雑感日記

思ったこと、感じたことを、想い出を交えて書きたいと思います。

カワサキ単車の昔話  14    小型車に関する考察  

2023-08-22 04:43:59 | 発想$感想

★ 昨日、カワサキ単車の昔話13   で    ホンダとヤマハのHY戦争のことなども書いたのだが、
 FBで何人かの方からコメントなども頂いたりした。
 実は当時カワサキも『小型車の分野への進出』が検討されていたのである。
 検討者の中心は川崎重工業の当時の吉田専務というTOPの方で、
 生産指向の発想で、素晴らしい生産設備を創り、安価な小型車を開発・生産するなら、『どんどん売れる』と言う単純な発想で  、
 市場の分野と言うか、どのようにそれを売るのかと言う分野が抜け落ちていて、
 当時単車事業本部の企画室にいた私は、これは危ないから止めなくては ならないと思ったのだが、
 専務自らが結構本気で取り組んでおられて、当時課長職だったのだが、とても直接に反対するわけにもいかないので、
 搦め手(からめて)から『小型車に関する考察』と言う小論文にまとめたのが、これである。


  




★ A425ページにも及ぶ結構な論文なのだが、
同じ小型車でも『東南アジアのCKD事業』への進出がそのであった。
 『小型車の目先』を変えるべきだと思ったのである。
 この論文は当時の事業本部長以下TOPの方々にも好評で、結果的には大成功で、カワサキも本格的にCKD事業に進出することになるのである。
マーケッテンぐ分野からの発想で、若いころからこんなことを発想し、文章にするのは嫌いではなかったのである。

 論文は
 「二輪車の事業環境について
 「小型車について
 「小型車事業の展開ステージ
 の3分野から成り立っていてその2項「小型車について」の中に
 『ホンダロードパルコンセプト』という項目があるので、それを原文のままご紹介してみたい。
 こんなことが書けるのは固い会社の川崎重工業の中では私ぐらいしかいないのでは?
 と思ったりもするのだが、当時では販売第一線を経験したのは川重籍では私しかいなかったのである。


  


 そこではこのように書かれている。
 原文のままご紹介してみたい。

 ロードパルはホンダが新しい時代に対応する新しいオートバイとして、その名も新しくモキットと称して登場した。
 ロードパル戦略は典型的な小型車戦略として興味深い。
 ユーザー対象を女性に絞ってオートバイ・モペットのイメージを変えようとする意図が明確である。
 世界的に一流のモデルとしてソフィアローレンを使い「素晴らしき人ホンダに乗る」と言うキャッチフレーズはホンダのすべての広告に使用されている。
 男性を対象とするスポーツ車にはサッカーの王様ペレを使うと噂されている。
 女性を対象とするだけに技術的なとっつき難さを極力排除した設計とし「まるでペダルのない自転車みたい」と自ら従来のオートバイ・モペットとの差別化を行っている。
 何もかも簡単、ロードパルの三つの簡単は、1乗り方、2お求め(ホンダクレジット)3ライセンス(免許教室)と設計から販売までをパケージにしたTOTAL戦略型である。
 59800円という低価格に対して販売店にはカブ並みの12000円のマージンを提供し強力な広告を背景に一気に月産30000台へもっていこうという意図のようである。
 ロードパルオプションとしては、バッグ・レッグシールド・ヘルメットホルダーなど15種もあり、オプションのトータル額は19700円である。逆の見方をすれば、オプションを別にすることにより59800円と言う低価格を実現し、それをオプションで補おうとしている。
 発売以来短期間であるがすでに殆どの人に周知せしめた強力な広告はホンダにとっても近年にない規模であり、ロードパルに掛けるホンダの意気込みが感じられる。
 広告内容はテレビスポンサー番組・素晴らしき仲間たちのコマーシャルのほか東名阪の各局スポット(1~2億)新聞全国紙全頁(5000万円)女性向け雑誌を中心に(2000万円)販促活動としては店頭デスプレイ (1億円)車内吊り(1000万円)、その他ローレンの契約料・製作費など、少なく見積もっても4~5億円 、今後の広告など考えると巷で言われるごとく10億円もあながちハッタリではない。
 国内では月10~15000台を目標のようだから、年間売上高は@50として年で90億円、仮に10%を限界利益率と仮定すると、ほぼ1年分の限界利益を広告宣伝に、それも販売する前に使用しようとしている。
 これら一連の販売戦略は単なるロードパルと言う個別商品に対する販促活動だけではなく、明らかにホンダのブランドイメージ向上にあるものと推測される。
 新しい時代に対応する省資源・安全性と同時にカッコいい世界一流の企業として素晴らしい仲間とともに生きようとするホンダの基本理念を根底に一連の販売戦略が組み立てられている。 


★ この論文を書いた意図は、あまりにも生産指向的発想が強く、
 販売指向型と言うかマーケッテング分野の発想が抜け落ちていて、
 従来のカワサキの中大型車なら、商品機能の中の性能分野などが
 大きなウエイトを占めるのだが、
 『小型車』については、むしろ『イメージコンセプト』などが優先される商品なのである。
 そういう意味で、専務以下当時の事業部のTOPの方に、
 小型車を世に出す場合の基本発想・マーケッテンぐマインドの分野を解って欲しかったのである。
 そう言う意味では、ちょうどその時期に展開されていた
 『ホンダのロードパル戦略』を例にとっているのである。

 改めて読み返しみたが、
 この小型車に関する考察の中で触れた「東南アジアへのCKD事業」は、半年後に具体的にスタートするのだが、
 私は企画室課長と言う結構いい職位をたった6か月で自ら捨てて、
 新しく出来た「市場開発プロジェクト室」に転籍し、
 タイ・イラン・インドネシアなどの開発途上国へのCKD事業推進に関わることになったのである。

 そう言う意味では、自らの進路を決めた小論文だったように思う。



コメント
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