夏時間はこれまで何度か議論されては立ち消えになることを繰り返してきた。しかし、今回は日本のオリンピック組織委員会(IOC)が提案しているので、本格的な議論になるかもしれない。多分、IOCは最近の日本の異常高温を考慮し、東京オリンピックで特定の競技(例えばマラソン)を早い時間に実施したいのだろう。
夏時間の利害得失はウィキペデイアに詳しく述べられているので、そちらをご覧いただくとして、私はアメリカで30数年間Daylight Saving Time (以下、夏時間)を経験したので、私の夏時間に関する感想を述べたい。
●節電効果
夏時間が始まる時は、点灯するのが遅くなるから、確かに節電効果はあると思う。しかし、それならばなぜ1年中夏時間にしないのだろうか、という疑問が生じる。
●経済効果
夏時間が始まる時は、戸外での活動時間が長くなり、その結果カネを使う機会が増えるというが、その経済効果は夏時間が終わる時に相殺され、1年通じてみれば、同じことにならないか。
●余暇時間の充実
勤務先から1時間早く帰宅して、明るいうちになにかしようとするなら(例えば息子とキャッチボールするとか)、確かに「余暇時間の充実」ということはあるだろう。私個人としても、ゴルフできる時間が長くなる(つまり、プレー開始が遅くなる)のは大きなメリットだった。しかし、「余暇時間の充実」はあくまで夏時間の副次効果であり、メインではない。
●交通事故・犯罪の減少
車を運転する時、明るいほうが運転しやすい。したがって、交通事故は減少する(但し、なぜか交通事故が増えるという統計もあるらしい)。そして、犯罪も減ることは期待できる。しかし、これも副次効果である。
要するに、私は夏時間のメリットは認めるものの、喧伝されるほどのことではないと考える。一方、夏時間の始めと終わりに時計の針を進めたり遅らせたりすることには、季節の変わり目を感じるわけで、日常生活にメリハリがつく、という副次効果があると思う。
一方、日本には、夏時間は睡眠不足になるという懸念を示す人もいるが、私はそんな心配をしたことがない。土曜日の夜中に時間が変わるのだから、日曜日の朝に寝たいだけ寝て、起きた時に時計の針を進めるだけのこと。日曜日の昼間から夜に至る間に体が適当に時間の変化に適応する。そもそも、米国の東と西では3時間の時差があるから、時差がある場所に旅行する時の方が夏時間よりも、調整が難しかった。夏時間程度で睡眠不足になっていたら、アメリカでは生活できないーとはチト大袈裟だが。
ところで、昨日(8月8日)朝7時のNHKのニュースは、夏時間に関する世論調査の結果を報道した。それによれば、賛成が50数パーセントで、反対が30数パーセントとなっていた。夏時間は、過去何度も議論されては消えた経緯からして、私は不賛成の方が多いだろうと想像していたから、賛成が過半数だったことは意外だった。
ところが、その世論調査の結果はその晩のニュースでは報じられなかった。通常、NHKは朝に報道したことを昼や夜にも繰り返すが、この件は朝だけだった。これは異例である。反対派がNHKに圧力をかけたのだろうか。