この山間部の深い谷間に面する村や町は夏の間、たくさんの観光客でにぎわうのであろうが、10月以降は静まり返ってほとんど人影も見えない。
ロカマドアーの町へ入る前の道路わきは両側に網で仕切られた農場にアヒルの飼育場がずらっと並んでいてこんなに沢山のアヒルを一時に見たのは初めて。フランスはこのアヒルに濃厚な餌を詰め込んで脂肪肝にしそれをフォアグラとして珍重する。このあたり一面がその産地でありお土産店やレストランにも手書きのフォアグラ有りますの看板が出ていた
この日は朝から雨雲が深く立ち込め、谷間に面したロカマドアーの町は霧か雨雲に霞んでいてせっかくの素晴らしい景観がほとんど写真に写らない。
観光案内所も閉まっていてこの地方にどんな観光地があるのかがわからない。
キャンピングブックで見つけた、この町から20km行ったマーテル(Martel)の町へ行くことにした。(マーテルのインフォメーションは次に書く予定)
マーテルで一泊して翌日雨雲が切れ始めたころ、またロカマドアーの町へ引き返した。
ドドイン河の流れに面した高い崖の上は堅固なお城、その中途には立派な教会、一番下の道は城下町になっている。
崖の上の駐車場にキャンパーを停めお土産店や閉まっているキャンプ場、観光案内所の並んでいる町の一角から長い坂道を降りて城下町へ歩いて行った。
初めて見た瞬間からなんと見栄えのする町だと思ったがよくもこんな不便な崖っぷちに町を築いたものだとあきれた。
この辺りは中世の弱肉強食の時代に富と権力を持ったものが争い、防衛のためにこんな不便な土地を選んだものらしい。この崖を半分掘り起こして建てられたロカマドアーノートルダム寺院は黒いマリア像を祭っていて、スペインのサンチアゴ・コンポステーラへの巡礼達が立ち寄る場になっている。お城の横の建物は元城の住人たちの家であったらしいが、今では巡礼達の宿泊所に代わっている。
ただ一本の城下町の道路は中世そのまま、今に至った。ノートルダム寺院へは急な坂道を上るかまたは一人4ユーロを払ってエレベーターに乗るか。エレベーターであっという間に寺院の前に着いてしまいゆっくりあたりを見物。巡礼たちがマリア像にひざまずいているところを想像しながら、この寺院を後にした。寺院からお城のある頂上までは七曲りの巡礼道が続いていて角々にキリストの一生を描いた祠が立っている。
フランスに上陸して4日目にやっと青空が見え、太陽が輝くロカマドアーの町はやっぱり素晴らしかった。
この時期フランスはどこも菊の花が満開、町の教会の裏の墓地でも花盛りだった。