファームなんていうことばをいわせないでくれ。たった一人の左腕投手なんだからー。これをきっかけにどんなピッチングをするかそれがたのしみだ。