この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ZOO。

2005-04-02 22:12:04 | 新作映画
映画『ZOO』を観てきました。
原作者の乙一は個人的に一番の贔屓の作家なので九州で公開されるのをずっと心待ちにしていました。(東京では二週間ほど公開が早い。)
さて乙一初の劇場作品の出来栄えはというと・・・。

『カザリとヨーコ』。
(story)カザリとヨーコ、双子でありながら一人は母親から溺愛され、一人は虐待されるという境遇にあった・・・。
(comment)まずまず原作に忠実な作りでした。逆にいえば冒険心がないというか。
ただ原作でのキャラクターの深みみたいなもの、つまり母親から虐待されつつも根が妙に明るいというヨーコの複雑な性格までは映画では描写されてませんでした。
なので最後のシーンで、ヨーコが「オッシャアアアアアア」と叫ぶところが唐突な感じがしました。
でも主役(カザリとヨーコの一人二役)を演じた小林涼子の演技はそれなりに評価されてよいと思います。

『SEVEN ROOMS』。
(story)ある日謎の男によってコンクリートの小部屋に閉じ込められた姉と僕。小部屋は七つあり、どうやら閉じ込められてから六日後に殺されてしまうらしい。姉と僕の絶望的な脱出行の行方は・・・。
(comment)これまた原作に忠実でした。若干イメージしていたよりも部屋が狭いかなと感じましたが。

『SO-far』。
(story)ある交通事故のあった日を境に、父は母が死んだとぼくに言い聞かせ、母は父が亡くなったかのように振舞うようになった。どうやら二人を同時に認識できるのはぼくだけらしい・・・。
(comment)これまた原作に忠実な、というか、表題作の『ZOO』以外どれもそうなのですが。主人公の少年役の神木隆之介がずば抜けて上手かったです。「日本一の子役」と呼ばれるのも伊達じゃないってことですね。

『陽だまりの詩(し)』。
(story)ほとんどの人が死に絶えた世界で、わたしは一人の男を埋葬するために作られた・・・。
(comment)五作の中で唯一のアニメーション。しかもフルCG。CGアニメなんてほとんど信頼してなかったのですが、いつの間にか技術も向上したのか、CG特有のわざとらしさみたいなものはなくなったんですね。よかったです。

『ZOO』。
(story)廃園となった動物園で恋人を殺めてしまった男の元に誰からともなく写真が届けられるようになり・・・。
(comment)唯一原作とは趣きが若干異なる作品。雰囲気的には悪くないものの、ストーリーがいまいち掴めなかった。とはいえ、原作の方も元々常人には理解しがたい話であったのでそれも止むを得ないといったところか。

五作ともかなりの力作といってよいと思います。
ただなにぶん原作の方を先に読んでいるものだから、物語自体にはほとんど感動とか感銘といったものは覚えませんでした。鑑賞中原作と映画の差異ばかり追っていた自分がいたことは否めません。
五作のうち唯一原作を上回ったかなと思えたのはアニメである『陽だまりの詩』ぐらいで、あとの作品を観てもやっぱり映像では乙一の奇妙なティストは表現できないのかなぁっていう感想しか持てませんでした。
さてさて、年内に公開される(という話の)乙一の最高傑作『暗いところで待ち合わせ』の出来栄えは如何に?

ところで鑑賞後、劇場の窓口でパンフレットを買おうとしたら、係りの人から「300円になります」といわれ、やけに安いなぁと思ったのですが、ただのチラシでした。
こんなのパンフレットじゃないやん。。。
コメント (7)
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