大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・小説府立真田山学院高校演劇部・5〔パンツからスタンウェイへ〕

2017-09-04 06:36:50 | 小説3
小説府立真田山学院高校演劇部・5
パンツからスタンウェイへ〕



 あたしは、スカートめくってパンツ見せる役がきたらどないしょうか心配した。

 けど、それは杞憂やった。
 あたしら、真田山学院は、たいがい並の高校生の在り様からは外れてる。
 今時めずらしい学園紛争をやって民間校長をクビに追い込んだり、軽音とダンス部が演劇部のコンクールに参加して、登場人物日本一のレコードとったり。変態まがいのオッサンが来て、古い小道具の箱から300枚のパンツを出して満艦飾の陳列。それが50年前の卒業生(正確には中退生)で、直木賞作家の高橋さん。
 青春の思い出にふけってるうちに、往年の名作『パンツラプソディー』と『すみれの花さくころ』のコラボ公演の話が決まってしもた。

 二つの作品の共通点は、正当な評価を受けへんかったいう点。

 というわけで、今日は応接室に軽音、ダンス、演劇の部長と難波ホールの支配人、作家の高橋さん、それから知らんオッチャンオバチャンが二人。話を聞くと、共に大阪で一番のNSK歌劇団と劇団到来のエライサンいうことが分かった。
「え、プロの人らと共演ですか!?」
「互いにええ刺激になる。それに生パン見せるのは、高校生にはさせられへんしなあ」
「でも、奥さんは、やらはったんでしょ?」
「あのころの高校演劇は、何でもありやったからな。今は、いろいろうるさいよってにな」

 それから、NSKと到来と難波ホールの支配人に、コンクールのDVDを見てもろた。

「えー、これ落とすか?」「うそー!」「審査員、なに見とるねん」
 三者三様の驚きと非難の声があがった。
「今からYouTubeにでも投稿するか?」
 と高橋さん。
「カメラ一本のべた撮りでは弱い。ちょっと編集させてもろて、プロモの一つにしよ」
 難波ホールの支配人。
「歌とダンスのとこは、うちらにもかませてください。友達の由香との会話は、20人ぐらいに増やして、厚みを出そ」

 DVDを観終わったあと、ほんの20分ほどで粗々の話が決まった。

 あとは、適当にお喋りかと思たら、プロのやることには無駄が無い。ちょっとでも高校生を感じておきたいというんで、学校見学会になった。
 食堂で、定食やらランチやら食べたあと、みんなで学校に入るとこから、授業、休み時間、教室の掃除なんかをダイジェストでやってみた。
「こんな丁寧に掃除はしませんよ」
 という。
「掃除は基本。ここで手ぇ抜いたらあかんなあ」
 と厳しいお返事。

「あ、スタンウェイのピアノがある!」

 NSKのプロディユーサが、同窓会館で発見した。あたしらにしたら、ただの壊れたピアノやけど、かなりのレアなもんで、このまんまでも500万円くらいにはなるらしい。
「これ使いましょう!」
 高橋さんの頭の中で、何かが閃いた。

「同窓会館に眠るスタンウェイ。それが二つの物語を紡ぎだす!」
「ラプソディー真田山。スタンウェイによる……イメージが膨らむなあ!」
 と、劇団到来の鈴本さん。さっそく、学校の備品簿から、このスタンウェイに関わる物語を拾い始めた。


コメント
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