突然だが、条例改正等を行う前に、改正後の内容で実施してしまっていた場合、遡及適用で対応することは可能であろうか。
○改正漏れの遡及適用 自治体法務の備忘録
=====【引用ここから】=====
先行した事実行為について、後日、規則改正を行い、是を遡及適用して先行した事実行為にいわば法律行為としてのお墨付きを与えようとしているわけですが、仮に、これを遡及適用しようとしても、この場合は、その事実関係は既に済んでいるため、遡及適用するにもその余地が残されていないわけです。したがって、遡及適用することは、不可能のことと考えます。
「自治体法務例規担当者のための主要法令トピックス第10版」38ページ」
=====【引用ここまで】=====
○遡及適用(上) 自治体法制執務雑感
=====【引用ここから】=====
遡及適用とは、法令が過去の時点までさかのぼり、過去の事象に対して適用されることであるとされている(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P272)参照)。そして、佐藤達夫『法制執務提要(第二次改定新版)』(P347)では、「遡及適用によつて過去の事実関係を法律の認める関係に正当化する場合などもある」とも記載されている。
=====【引用ここまで】=====
○遡及適用(下)自治体法制執務雑感
=====【引用ここから】=====
この法律の改正対象である法務省設置法第13条の17は、法務省の組織の定員を定めている規定であり、昭和39年法律第182号は、昭和39年12月21日に公布されている。そうすると、同年4月1日から12月21日までの間は、法務省には法律に規定する定員よりも多い人数の職員がいたのであるが、その事実を追認したということであろう。
=====【引用ここまで】=====
このように、解説本では「不可能」とするものと「正当化する場合などもある」とするものとに真っ二つに分かれている。また、法律では遡及適用により追認した事例もあるようだ。
では、過去に条例制定の誤りや改正漏れがあって、それを誰も気づかないまま放置していて、本来条例制定しておくべき・改正しておくべき内容で実施してしまっていたことを発見した自治体の担当者としては、どうすれば良いのであろうか。
個人的には、遡及して改正すべきと考えている。遡及適用が禁止されている場合(罪刑法定主義を定めた憲法第39条、租税法律主義を定めた憲法第84条)は当然駄目だが、それ以外の場合、明確に禁止を定めた法令や判例は見当たらない(厳密にいうと、憲法第84条も明確に遡及適用は駄目とは書いてない)。遡及適用させる必要性について理論武装さえできれば、改正漏れに係る処分に対して不服申し立て等があっても対応できるだろう。
というか、改正漏れのあった箇所が不服申し立て・訴訟の争点となった場合、遡及適用の規定がなければ自治体が負けるとなるどころか、同様の争いも全て同じ道を辿ることになってしまう。遡及適用の規定がなければ100%負けだが、遡及適用の規定があれば勝つ余地が残されるのだ。
新たに制定した法規範を過去に遡及させて適用することはできないとする「不遡及の原則」については、過去の事実に対し後から法律関係を変更させるものであり、法的安定性を害することから論じられているものである。しかし、遡及規定を設けないことで、その期間中の事柄が全て覆るということになるのであれば、却って法的安定性を脅かすことになる。
遡及適用に関する解説が真っ二つである以上、自治体にとって有利となり得る方を選択した上で、遡及させる必要性を裏付ける資料を用意して条例改正や訴訟に臨むべきだ。
(現職首長が嫌いで、首長名で連続敗訴してやる!というなら話は別だが。)
○改正漏れの遡及適用 自治体法務の備忘録
=====【引用ここから】=====
先行した事実行為について、後日、規則改正を行い、是を遡及適用して先行した事実行為にいわば法律行為としてのお墨付きを与えようとしているわけですが、仮に、これを遡及適用しようとしても、この場合は、その事実関係は既に済んでいるため、遡及適用するにもその余地が残されていないわけです。したがって、遡及適用することは、不可能のことと考えます。
「自治体法務例規担当者のための主要法令トピックス第10版」38ページ」
=====【引用ここまで】=====
○遡及適用(上) 自治体法制執務雑感
=====【引用ここから】=====
遡及適用とは、法令が過去の時点までさかのぼり、過去の事象に対して適用されることであるとされている(法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P272)参照)。そして、佐藤達夫『法制執務提要(第二次改定新版)』(P347)では、「遡及適用によつて過去の事実関係を法律の認める関係に正当化する場合などもある」とも記載されている。
=====【引用ここまで】=====
○遡及適用(下)自治体法制執務雑感
=====【引用ここから】=====
この法律の改正対象である法務省設置法第13条の17は、法務省の組織の定員を定めている規定であり、昭和39年法律第182号は、昭和39年12月21日に公布されている。そうすると、同年4月1日から12月21日までの間は、法務省には法律に規定する定員よりも多い人数の職員がいたのであるが、その事実を追認したということであろう。
=====【引用ここまで】=====
このように、解説本では「不可能」とするものと「正当化する場合などもある」とするものとに真っ二つに分かれている。また、法律では遡及適用により追認した事例もあるようだ。
では、過去に条例制定の誤りや改正漏れがあって、それを誰も気づかないまま放置していて、本来条例制定しておくべき・改正しておくべき内容で実施してしまっていたことを発見した自治体の担当者としては、どうすれば良いのであろうか。
個人的には、遡及して改正すべきと考えている。遡及適用が禁止されている場合(罪刑法定主義を定めた憲法第39条、租税法律主義を定めた憲法第84条)は当然駄目だが、それ以外の場合、明確に禁止を定めた法令や判例は見当たらない(厳密にいうと、憲法第84条も明確に遡及適用は駄目とは書いてない)。遡及適用させる必要性について理論武装さえできれば、改正漏れに係る処分に対して不服申し立て等があっても対応できるだろう。
というか、改正漏れのあった箇所が不服申し立て・訴訟の争点となった場合、遡及適用の規定がなければ自治体が負けるとなるどころか、同様の争いも全て同じ道を辿ることになってしまう。遡及適用の規定がなければ100%負けだが、遡及適用の規定があれば勝つ余地が残されるのだ。
新たに制定した法規範を過去に遡及させて適用することはできないとする「不遡及の原則」については、過去の事実に対し後から法律関係を変更させるものであり、法的安定性を害することから論じられているものである。しかし、遡及規定を設けないことで、その期間中の事柄が全て覆るということになるのであれば、却って法的安定性を脅かすことになる。
遡及適用に関する解説が真っ二つである以上、自治体にとって有利となり得る方を選択した上で、遡及させる必要性を裏付ける資料を用意して条例改正や訴訟に臨むべきだ。
(現職首長が嫌いで、首長名で連続敗訴してやる!というなら話は別だが。)