滅鬼の刃 エッセーラノベ
ヒーローショーをご覧になったことがあるでしょうか?
着ぐるみショーとも言いますが、その話です。
大分類では着ぐるみショーでしょうね。
人が等身大の縫いぐるみの中に入って15分から30分のショーをやります。人が着るので着ぐるみショーなのでしょう。
たいてい、スーパーの駐車場や屋上、大きな商業施設ですと専用のイベント広場やシアターということもあります。
大学時代の友人で、すでに着ぐるみやらテレビのエキストラをやっている友人が居て、彼の誘いで二回生の秋ぐらいから始めたように記憶しています。
最初にやったのは『一休さん』です。
アニメの『一休さん』とは違います。アニメと同じなのは一休さんだけで、それ以外の兄弟子や和尚さん、村娘などアニメに似ているのですが名前が違っていました。テレビ通りだと著作権の問題があってロイヤリティーが発生するからでしょうね。
わたしの持ち役は一休さんの兄弟子の朴念でした。一休さんに意地悪ばかりするのですが最後にはやりこめられる役です。
肌色の肉襦袢の上から衣装を着てカシラを被ります。
肉襦袢や衣装はクリーニングが行き届いているのですがカシラは、そのままの使いまわしです。当然、他のチームでも使っているもので、何人分何十人分もの汗が染みついて、状態の悪いものは黒カビが生えていたりしました。
新品か、それに近いものでなければ臭気がすごく、そのままでは使用に耐えないのでオーデコロンなどが振りかけられていて、これが汗の臭気と混ざるととんでもない臭いになります。
セリフや効果音などは録音されたテープで流され、役者は、それに合わせて動くだけです。後で触れるヒーローショーと違ってアクション(擬闘)はありません。
たとえば、一休さんを困らせようと朴念が橋のたもとに『このはしわたるべからず』と立札を立てます。
ところが、一休さんが来る前に村娘のチヨちゃんがお遣いに行こうと橋のたもとにまでやってきて困ってしまいます。
そこへ、一休さんが通りかかり「チヨちゃんどうしたんだい?」と訊ねます。チヨちゃんは「見てよ一休さん、橋が渡れなくなっているの」と立札を指さします。
一休さんは数秒間考えて「なあに、簡単だよ」と言って、スタスタと橋を渡っていきます。
すると、隠れて見ていた朴念が飛び出して「こらあ、一休、この立札が目に入らないのか!」と怒ります。
一休はニコニコとして「なにを言ってるんですか朴念先輩、はしを渡るなと書いてあるから、ぼくは真ん中を歩いたんですよ」と答えます。
一休の説話にのっとっているのですが、ここから少し違います。
「あれえ、おかしいなあ。立札には和尚さまの名前が書いてあるけど、どうして平仮名ばかりなんだろう?」
そこから、立札のいたずらが、漢字が苦手な朴念の仕業だと分かって、やってきた和尚さんに叱られて、めでたしめでたし。
そのあと、キャラ全員のダンスがあって、MCのおねえさんが出てきて子どもたちとの交流会(ナゾナゾクイズやアッチ向いてホイなど)、握手会サイン会になっておしまいです。全部入れて30分ぐらいだったと思います。
次にやったのが『キャンディーキャンディー』です。水木杏子原作、いがらしゆみこの作画と漫画で一世風靡した少女マンガアニメの金字塔です。
これは、きちんとロイヤリティーを支払った版権物で、テーマ曲挿入曲もアニメの通りで、『一休さん』の五割り増しは観客が多かったですね。
流れは『一休さん』と同様で、15分ほどのドラマの後にテーマ曲が流れてダンスショー。いったん幕を下ろして握手会とサイン会であったように思います。
わたしは、ポニーの家の院長先生(修道女のおばあさんの姿)をやっていました。朴念にしろ院長先生にしろ、出番はそれほど多くなく、難しい動きもありません。まあ、駆け出しの役と言っていいかもしれません。
しかし、持ち役の役者が来られない時や、新人が入ってきた時は、そういう駆け出しの役を譲って他のキャラをやることもありました。先輩からは「全部のキャラの登場退場のきっかけを覚えておけ」と言われていました。
まあ、セリフはテープで流れていますから、五六回やっていれば、まず破綻することなくこなせます。
さすがにキャンディーやアンソニーはやりませんでしたが敵役のイライザはやったように記憶しています。
イライザついでにお話しますが、着ぐるみショーは男が男、女が女のキャラをやっているとはかぎりません(^_^;)。
実は……どうも長くなりそうなので、次回も続きます。