吉本興業に所属する芸人が“闇営業”で暴力団の会合に出席して金銭を受け取っていたということで、吉本興業は関係芸人十数人を無期限の謹慎処分にした。この件は、マスコミの話題となり、産経新聞は「反社会的勢力と断絶せよ」という見出しで、社説に取り上げた。そして、各民放のニュースショウは挙って、この話題を論じている。
この事案には二つの側面がある。一つは暴力団の会合に出席したこと、もう一つは“闇営業”をやったこと。
私は謹慎処分になった宮迫某とか、スリムナントカなどの芸人の名前を今日まで知らなかったし、どんな芸をするのかも知らないが、“暴力団”云々もさることながら、彼らが“闇営業”をやったことに興味がある。
マスコミは暴力団とのつながりを重視してこの件を報道しているが、業界としては“闇営業”の方が重大問題である。すなわち、“闇営業”されたら、芸人を抱えている会社は出演料をピンハネする機会がなくなり、会社の経営が成り立たなくなるのである。
今回の騒動は暴力団が絡んでいたから、マスコミが大々的に取り上げたが、もし“闇営業”の相手が、例えば無名の宗教団体だったらどうだったろう? 芸人があまり知られていない宗教団体に“闇営業”したという事件だったら、マスコミはこんなに大々的に扱わなかっただろう。
と考えたが、そんなことはありえない。なぜなら、もし宗教団体から直接出演の依頼があれば、原則としては、芸人は「会社を通してください」と言うはずだからだ。しかし、「原則」の部分はあいまいで、小規模の集会から個人的に出演を依頼されたときは、いい小遣い稼ぎとばかり、彼らは“闇営業”(直接交渉)に応じるのではないか。そこで吉本興業はなんらかの手を打つ必要があるが、今回は暴力団が絡んだので、会社側は厳しい処分を下す大義名分があり、いいチャンスだったのではないか。
要するに、“闇営業”を承諾した芸人たちに倫理観・道徳観が欠けていたということだろう。芸人たちが阿呆ぶりを広く世間に知らせた一件である。