Goo・ちょき・パーで、なに作ろう!

定年退職してしまいましたが、再任用でまだまだ老後の蓄えをしなくてはなりません。それでも悔いのない人生にしたいと思います。

鑿(ノミ)・切り出しナイフ完成!

2010年08月24日 23時44分28秒 | Weblog

2010.6.30作業

さて、次の作品はどんなモノにしようかとは、前作の途中から考える癖がついてしまった

それで何を考えていたかと言えば『彫刻の道具(鑿・切り出しナイフ)』だ

 例によって、厚紙に型紙をとって、べニア板を利用して実物大に作って、前もって師匠に見せた。
事前に持ち込み見せれば、デザインのアドバイスや機能性の面からの変更とか色々と意見を貰えるからメリットがあるのだ

おかげで当日はすでに鋼材が準備されていた
半分から上が鋼(ハガネ)、半分以下の取っ手部分は普通の軟鉄。
これを溶接して1本にしてある。接合部分は綺麗に研磨してある
コスト削減の意味もあるが、ノミは取っ手の端をハンマーで叩くので、鋼鉄では衝撃で欠けたり、槌も参ってしまうのだ

これら3本を同時に作成する事となった

 

最初は、切り出しナイフからとりかかった。
焼き釜に取っ手部分を先に入れて数分、色具合を見て取り出す。
久しぶりのハンマーの感を取り戻しながら、取っ手の部分から形作って行く。

師匠曰く『ともかく、取っ手は薄く、団扇みたいに広がるように~でないと重心が後ろの取っ手に来て、使いにくいバイ!』

素人では全く気付かない重心の位置やそのための延鉄作業だ

『そうそう、そうそう、叩いて叩いて!コッチ、コッチ、ハイ、裏
騒々しいハンマーの音の中に、師匠の指示を聞きとらねばならない

 

こんな感じで、取っ手は薄く延ばし、団扇みたいに広げて、重心を刃の方に持っていく
取っ手は後で、グラインダーでもう少し小さく削り取るので、そのまま放置。

次は、U字の彫刻鑿~鋼材を釜に投げ込む。


 

U字型に湾曲させるのはどうするかと思っていたら、径の違うU字型の窪みがある鉄のブロックを師匠が出してきた

マッチするU字の溝に乗せて、別の鉄棒を当てその上からハンマーで叩いてだんだんとR(径・丸み)を付けて行く方法だった

なるほど、ちゃんとこんな道具があったんだ


  

ある程度のRが付くと今度は表側からのからの成形~その為に万力にT字型の丸棒を挟み込み、表側からハンマーで成形~再びU字型の窪みブロックで成形~これを数回繰り返して、いい形のU字型が出来た。
  

  

刃の方が出来たので、取っ手部分の削り出し~温石(おんじゃく)でグリップの形を描き、その線に合わせて削っていった。


  

3本とも取っ手を削り出し、だんだんらしくなってきた。

  

2010.7.14作業

これは始業前の鍛冶屋工房の風景です。
所狭しと色々な道具が配置されています


  

さて、今日は水砥石での荒研ぎです。
切り出しナイフは、同じ幅で刃を付ける事ですが、これがなかなか難しい
回転する丸い曲面の砥石の当てる場所を決めてその位置を維持しますが、向こうに回転しているので、力を抜くと向こうに持って行かれます。ホントは写真など撮っている場合じゃないのです

裏の部分は『裏だし』と言って、窪みを付けます。カンナやノミの裏が凹んでいるのが裏だしです。
刃の部分は片刃なので片面の約1mmが鋼鉄で、軟鉄と張り合わせてあります。鋼鉄が薄くなり過ぎないように注意し裏だしします。

 

荒研ぎが終わり、取っ手部分の角をヤスリがけして滑らかにします。
今日はここまで。師匠の包丁や鋸と一緒に、『焼き入れ』を待ちます。
 
ここで『焼き入れ』はどの様にされているか聞いてみたら、別の所にある工房で、トロトロに融けた鉛、温度は760度から800度の鉛の中に浸すそうです
液体なので、炎と違ってまんべんなく同じ温度で熱処理が出来、その後水焼き入れ(または、油)するとのことです。
でも鉛は体に悪いのと、環境面の問題により”鉛焼き入れ”を廃止する動きもあるようですが、新技術の”高周波焼き入れ”は導入していないとのこと。


2010.7.21作業
前回から1週間後、焼き入れが済んだ今日は、いよいよ研ぎです
その前に、焼き入れの時に着いた鉛や油汚れを、回転ブラシに粘土を塗って、それで落とします。
研ぎ場はこんな感じで、左側は壁で電動ハンマーの裏側に当たる所
 
使う砥石は、右から荒研・中研・仕上げ研~手前の砥石は、各砥石を常に平面に保つための、砥石用の砥石
てな感じで、専門職の砥石を使わせてもらった。
砥石の材質は、自然石や合成人造砥石があるが、後者が食い付きが良いとのこと~ただし、すり減るのも早いそうだ
先ずは平ノミを研ぐ~指先で刃を押さえ、一定の角度を維持してひたすら研ぐ。しばらくしたら、砥石を向こうと手前を逆に反転~こうすることによって砥石の片減りを無くし、有効に全面を使う事になるそうだ。さらに何度かの反転をしたら、砥石の砥石で砥石同士を平らに均した

 
同様に中研ぎを繰り返し、その後は、いよいよ仕上げ
仕上げの目安は、表面を一生懸命研げば、”返し(刃が反り返る部分が1面側に出る事)”が出来るのを磨き取りし、一番鋭角になった時が研ぎの完成の目安
もう既に汗だくとなる運動量だ

 

 続いて、切り出しナイフ
これも同様に、ひたすら必死で研ぐ
この様に、ピカピカになるのが嬉しい
研ぎの注意点は、①砥石の面は常に平面に調整する事。②研ぎ汁は頻繁には洗い流さない事。(研ぎの効果が薄れる)③砥石を小さい目に替える時には、溜め水のバケツの水を交換する事。(砥石の大きな粒子がキズを付ける)

 

 

 

帰宅して、試しに”モモ毛”を剃ってみた
この様に、ツルッツルに剃れた
平ノミの方は、角で皮膚まで切ってしまった

 

その夜、左手の人差し指先がヒリヒリして痛みだした
砥石に擦ってしまったのだ
数日後、皮が剝け始めた

 

●2010.7.28作業

さて、今夜は丸ノミの研ぎだ
作るのも大変~研ぐのも一番大変と予想が付いて後回しにしていた
始業のミーティングで、荒砥石の購入を勧められた~なぜならば、U字にはU字をもってしないと研げないから、新規が必要なのだ

 

平たい面の中筋を何度も擦って(研いで)、だんだんとノミと同じU字の研ぎ面を作って研いでいく
刃の弧面全体を研いだら、内側のU字面
こちらは、小さな砥石の角を取り、裏の弧面全体を研ぐ

 

荒研ぎから中研ぎ、さらに仕上げ研ぎをひたすら汗だくになって続ける仕上がりはこの通り~ 木の棒もカッターナイフのように削れるようになった

 

 

これで、彫刻用の3本組セットが完成した。

Kさんにいつもの皮サック作成を頼もうとしたら、『ノミとかは皮サックに入れるとかえってサビが来るから、この紙カバーの方が良い』ということだった。
また、取っ手を木や角でグリップを作っても割れの元そのままが一番良いという事だった
でも、後日、取っ手面に蝋を引き夏の炎天下で一面にコーティング次いで、ハム製造にも使う細紐を取っ手に巻き、全てを完成した。

 

 


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