大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『第三の男。その他』

2014-05-20 06:54:26 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『第三の男。その他』



これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、転載したものです。


今週「やみきんウシジマくん2」をやっとるんですが、金貸しの映画なんぞ見たくもないので(山田孝之のファンなんですが)パスいたしました。

 さりとて、また、ボックスオフィス情報ってのもどないやろってんで、いささかイニシエの作品ではありますが……49年英作品、キャロル・リード監督/グレアム・グリーン脚本の“第三の男”であります。 映画史に燦然と輝く作品であります。とは言え、若い人は殆ど見た事無いでしょうね。アントン・カラスのチターによるメインテーマとラストシーン位はご存知かも知れません。
 案外、年嵩の方でも、題名は知っていても全編は見ていないかも……大戦直後のウィーン、喰い詰め三文文士のマーチンス(ジョセフ・コットン)が、親友ハリー・ライムに呼ばれてやってくる。
 しかし、一足違いでハリーは事故死しており途方にくれる。事故を看取った二人の男やハリーの恋人アンナ(アリダ・バリ)に会うが、どうも事故なのか殺人なのかよく解らな
い。当時、ウィーンを取り締まっていた四カ国(英米仏露の軍隊)警察には邪魔にされる。殊に英のキャロウェイ少佐からは「すぐに帰れ」と恫喝される。なんだか胡散臭い情勢。その内、事故を看取ったのが二人ではなく、そこには「第三の男」が存在したと知れる。 疑問を持ったマーチンスは、闇雲にそこら中を突っついて回るが事態はややこしく成るばかり、果ては殺人(第三の男を見た証言者が殺される)の容疑者に仕立てられる。ハリーは何かの闇商売の黒幕だと目されているが、マーチンスには信じられない。
 実は、ハリーは死んでおらず、墓の棺には別人が入っており、「第三の男」とは他ならぬハリーなのだと知れる。そしてハリーの正体も知れてくる。
 
 モノクロ作品の「光と影」っちゅう お題を頂きまして、そら“第三の男”やろってんで見返しました。他にも多数ありますが、やっぱりこれがダントツですわ。
 正直、「これがグレアム・グリーンの脚本か?」と思う程、前半のストーリーテリングはむちゃくちゃであります。
 大昔、初見時も「ナンジャコリャア」と思いましたが、今回も基本的にその感想は変わりません。
 ところが、ハリーが生きているのが解る中盤以降、本作は全く違う顔を見せます。
 街角の闇の中に男の靴だけが見えている。気付いたマーチンスが「誰だ!」と怒鳴る。二階のおばちゃんが「やかましいわよ」と点けた灯りが闇を照らすと…そこに、死んだ筈のハリーが立っている(ここも有名なシーン) ハリーは逃げ出し、その靴音と長く延びる影を追ってマーチンスが駆ける。しかし、ハリーは忽然と姿を消す。
 ここら辺りから、画面が少し斜めに成ったり。深夜のアパートの壁に男の影が映り徐々に近づいて来る、「ハリーの影?」と思いきや、何故か風船売りのおっちゃんだったりとサスペンスを盛り上げる映像のオンパレードに成って来る。現実のウィーンの夜が、まるで「オルフェ」の地獄のように見えて来る。

 この“光と影”は、クライマックス 下水道を逃げるハリーと、追うマーチンスと警官のシーンで最高潮に達する。見事な映像のニュアンス(まさに陰影)を生み出しています。
 ハリーは逃げ切れず、射殺される。冒頭と同じ墓地、今度の棺には間違いなくハリーが収まっている。空港に向かうマーチンスは車を降りて、荷馬車にもたれ、歩いて来るアンナを待つ。彼女はマーチンスの気持ちを知りつつも、彼の前を一顧だにせず通り過ぎる……煙草に火を点けるマーチンス(代表的シーン “カサブランカ”のラストと並ぶ)
 前半あれだけもたつきながら、このシーンからアンナとマーチンスの気持ちが溢れだす。 この、なんとも曰わく言い難いニュアンスはモノクロでなければ表現出来ない。カラーでは絶対醸せない映像なのです。この味を出したいがため、わざわざモノクロやセピアで撮影する人もいます。
 世界が白と黒だけで在ることによってクローズアップされてくるものが間違いなく存在しま
す。たまにはイニシエの作品にも触れて見て下さい。
 おっと、いい漏れてました。ハリー・ライムを演じているのは、かの、オーソン・ウエルズ御大であります。死んだはずのハリーの顔が闇から現れる時の御大の表情が、本作の殆ど総てであります。

 さて、付け足しにチョコッとボックスオフィスランキング。前週の①~⑤が各一個ずつ順位を下げ、今週1位は“NEIGHBORS”週末興収4900万$、スパイダーマン2は②落ち、1億4千万$トータルと、この類いとしては少々苦戦。
 今年も、オスカーから3ヶ月。そろそろ傾向が見えて来ました。アニメと大作は毎度の通りで、ブームなのが宗教作品。もう一つがコメディのようです。このコメディ、金満アメリカンの自分勝手がバックグラウンドにあるものが多く、今週1位の“NEIGHBORS”も、隣に越してきたのが大学のクラブハウス(そんな事が有るんかい?……まぁ、有るんやろなぁ) 学生のバカ騒ぎにセス・ローゲンのお隣さんがブチ切れて抗争勃発ってなお話です。
 リーマンショック以降、意気消沈していた反動が出て来ているんだと思います。おんなじようなテーマで作っていて(俳優のランクも似たり寄ったり)それなりに当たるのもあれば、第一週300万$ポッキリとか、中には4万$未達なんてなトホホな作品もあります。  アメリカンが見たいコメディの傾向が全く解りませんわい。 それと、性懲りもなく、またまた“GODZILLA”を作った(日本公開7/25)のでありますがぁ……東宝第一作は1954年の水爆実験でゴジラが出現した事になっとりましたが、次回ハリウッド版ではゴジラは既に存在していて、対ゴジラ兵器として水爆を使った事に成っとるようです。
 この設定、日本人としちゃあ ちょいと 引っかかりませんか? 予告を見る限り な
んやら「クローバーフィールド」みたいになかなかゴジラの全体像が見えない展開のようです。まぁ、見てみますか。



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