音系MAPに青春をかける
高校生ラノベ
間もなく新学年が始まる。でも、多分行けない……。
それが聞こえ始めたのは、二学期の終わり頃だった。
現代社会の授業を受けているときに、それは聞こえた。
プァーン! プァーン! キキー! ガッシャン! ガラガラ……グシャ。
「ワッ!」思わず声が出た。教室のみんながあたしを見た。
「どうした成島?」
「す、すみません。む……虫が飛んできたんで」
あたしは、居もしない虫のせいにした。
本当は聞こえていたんだ、あのクラッシュの音。
高橋先生は、自分達の街を知ろうということで、この街の地図をプリントして授業をしていた。案外市役所や図書館の位置など分からないものだなあとか、中には、自分の家の位置が分からない者などがいて、案外楽しい授業だった。
そのうち地図から音がし始めた。
最初は、窓から入ってくる街の喧噪かと思った。ようく周りを見渡すと、どうも音源は、あたしの地図だ。最初は、音も微かで、楽しい錯覚ぐらいに思っていた。それが、次第に大きくなり、さっきの電車の警笛と自動車のブレーキ音。そしてクラッシュ! 音からすると車は電車に引きずられグシャグシャになった様子。場所は、街の駅から一つ離れた私鉄と国道の交差する踏切。四階のあたしの教室からよく見える。
そっと、そちらの方を見てみると、何事もなく電車も車も通っている。
なんだ、幻聴か。
あたしは生理が近くなると、不思議な体験をすることがある。気だるく寝っ転がっていてテレビのリモコン取るのも億劫なとき、気が付くと手許にリモコンがきていたり、あ、スマホがかかると思ったら、直後にほんとに着メロがして、ああ、ヨッコからだと思ったら、本当にそうだった。
で、今度も、それの一種かと気楽に思った。
その日の下校途中、本当にその音だけでなく、光景を見てしまった。
「ヨッコ、危ない!」
側に居たヨッコの袖を思い切り引っ張った。直後に自動車の大きな部品が目の前に飛んできた。
あたしが声を掛けなければ、ヨッコは頭を潰されていた。
それから、地図=MAPを見ると音がするようになり、その何時間かあと、本当に事件や事故が起こるようになった。
ある時など、商店街の宝石店に自動車で突っこんで強盗が入り、ガラスケースやら、店の中をグシャグシャにして、ほんの二三分で逃げていく音がした。同時に商店街のアーケード入り口の機械時計が五時の時報を打つ音がした。時計を見ると五時五分前だった。
あたしは、迷わずに警察に電話した。
「あと五分で商店街のSS宝石店に強盗が車で突っこみます!」
警察は、すぐにパトカーを走らせ、犯行の真っ最中の犯人を全員逮捕した。
で、あたしのところにも警察が来た。当然だろう、犯行を予告したのだから……。
けっきょくは、なにも証拠もないので、お構いなしになった。だけど、世間に知られてしまい、マスコミに晒されるようになった。二三回はつきあったが止めた。結局は変人と思われただけだから。このままではマスコミのオモチャにされることは見えていた。
そんなこんなで、三学期に入ると、ほとんど学校に行かなくなった。
世間が落ち着いたので、新学年からは行ってみようかと思ったが、地図を見るとみんなの悲鳴が聞こえた。若い男がナイフを振り回して、誰彼構わず切ったり刺したりしている。ちょうど登校時間だ。せっかく世間が忘れかけているのに……。
気を取り直して、パソコンのマップをアトラス(世界地図)に切り替えた。
さすがに、地球規模にすると静かなものだ……突然、ある地点で強烈な光を感じた。視覚で感じたのは初めてだ。直ぐ後に、猛烈な爆発音。これは……核爆発以外にあり得ない。
あたしは、お父さんを説得して、その日のうちに街を離れた。
あたしが住んでいる街? それは混乱が起こるから言えません。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
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高校生ラノベ
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間もなく新学年が始まる。でも、多分行けない……。
それが聞こえ始めたのは、二学期の終わり頃だった。
現代社会の授業を受けているときに、それは聞こえた。
プァーン! プァーン! キキー! ガッシャン! ガラガラ……グシャ。
「ワッ!」思わず声が出た。教室のみんながあたしを見た。
「どうした成島?」
「す、すみません。む……虫が飛んできたんで」
あたしは、居もしない虫のせいにした。
本当は聞こえていたんだ、あのクラッシュの音。
高橋先生は、自分達の街を知ろうということで、この街の地図をプリントして授業をしていた。案外市役所や図書館の位置など分からないものだなあとか、中には、自分の家の位置が分からない者などがいて、案外楽しい授業だった。
そのうち地図から音がし始めた。
最初は、窓から入ってくる街の喧噪かと思った。ようく周りを見渡すと、どうも音源は、あたしの地図だ。最初は、音も微かで、楽しい錯覚ぐらいに思っていた。それが、次第に大きくなり、さっきの電車の警笛と自動車のブレーキ音。そしてクラッシュ! 音からすると車は電車に引きずられグシャグシャになった様子。場所は、街の駅から一つ離れた私鉄と国道の交差する踏切。四階のあたしの教室からよく見える。
そっと、そちらの方を見てみると、何事もなく電車も車も通っている。
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あたしは生理が近くなると、不思議な体験をすることがある。気だるく寝っ転がっていてテレビのリモコン取るのも億劫なとき、気が付くと手許にリモコンがきていたり、あ、スマホがかかると思ったら、直後にほんとに着メロがして、ああ、ヨッコからだと思ったら、本当にそうだった。
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「ヨッコ、危ない!」
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あたしが声を掛けなければ、ヨッコは頭を潰されていた。
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ある時など、商店街の宝石店に自動車で突っこんで強盗が入り、ガラスケースやら、店の中をグシャグシャにして、ほんの二三分で逃げていく音がした。同時に商店街のアーケード入り口の機械時計が五時の時報を打つ音がした。時計を見ると五時五分前だった。
あたしは、迷わずに警察に電話した。
「あと五分で商店街のSS宝石店に強盗が車で突っこみます!」
警察は、すぐにパトカーを走らせ、犯行の真っ最中の犯人を全員逮捕した。
で、あたしのところにも警察が来た。当然だろう、犯行を予告したのだから……。
けっきょくは、なにも証拠もないので、お構いなしになった。だけど、世間に知られてしまい、マスコミに晒されるようになった。二三回はつきあったが止めた。結局は変人と思われただけだから。このままではマスコミのオモチャにされることは見えていた。
そんなこんなで、三学期に入ると、ほとんど学校に行かなくなった。
世間が落ち着いたので、新学年からは行ってみようかと思ったが、地図を見るとみんなの悲鳴が聞こえた。若い男がナイフを振り回して、誰彼構わず切ったり刺したりしている。ちょうど登校時間だ。せっかく世間が忘れかけているのに……。
気を取り直して、パソコンのマップをアトラス(世界地図)に切り替えた。
さすがに、地球規模にすると静かなものだ……突然、ある地点で強烈な光を感じた。視覚で感じたのは初めてだ。直ぐ後に、猛烈な爆発音。これは……核爆発以外にあり得ない。
あたしは、お父さんを説得して、その日のうちに街を離れた。
あたしが住んでいる街? それは混乱が起こるから言えません。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
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