若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

阿呆の市長に補助金貰う阿呆 ~ 阿波おどり騒動雑感 ~

2018年08月15日 | 地方議会・地方政治
徳島市長が中止を命じた阿波おどり「総踊り」を13日夜に決行へ 「踊る阿呆は政治権力に屈しない」と協会理事長|AERA dot. (アエラドット)

遠藤市長が開幕直前の8月10日に阿波おどり振興協会へ出した“恫喝文書”

======【引用ここから】======
               阿波実発第149号
               平成30年8月10日

阿波おどり振興協会 御中
阿波おどり振興協会所属各連 御中

             阿波おどり実行委員会
              委員長 遠藤 彰良

 安全、安心な阿波おどりの実施について(通知)


 この夏の阿波おどりが目前に迫ってまいりましたが、当委員会といたしましては、関係者や地域の皆様方のご協力をいただきながら、スムーズな進行や警備体制等について鋭意準備を進めています。
 阿波おどり期間中は、多くの人出が見込まれるところであり、安全対策には万全を期さなければならないことから、平成30年7月30日付け阿波実発第131号で依頼したとおり、安全、安心な阿波おどりの実施に向けてご協力をお願いしているところであります。
 こうしたなか、貴協会が総おどりと称する大規模なおどりを実施するとの情報を仄聞いたしました。
 有料・無料演舞場以外での大規模な踊りを実施することは、安全、安心の観点から様々な危険性が生じる可能性が飛躍的に高くなるとともに、近隣住民の迷惑にもなるおそれがあります。そういった事態を引き起こさないためにも、くれぐれも規律ある行動をされるよう、念のため、申し添えいたします。
                   以上

======【引用ここまで】======
(引用と言いながら全文書き起こし)


祭りだぞ、祭り。
盛り上がってナンボでしょ。
盛り上がらないのであれば最初から祭りなどしない方がマシ。
なんだこのジメジメした文書は。

徳島市・徳島新聞・阿波おどり振興協会の三つ巴の利権バトルの中で、とって付けたように「安全、安心」を求める通知文を送る姿勢に虫唾が走る。

【虫唾ポイント その1】


文書の差出人は
「阿波おどり実行委員会 委員長 遠藤 彰良」

委員長の遠藤氏は徳島市長。
そう、この実行委員会は、自治体が中心となってイベントを実施するために立ち上げられた組織である。
実行委員会方式のイベントは、責任の所在が不明確で会計も不明朗になりがち。

※参考
○実行委員会方式 ~ 特別会計に次ぐ、自治体の第三の財布 ~ - 若年寄の遺言
○腐ってやがる・・・古すぎたんだ・・・ ~ 情報公開の谷のユクハシ ~ - 若年寄の遺言

「実行委員会 委員長」名義で「有料・無料演舞場以外での大規模な踊り」について「規律ある行動」を求めているが、そうした行動を求める権限が実行委員会にあるのだろうか。

たとえば、市道を一時的に占有して踊りをするのであれば、警察との協議を経て市道を管理する市に許可を得なければならない。しかし、実行委員会にそうした権限はない。振興協会と実行委員会との間に契約書や協議書のようなものがあって、これに基づいた通知なのだろうか。どうにも不明確だ。

【虫唾ポイント その2】


お役所が大好きな「安全、安心」。

実行委員会通知には、
「阿波おどり期間中は、多くの人出が見込まれるところであり、安全対策には万全を期さなければならないことから・・・安全、安心な阿波おどりの実施に向けてご協力をお願いしている」
とある。

実行委員会としての契約に基づく中止要請であれ、自治体からの行政処分としての中止勧告であれ、文書を出すのであれば具体的な根拠を示したうえで行うべきだ。

総踊り中止の理由が「複数の演舞場へ見物客を振り分けて演舞場全体の空席率を減らすため」であるということは広く知られているが、とって付けたように「安全、安心」を理由として総踊りを中止させようとする遠藤市長の性根が気に食わない。
とって付けた理由だから、
「様々な危険性が生じる可能性が飛躍的に高くなる」
とぼかすのみで危険性を具体的に指摘することができていない。
具体的に危険性を指摘するどころか、通知を出した根拠は仄聞、つまり噂話のレベルに基づいたもの。お粗末な話だ。

本当に遠藤市長が安全面に考慮しているなら、

「総踊り実施の計画を出せ」
   ↓
「〇〇通りの過度な混雑が予想される。身動きが取れない状態で熱中症患者が発生するおそれがある。交通整理や給水所設置を行うなど安全対策をとれ」
   ↓
「以前に指摘した安全対策が実施されていないので中止を求める」

といった流れになるはずだ。
具体的に危険個所を指摘せず「安心の観点から~」中止を求めても、受け取った側は対処のしようがない。

この文書は、見物客分散という本音を隠すとともに、もし事故があった場合に
「市長側は総踊り中止を求めていました」
というアリバイ作りになるという効果を発揮する。
安全面の向上には一切貢献しないが。

【虫唾ポイント その3】


「申し添えいたします」の使い方への違和感。

この通知文は、
「そういった事態を引き起こさないためにも、くれぐれも規律ある行動をされるよう、念のため、申し添えいたします。」
で終わっている。

「申し添える」というのは、付け加えるという意味である。
用法としては、
「・・・・以上より、Aを実施するようお願いします。なお、この点についてはBであることを念のため申し添えます。」
といった形が多いだろう。
メインで主張したいAがあって、これにサブでBを付け加えて記載しようとした時に「申し添えます」という言い方をする。

しかし、今回の通知文ではAに相当する内容がない。
というか、全文を読めば分かるように、
「規律ある行動をされるよう(≒中止しろ)」
がこの通知文で主に伝えたい内容Aである。
「規律ある行動をされるようお願いします」
といった形で締めるべきところであって、「申し添える」では全然締まらない。
皮肉っぽさが残るだけで、かえって馬○みたいに思ったのは私だけだろうか。

【最大の虫唾ポイント】


遠藤市長(というか実行委員会)が出した通知文にあれこれ文句を言ってきたが、今回最大の虫唾ポイントは
「踊る阿呆は政治権力に屈しない」
という振興協会側のコメント。

踊る阿呆、おおいに結構。
政治権力に屈しない、大いに結構。

でも、自治体の債務保証や補助金による赤字補填を受けていては「政治権力に屈しない踊る阿呆」は実現できない。赤字の発覚、観光協会解散、実行委員会立ち上げ云々の一連のゴタゴタは、稼ぐ仕組みを内在しておらず赤字垂れ流し、市役所依存だった阿波おどりの運営システムに根本的な原因がある。

補助金を受け取るということは、
「何か役所の気に食わないことをしたら来年の補助金無いよ。うちが赤字補填止めたら運営止まるよ?解散させるよ?」
という脅しに右往左往しなければならなくなることを意味する。現に右往左往している。

「金はもらう、でも口を出すな」
という虫の良い話は存在しないということを、この阿波おどり騒動は象徴している。
補助金が踊る阿呆の自由を縛る鎖となっている。
踊る阿呆の本来の姿を取り戻すためには

「市役所は黙ってろ。補助金なんていらねぇ!自分たちで勝手にやってやる!」

と言い切ることが必要だ。
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