1950年
打てばカンカン鳴るようにカラリ晴れたきのう卅一日の後楽園対毎日対近鉄藤田監督が「もう使える」といっていた五井の初登板で湧いた「立教の五井」デビューぶりはどうやーと東急の白木が顔のアゴをなでピッチングを凝視、「どうかな五井のボール」「そう、とにかくいろんな球をもってるネ」と白木その五井クン、失打してはファストに帽子をとってあやまるなど大学気分をチラリのぞかせ、好感のもてるギコチなさをあったが得意のインシュートで剛球を掘り込み、長打を誇る毎日をシャットアウト、おまけにホームランと二塁打を叩き出すという攻守に素晴らしいハタラキ。この日はまったく五井デーだった。ベンチ前でフラッシュを浴び、一番あとからベンチを出てきた五井クン、まだ息をはずませている、「おめでとう」「有難う」学生ツ気のぬけぬぶっきら棒だが、さすがに顔は嬉しそう「すこしウマすぎたんじゃない」「監督さんが力一パイ投げろーといったので、今日は強気でほおったんです、インシュートが打てなかったようで・・・」「初登板でシャットアウトなんで運もよかった」「そう、僕はまだフォームが出来ていないからまだまだですヨ」「毎日で警戒したバッターは」「土井垣さんですネ、あの人はインコースをよく打つから・・・」その土井垣さん、しばしば球審に文句をつけていたが、廊下で会ったら汗をふきふき「五井のボールは決して打てんボールやないが、インコースに入ってくるやつはボールばかりだった、打たんでおくとストライクになっちゃう今日の球審はおかしいよ、そんなだから消極的に負けたんやな」と口惜しがった。そんな話もなきにしもあらずもしそうなら五井クンは怪我の功名かー、ともあれヴェールをぬいた五井の天晴れな初陣はファンを喜ばせた。