プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

栄屋悦男

2016-08-02 21:00:26 | 日記
1954年

さかや・えつおはタイガースのホープであり、その成績が阪神今年度の戦績に大きくひびくことになると思う。いかに闘志がさかんでも、いかに打力が強くとも・・・最近の阪神投手力ではライバル巨人に勝越すことはまず不可能に近い。第一に必要なのは使える左投手、巨人をおさえる左投手であることは万人の認めるところ、この候補者として白羽の矢を立てられたのが栄屋、話をきり出すまでの阪神が慎重に検討を加えたことがうなずける。話をうけた栄屋がまず第一に考えたことは体力的にいけるか、どうかの点、相当期間熟慮したうえで決意した心境もよくわかる。二十四歳、五尺六寸五分、十六貫(十七貫になれば理想的本人もそれを望んで手をつくしている)左投げという武器そして都市対抗に優勝した球歴、この条件で使えると断定した阪神も、やりとおしてみようと決意した栄屋もともに正しい考えだと思う。全国的な大会(高校春、夏の大会、都市対抗)に優勝するためには、大会に出場するため予選に勝つことが第一の関門、そして八月の酷暑をおかし連投、強敵に勝ちぬかねばならない。幸運や器用、非力では決してつかめぬ優勝、あくまで安定した実力がモノをいうだけに・・・かつて優勝してプロ入りした投手たちはいずれも一つの時代をつくっている。栄屋も二十四日までに6勝3敗の成績を挙げその6勝のうちには巨人と中日から得た金星も入っているが、世評は「栄屋活躍す」というところまでいっていない。その原因の一つは、加入に際してじっくり考慮したその性格・・・自省の深さ、反省の強さがわざわいしているのではあるまいか。大阪府立化工から近畿大、駄々と努力して第一線に出て来た投手、今年で投手経歴八年目、そのコースを見るといかにも知的投手。さらに鐘紡チームで理論的指導をうけたことを思うと・・第一に必要なことは健康な体力と大胆な投球であろう。現在の投法は上手投げにときどきスリー・クォーターをまじえ内角低めにきまる速球(手首のきくときはよくのびる)内外角をつくカーブ(大きく落ちる時もあるが大体曲がりが小さい。大きく曲がると打たれる率が多い)これに時たまスライダーかと思う球が入るがまだほんものではない。左投手としては単調であり打者に圧迫感を与えない原因は外角周辺をつくシュートが少ないことである。これこそ左投手としては天ぷの武器であるだけにこの威力を欠いてはカーブのききめは半減する。あらゆる意味においてシュートの研究と活用が第一の課題であり、コントロールを生かしてのチェンジ・オブ・ベースの修得、この二つを巧みに操作したら「うまい栄屋」から「こわい栄屋」に躍進するに違いない。

栄屋投手

中沢さんはまず第一にがん強な体力が必要だといわれているが全くその通りで十六貫の体重では足をあげて豪快なフォームをすることもできない。それが結局打者に圧迫感を与えない原因だと思っている。大体いままでがラッキーにすぎたわけで、むろん鐘紡で優勝したからといって大投手だとはつゆ思っていない。シュートが大事なことそしてそのシュートがないこともよくわかる。鐘紡へ入社するまではシュートもよくきまったのだが、それからフォームを研究している間に、フォームはスムーズになったけれどもシュートがなくなってしまった。いまのシュートは鋭角的に曲がらないので、打たれる球はほとんどスピードがないシュートだ。しかし左投手のウイニング・ショットは必ずしも鋭いシュートだけにあるとは思われない。いままで負けたことがない。見た感じでは非常に遅いようにみえるらしいが、内角の手もとでのびる球は打たれていない。カーブは大きく曲がるとき威力がなくなり小さいカーブは阪神入りしてからマスターしたもの。シュートももちろん藤村隆男投手に教わって研究しているが、いちばん大切なのは「手首を強くすること」と「内角低目のコントロール」だろう。中沢さんは反省の深さがわざわいしているといわれているが、私が皆さんからあまり期待されすぎていままで固くなっていたことは確かだ。しかし見た目に消極的にうつるのは、性格だから仕方がないと思う。
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石川克彦

2016-08-02 20:20:59 | 日記
1954年

岡崎高出身で二十歳。五尺九寸十九貫「ヤング」とアダ名されるタフな大男。しかもたまに映画を見るほかは寮で休養する摂生家。二十七年春卒業してドラゴンズに加入、二年間コーチをうけたり、研究したりゆっくり力をつけ二十八年度から一績に進出して18勝4敗という好成績その躍進ぶりが他球団の新人投手達に「誰を目標にしているか?」と質すと「若い投手では中日の石川・・・」と答えるものが相当多い。その評価を裏づけるように今年も好調で、十日現在ですでに14勝5敗と大きく勝ちこしている。これは中日投手陣(八名)の挙げた48勝に対し約三割に当っているし、杉下(16勝)と二人で勝敗の六割をあげているのだから大したものだ。岡崎高の二年生で投手になったのだから今年で五年目の投手経験。もちろん身体のいいことも有利な条件ではあるが、それにしても高校を出た翌年早くも主戦投手となり、今年もつづいて好成績(現在までのペースでいけば21勝、22勝の見当)である「たね」はいかなる球種、球質であろうか?投法は上手投げが三、スリー・クォーターが二くらいの割合いで、ちょっと類の少ない速球で外角をつく球が三種類一つはのびる(ホップする)球一つは沈む球、もう一つはスライドする球、これが大きな効果をあげているが、これに加えて上手からのカーブがするどく落下するし、スリー・クォーターで投げる内角へのシュートが落ちるので打者にとってはうるさい投法である。よく見てみると好調な日はカーブを少なくし、速球で外角をつく球が武器になっている。さらに球速ののっている日は低めにきまれば真ん中へ入ってもあまり打たれていない。身体は大きいがまだ弱冠二十歳にしてはねれているしマウンドの態度がいい。打たれても、好調でも淡々としている。いい球と思ったのがボールに判定されてもムキになったり、妙な顔つきを見せたことがない。この原因は勝負強い性格にもよるが、実力に対する自信と野口捕手への信頼が大きな理由になっていると思う。そしてなんのためらいもハッタリもなく、びしびし投げこむので試合の進行が早い。二年つづけて好成績をあげるだけあってコントロールも投手守備も合格点ではあるが、こんごの課題としては、やはり完全なコントロール、単調をカバーするチェンジ・オブ・ベース、これに内野手に協力する投手守備、この三点をみがくこと、代表投手たる道もここにあると思う。

石川投手

きめ球は外角低目の速球で中沢さんもいわれているように低目にいけばどのコースに入っても打たれていない。春先きはこの球ばかりだったが暑くなるとやはり身体があるといってももたない。そこでカーブを研究している。少しスピードのあるのと極端にゆるいのと二つ。しかしこれはいまのところタイミングをはずしただけで、ここ一本というときはやはり速球ですよ。このカーブに手を出してくれればもうけもの。見のがされてボールになってももともとといったらくな気持ちで投げている。だがいまのように直球だけに頼る単調なピッチングではダメなので、第一にこのカーブを一番早くマスターしたい。チェンジ・オブ・ベースですがこれはあまりコントロールがよい方じゃあないし、第一投げる球(種類)が少ない。シュートして落ちる球も投げられるが、ヒジを痛めるので全然投げていない。ナマ意気ないい方ですが、中沢さんのチェンジ・オブ・ベース「Bの下」に対してコントロールの「Aの下」は不可解だ。この二つは絶対に切り離しては考えられない(直球のコントロールの採点なら少し甘いくらいだ)チェンジ・オブ・ベースが「Bの下」ならコントロールも「Bの下」になると思います。
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