1962年
「石原がいいですね」ときりだしたら、多田コーチは「みなさん、そうおっしゃいます」とひとごとのように答えた。そうおっしゃいます・・・ではないものだ。石原碩を早くから高く買っていたのは、そもそも多田コーチ本人。昨シーズンの終わりがけにノンプロ東洋紡岩国から入団したとき「きっとものになるピッチャーだ」といっていた。今シーズンから安藤元投手が加わったが、それまで石原は東映ただひとりのアンダースロー。そこに石原の魅力があったわけだが、入団したときは、ただタマが速いというだけでまとまりがなかった。やっと使えるメドがついたのはシーズン終了間ぎわで、秋の阪神のオープン戦には、変型ピッチングでタイガース打線をさんざん悩ませた。ことしはなおいっそう成長したわけで、過日の紅白戦に登板したときは、当っている吉田、西園寺も手を焼き、左バッターで打ちやすいはずの張本も好打を奪えなかった。黒ブチのロイドメガネスラリとのびた長身。ちょっと見たところ野球選手タイプではない。そのへんの文学青年といった感じだが、自分でいうのもおかしいくらいシンが強く、負けずぎらいだそうである。「アンダースローは足腰が強くなければならないので、ことしのキャンプでは走って走りまくった」といっていた。そのせいかどうか「ことしは最高にスピードが乗ってきた」ということだ。石原の強みは高めの失投がないことである。ほとんどのタマが地をはうような低めのタマでストライクゾーンのぎりぎりいっぱいに飛びこむ。打っても好打が出ないし、ストライクと思って手をだすと、ボールになることが多い。これはアンダースロー独特のものだが、スピードが加わってこのタマがいっそう生きてきたといわれる。しかし本人は「カーブの力の切れをよくしないことには・・・」とドン欲である。多田コーチ、水原監督とも「ローテーションに加わるのは間違いない」と太鼓判。春のオープン戦には尾崎、吉田、宮崎らの新人投手のしめくくり役として使われるそうだ。身長1㍍77。秋山(大洋)についで岡山東高でプロに送りこんだふたりめのサブマリンである。
石原投手の話 まだとても自信をもつ段階でないが、最近登板するのが楽しい。オープン戦で一度相手をやっつければスカッとした気分になるかもしれない。自信のあるのはシンカー、もう少しカーブを鋭くしたい。何勝が目標などとてもとても・・・。一試合、一インニングでもたくさん登板させてもらうことです。
多田コーチの話 低めのタマはなかなかまとまりがあり、大きくくずれないだけの安定性が身についてきた。欲をいえばベルトから上のタマが浮きあがるようになることだ。第一線のローテーションに加わるとみている。
「石原がいいですね」ときりだしたら、多田コーチは「みなさん、そうおっしゃいます」とひとごとのように答えた。そうおっしゃいます・・・ではないものだ。石原碩を早くから高く買っていたのは、そもそも多田コーチ本人。昨シーズンの終わりがけにノンプロ東洋紡岩国から入団したとき「きっとものになるピッチャーだ」といっていた。今シーズンから安藤元投手が加わったが、それまで石原は東映ただひとりのアンダースロー。そこに石原の魅力があったわけだが、入団したときは、ただタマが速いというだけでまとまりがなかった。やっと使えるメドがついたのはシーズン終了間ぎわで、秋の阪神のオープン戦には、変型ピッチングでタイガース打線をさんざん悩ませた。ことしはなおいっそう成長したわけで、過日の紅白戦に登板したときは、当っている吉田、西園寺も手を焼き、左バッターで打ちやすいはずの張本も好打を奪えなかった。黒ブチのロイドメガネスラリとのびた長身。ちょっと見たところ野球選手タイプではない。そのへんの文学青年といった感じだが、自分でいうのもおかしいくらいシンが強く、負けずぎらいだそうである。「アンダースローは足腰が強くなければならないので、ことしのキャンプでは走って走りまくった」といっていた。そのせいかどうか「ことしは最高にスピードが乗ってきた」ということだ。石原の強みは高めの失投がないことである。ほとんどのタマが地をはうような低めのタマでストライクゾーンのぎりぎりいっぱいに飛びこむ。打っても好打が出ないし、ストライクと思って手をだすと、ボールになることが多い。これはアンダースロー独特のものだが、スピードが加わってこのタマがいっそう生きてきたといわれる。しかし本人は「カーブの力の切れをよくしないことには・・・」とドン欲である。多田コーチ、水原監督とも「ローテーションに加わるのは間違いない」と太鼓判。春のオープン戦には尾崎、吉田、宮崎らの新人投手のしめくくり役として使われるそうだ。身長1㍍77。秋山(大洋)についで岡山東高でプロに送りこんだふたりめのサブマリンである。
石原投手の話 まだとても自信をもつ段階でないが、最近登板するのが楽しい。オープン戦で一度相手をやっつければスカッとした気分になるかもしれない。自信のあるのはシンカー、もう少しカーブを鋭くしたい。何勝が目標などとてもとても・・・。一試合、一インニングでもたくさん登板させてもらうことです。
多田コーチの話 低めのタマはなかなかまとまりがあり、大きくくずれないだけの安定性が身についてきた。欲をいえばベルトから上のタマが浮きあがるようになることだ。第一線のローテーションに加わるとみている。