さて、練習も終えて、腕の筋肉痛も癒えた次の週からは、いよいよ包丁づくりに入った。
また、棒を伸ばしての鋼挟み込みか?とも思ったが、鉄(鋼入り)の板を押し切りで、包丁の形に切り出した原型から始まった。
例によって、これを焼き釜の中に入れて、真っ赤に焼きました。
今度は薄い板なんで、すぐに赤く焼けます。練習の勘を取り戻して、機械ハンマーで叩いて伸ばしますが、刃の部分を意識的に叩いて、気持ち薄く伸ばさないと、刃にならない~
しかし、叩き過ぎもダメ機械ハンマーの叩く強さスピードも、このペダルひとつの踏み込み加減次第なので、一番難しいデカい機械がブンブン回転し、ハンマーを打ち下ろす名人は、例によって「トントントントン~はいもっとココ!ヤットコ返して!~はい返して!!」と言って調子を教えるが、ガチガチに緊張しながら、挟んでいるヤットコを前後させ、返しをするが、角度が悪いとハンマーに弾かれて撥ねられ落としてしまう(泣)
もたもたしてると、冷えて黒い鉄は伸びない(泣)
まさに、[鉄は熱い内に打て]だ何度か焼き直して、また叩いて伸ばす。が、名人いわく、焼きを繰り返し過ぎると「脱炭素」になり、鉄は弱くなるとの事手早く叩いて成形するのがポイントとの事。
そう言われても(泣)波打った包丁は、今度はアノ分厚い金床の上で、ゲンノウ(鎚)を握って手で叩いて整形する。
ぐにゃぐにゃの刃や峰、切っ先を、真っ直ぐにバランスを取る。が、これまたヤットコの挟み方が難しい(泣) ぐらぐらの遊びの多いハサミみたいなもので、上手く固定出来ない!
<P>名人は、「ハイここ!峰の出っ張りを叩いて!~ハイもっとココ!取っ手の角度は峰と一直線、ハイもっとココ!トントントントン!ヤットコは下から挟む!叩いて!~ここ叩いて!!」と言って親切に打ち所を教えるが、すばやくその支持に動かない~鎚を持つ腕もガチガチに(泣) 腕の筋力には自信があったが、力いっぱい握り締めていると、いつのまにか重いゲンノウを持つ手はヘナヘナになってしまう。
左手のヤットコも、自由に挟めない状態に、いっそのこと素手で握りしめたくなる衝動になるが、それだけは出来ない(泣)
名人の手助けもあって、まだ、黒い金物の様相だが、なんとか形になった(笑)
緊張状態が続いて、手、肩まで疲労感が残るが~、楽しくて仕方ないモノづくりの時間です(笑)
余裕が出て周りを見回すと、工房には、包丁・鋸、ハサミ、などなどたくさんの生活道具の型金があり、名人の加工を待っている。
さて、削りだしは、出来上がりの包丁の形に、マジックで形を書いて、余分なところをグラインダーで削り落とし、整形するという作業。 まだ全然切れない包丁に、出来るだけ有効に取れる形に線を引いた。
グラインダーで、線をなぞるように削り落としていく~。
この時は、手袋とゴーグルが必需品~メガネをしていても、熱い金属火花が目に入ると、小さな火傷のシミを角膜に作るそうだ。
いよいよ、包丁らしい形になった。
次は、焼き入れ工程。「焼き入れ」を専門的に言えば、鋼は1気圧で、鉄の純度100%の場合には、911℃~1392℃の温度に加熱すると、オーステナイト組織の状態になるが、これを水中または油中で急冷することによって、マルテンサイト組織(炭素を含有する鉄合金では組織は非常に硬くて脆い層組織)の状態に変化させる熱処理のことで、日本刀を鍛える映像でよく見るあの処理。
でも、炭素量が0.3%以上でないと、焼入れ効果は期待できないとのことで、名人が言った『焼きすぎて、脱炭素はいけない』とは、このことだったと分かった。
この焼入れ作業は、名人の手にゆだねられた(泣)~
名人は水ではなく、油に焼入れした。
真っ赤に焼けた刃が油の中につけられ、数秒後に引き上げられた。
そして、水滴を包丁の上に落として、瞬間に沸騰する水玉の形を見て、何か?判断していた。『水玉が、ぎゃん走らんといかん!』と言われたが、未だ熱い鉄なら、ぎゃん走って当たり前だろう~とも思った。
ともかく焼きいれのオーステナイトの温度と、急冷してのマルテンサイト組織の引き上げのタイミングは、一朝一夕では習得は難しい。
焼きいれ後、整形を再びする。
金属は、焼いたり冷やしたりするたびに、変形するもので、焼入れ後のこの冷えた状
態での整形が、あとあと一生の形になる。
さて、いよいと水砥石で刃を付ける作業~簡易の取っ手を突っ込んで、約80番の粒子の砥石に当てて、切れる刃まで研ぎだす。
研ぎあがると、すでに切れる包丁になっていた。
これで完成ではなく、あとはひたすらサンドペーパー(以下、SP)での磨きの作業~。
このため、休日にはハンズマンで、SPを複数買い求めた。
完成まで、毎週水曜日は、SPでのひたすらの磨き作業~少しでも早く完成させナイフに行きたいが為に、自宅では晩酌しながらの、夜なべ磨きも何回とやった。
ポイントは、水砥石の80番の磨き傷が入っているのを消し去ること!
ところが、この作業は危険が一杯!~すでに80番でも切れるに刃に沿って、何度もSPを滑らすのだから、油断すると指のスライスが出来る~幸い怪我はしなかった。
ちなみに、80番から始めて、120→180→240→600→1000→1200→2000番と粒子を小さくしていく。1200番くらいから、顔が映るようになる。
磨きだした鋼の波紋をしみじみと眺めると~こんな包丁でも、芸術的!って思えるようになる(笑)
いよいよ、完成日。刻銘式?マイナスドライバーみたいなポンチで、-(マイナス)の刻印を組み合わせて、名前を刻んだ。
これで、世の中に一本しかない、『マイ包丁』の証明が出来た感ができた。取っ手を付けて完成した!大きな包丁ではないが、適度な大きさなので実用的で使いやすい。
それに切れ味最高!
最後に、投票ボタンを、『ポチッ!』とお願いします。