大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ローンサバイバー/ウォルト・ディズニーの約束』

2014-03-22 07:04:25 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ローンサバイバー/ウォルト・ディズニーの約束』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に、身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


ローンサバイバー

“ブラックホーク・ダウン”と同じく、実話です。
タリバンの指導者を狩る作戦で、米軍SEALの偵察隊4名が、現場で出会った村人を解放した為、タリバンに通報されて囲まれる。激戦の中、3名死亡、救出に来たヘリも一機撃墜され、たった一人残った兵士を救ったのは ある村のアフガン人だった。
 何故、アフガンに米軍がいるのか……タリバンがアメリカを憎むのは何故か……この戦争に大義名分はあるのか……ets これらに触れずに本作を語れない。

 しかし、止めます。

 私が「宗教原理主義」を憎悪している事も、アメリカの強引な論理を認めない事も……一切排除して、不屈の男達の物語として語りたい。
 ハリウッドの論理に嵌ったと言われても仕方ないでしょう。確かに、アメリカ人のヤンキー魂に火をつけるストーリー(実話ではあるが、あくまで劇映画)だし、SEALの宣伝と言っても良い……しかし、男達の比類無き勇気と友情に溢れている作品であり、そこに感動が生まれる。
“ブラックホーク・ダウン”では、敵のアフリカ人は単なる野蛮人でしかなかったが、本作ではそのようには描いていない。マーカス・ラトレル兵長を助けてくれるアフガン人がいたと言う事情もある。ハリウッドが表現の論法を変えた(現在、状況を相対的に捉えない作品は陳腐化される)とも言える。
 しかし、作品の裏側にある あらゆる事情を乗り越えて、感動を見る者に伝えてくる。
 本作を見て、嫌悪感しか覚えない人は大勢おられるだろうが、敢えて言いたいのです。これまでの映画では、米軍のSEALといえばスーパーマンの集まりってな風に描かれ、彼らに不可能な作戦は有り得ないように語られる事が多かった。この映画では、確かに筋肉アーマードではあるが、ごく普通の人間として描かれる。
 タイトルロールに重ねて、本物のSEALの選抜シーンが流れる……訓練なんてな範疇には無い、下手をすればどころか殺すつもりの選抜、これを乗り越えるだけで互いに尊敬しあい、絶対の友情が生まれる。そんな男達だから、絶望的な戦況にあっても戦う事を止めない。そんな事が可能なのかと思えるような行動を躊躇なく取る。実話の重みもあって、戦闘する人間の究極の姿がスクリーンに映し出されている。そんな彼らが一皮剥けば 当たり前の人間なんだと言うところに感動がある。
 批判的に見れば“否定”する以外に無い作品ながら(日本人とすれば……本作の意味を問うのはアメリカ人に任せる)ただただ 戦う男達の姿に敬意を覚える。マッチョイズムだとの批判は甘んじて受け入れます。
 しかし、戦う者に敬意を表し、物語を与える(アメリカの国策ですが……)この国が羨ましくもあるのです。ベトナムの反省(帰還兵士を狂人扱いした)も有るのでしょうが、国の為に戦った人間を顕彰するのは至極当たり前な行為であると考えます。


ウォルト・ディズニーの約束

 いやいや、あの“メリー・ポピンズ”にこんなインサイドストーリーがあったとは……確かに、単に楽しいだけのファンタジーじゃないとは思ってはおりました。
 しかし、全く違う解釈をしていました。えっ? どんな解釈かって? ご勘弁を、こんな仕事を始める前の、ほんのガキの感想ですけぇ。
 なる程ねぇ、原作者にはこんな悲しい歴史が有った訳ですか、「ハリー・ポッター」のサーリングが シングルマザーで金も無く、カフェの片隅で粘りながら執筆していたとか、「指輪物語」のトールキンは本気で神話を作るつもりだったとか……こいつは知らなきゃ思い至らない話です。
 原作者のトラバース夫人は、ウルトラ気難しい女性。なんせ、あのディズニーが20
年に渡って映画化権交渉しながらも口説き落とせない相手! 一体どんな人なのかと見ていたら……こらぁ あきまへんわ、アタクシでしたら出逢ったその日に匙投げてます。
 しかし、ディズニーが20年かけても映画にしたかった物語、担当者だって真剣にならざるえない。 「メリー・ポピンズ」の脚本担当だったドン・ダグラティはまだ生きていて、ミズ・トラバースとの間に良い思い出がある訳もなく……彼は本作を見て号泣したそうです。
 これからご覧になる方々の感動の邪魔になっちゃいけないんですが、ミズ・トラバースにとって「メリー・ポピンズ」は単なる物語ではなく、子供の時の大切な……美しくも楽しくもあり、かつ悲しい思い出……しかも未だに自分の人生を縛っている出来事が下敷きになっていて、彼女にしてみれば人生そのもの、けっして妥協なんぞ……冗談じゃない。
 話はディズニーがミズ・トラバースの過去を探った所から回り始める。これ以上書くのは愚の骨頂ってもんで、この先は劇場で確かめて下さい。きっと、もう一度「メリー・ポピンズ」を見たくなります。
 エンドロールに実際のミズ・トラバースの声が出てきます。エマ・トンプソンの声かと思いましたわ。名優と言われる人は本間になりきります。私らみたいな付け焼き刃役者には想像もできん世界です。

 てな訳で、本日は実話2連発でした。

 どちらも感動作かつ、どちらも今年のアカデミーノミネート、しかも両方無冠です。 そらそうやろね、ノミネートまではええけんど、この両作品に賞を与えるのは考えもんでしょ。片や、9.11はあったものの大儀に?マーク付きの作品。片や、感動ストーリーながら、本の当事者が社長だった会社の作品……“コマーシャルじゃん”といわれたら否定のしようがない。
 しかし、そんな事情は一切捨てた所から見てみたい作品達でありました。



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