田中光敏監督、内野聖陽主演、『海難1890』、12/3、Tジョイ久留米での試写会にて鑑賞。2015年44本目。
振り返るにはまだ些か早い気もしますが、2015年はとても充実していた一年でした。
とてもありがたいことだと思っています。お世話になった方には感謝の意を表したいです。
ただ、映画に関しては、というか正確には試写会に関しては、もう一つな年でした。
何しろ今年当選した試写会はたった一回でしたからね(その一回が『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』ということに何か意味があるのかもしれないですが)。
だいたい毎年、三、四回は当選するんですけれど。
と思っていたら年の瀬になって『海難1890』の試写会が当たりました。やっぱり今年はツイてるなぁ。
この映画は1890年に和歌山県串本町沖でオスマン・トルコ船籍のエルトゥールル号が沈没した際、地元村民が献身的に行った救助活動と、1985年イラン・イラク戦争時にテヘランに残された日本人を救出するためにトルコ政府が救援機を飛ばした出来事とを絡めて描いた作品です。
どちらの出来事も人間が本来持っているであろう心の中の“善”が起こした感動的な逸話なのですが、感動的な出来事を二つ合わせて映画にしたとしても、必ずしも感動的な映画になるわけではないのだな、と思いました。
前半のエルトゥールル号沈没事件編では、物語は田村元貞という1人の医者を中心に動くのですが、この田村という医者があまりにも完璧な人物として描かれているんですよねぇ。
医者としての腕はよいが、貧乏人からは治療費を受け取らず、有事の際も肝が据わっていて、的確な指示を出し、さらに英語にも通じているという、およそ欠点というものが見当たらない人物なのです。
こんな人物、本当にいたのかな?と思って鑑賞後調べたら、案の定映画のために作られた、架空の人物でした。
これは正直感心しないですね。
史実を映画にする際、そのままでは作品になりにくいという理由で架空の人物を主人公に据えるというのはわからないでもないですが、その場合、完璧な人物を主人公に据えるべきではない、と自分は考えます。
なぜなら主人公が完璧すぎると、それだけで物語が嘘っぽくなるからです。
また本作は日本とトルコの合作なのですが、監督が日本人であるせいか、邦画特有の欠点である登場人物が心に思ったことを口にするシーンがところどころありました。
例えば、田村をサポートする看護師としてハルという女性が登場するのですが、彼女は婚約者を海で亡くしたという設定です。
彼女に想いを寄せる漁師の男が彼女の背中を見つめながら、「俺はあいつにしてやれることが何もないんじゃ」と呟くシーンがあるのですが、普通、そんなことって想ってはいても口に出したりはしないですよね。
作り手がなぜそのように改変したのか、そういうシーンを挿入したか、おおよそわかるつもりです。おそらくは観客にわかりやすいものを提供しようとしたのでしょう。
しかしそうすることで作品がずいぶん安っぽいものになってしまった、と思いました。
また後半の日本人救出編ですが、自分は史実として、そういうことがあったのだということは知っていました。
が、映画を観て初めて知ったことがいくつもありました。
自分はこれまで当時のテヘランでは日本人が脱出するすべがなかった、またトルコ政府はその日本人を救出するためだけに専用機を飛ばしたのだと勝手に思ってました。
だが映画を観る限りではどうも違うようなんですよね。
というのも、救援機に日本人を乗せたため、乗れなかったトルコ人は陸路でイスタンブールに脱出した、と映画の中で説明があったのです。
え?って思いましたよ。
そして続けて、こうも思いました。
そのトルコ人たちが脱出した陸路のルートで日本人たちも脱出すればよかったんじゃないの?って。
たぶんこの感想は間違ってるんですよ。
(その陸路では)トルコ人たちでは脱出出来ても、日本人では脱出出来ない、何かしらの理由があったから、日本人はテヘランに留まらずを得ず、また優先的に救援機に乗せてもらえたのだと推測されます。
ただ、その理由が映画の中では述べられなかったので、トルコ人が日本人に手を差し伸べる、感動的なシーンでも、何かモヤモヤしたものが胸の中にあって、素直に感動出来ませんでした。
当時日本人がテヘランからの陸路での脱出を断念せざるを得なかった、具体的な理由をご存知の方は教えてください(ネットで調べてもよくわからなかった)。
相変わらず細かいところが気になって、どうも評価が低くなりがちですが、本作は決して不出来な作品というわけではなかったですよ。
歴史好きな方であればまず観て損はないと思います。
あと一つだけ、作品の出来とは直接関係ないのですが、本作は唐沢寿明主演の『杉原千畝 スギハラチウネ』と公開日が同じなんですよね。
どちらも史実を元にした、人を助けることがテーマの作品なので、客層がかぶるような気がするのですが、公開日をずらさなかったんでしょうかね。
実際試写会に一緒に行ったお袋は『海難1890』を観たから『杉原千畝 スギハラチウネ』の方はいい、みたいなことを言ってましたけどね…。
お気に入り度★★★、お薦め度★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)。
振り返るにはまだ些か早い気もしますが、2015年はとても充実していた一年でした。
とてもありがたいことだと思っています。お世話になった方には感謝の意を表したいです。
ただ、映画に関しては、というか正確には試写会に関しては、もう一つな年でした。
何しろ今年当選した試写会はたった一回でしたからね(その一回が『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』ということに何か意味があるのかもしれないですが)。
だいたい毎年、三、四回は当選するんですけれど。
と思っていたら年の瀬になって『海難1890』の試写会が当たりました。やっぱり今年はツイてるなぁ。
この映画は1890年に和歌山県串本町沖でオスマン・トルコ船籍のエルトゥールル号が沈没した際、地元村民が献身的に行った救助活動と、1985年イラン・イラク戦争時にテヘランに残された日本人を救出するためにトルコ政府が救援機を飛ばした出来事とを絡めて描いた作品です。
どちらの出来事も人間が本来持っているであろう心の中の“善”が起こした感動的な逸話なのですが、感動的な出来事を二つ合わせて映画にしたとしても、必ずしも感動的な映画になるわけではないのだな、と思いました。
前半のエルトゥールル号沈没事件編では、物語は田村元貞という1人の医者を中心に動くのですが、この田村という医者があまりにも完璧な人物として描かれているんですよねぇ。
医者としての腕はよいが、貧乏人からは治療費を受け取らず、有事の際も肝が据わっていて、的確な指示を出し、さらに英語にも通じているという、およそ欠点というものが見当たらない人物なのです。
こんな人物、本当にいたのかな?と思って鑑賞後調べたら、案の定映画のために作られた、架空の人物でした。
これは正直感心しないですね。
史実を映画にする際、そのままでは作品になりにくいという理由で架空の人物を主人公に据えるというのはわからないでもないですが、その場合、完璧な人物を主人公に据えるべきではない、と自分は考えます。
なぜなら主人公が完璧すぎると、それだけで物語が嘘っぽくなるからです。
また本作は日本とトルコの合作なのですが、監督が日本人であるせいか、邦画特有の欠点である登場人物が心に思ったことを口にするシーンがところどころありました。
例えば、田村をサポートする看護師としてハルという女性が登場するのですが、彼女は婚約者を海で亡くしたという設定です。
彼女に想いを寄せる漁師の男が彼女の背中を見つめながら、「俺はあいつにしてやれることが何もないんじゃ」と呟くシーンがあるのですが、普通、そんなことって想ってはいても口に出したりはしないですよね。
作り手がなぜそのように改変したのか、そういうシーンを挿入したか、おおよそわかるつもりです。おそらくは観客にわかりやすいものを提供しようとしたのでしょう。
しかしそうすることで作品がずいぶん安っぽいものになってしまった、と思いました。
また後半の日本人救出編ですが、自分は史実として、そういうことがあったのだということは知っていました。
が、映画を観て初めて知ったことがいくつもありました。
自分はこれまで当時のテヘランでは日本人が脱出するすべがなかった、またトルコ政府はその日本人を救出するためだけに専用機を飛ばしたのだと勝手に思ってました。
だが映画を観る限りではどうも違うようなんですよね。
というのも、救援機に日本人を乗せたため、乗れなかったトルコ人は陸路でイスタンブールに脱出した、と映画の中で説明があったのです。
え?って思いましたよ。
そして続けて、こうも思いました。
そのトルコ人たちが脱出した陸路のルートで日本人たちも脱出すればよかったんじゃないの?って。
たぶんこの感想は間違ってるんですよ。
(その陸路では)トルコ人たちでは脱出出来ても、日本人では脱出出来ない、何かしらの理由があったから、日本人はテヘランに留まらずを得ず、また優先的に救援機に乗せてもらえたのだと推測されます。
ただ、その理由が映画の中では述べられなかったので、トルコ人が日本人に手を差し伸べる、感動的なシーンでも、何かモヤモヤしたものが胸の中にあって、素直に感動出来ませんでした。
当時日本人がテヘランからの陸路での脱出を断念せざるを得なかった、具体的な理由をご存知の方は教えてください(ネットで調べてもよくわからなかった)。
相変わらず細かいところが気になって、どうも評価が低くなりがちですが、本作は決して不出来な作品というわけではなかったですよ。
歴史好きな方であればまず観て損はないと思います。
あと一つだけ、作品の出来とは直接関係ないのですが、本作は唐沢寿明主演の『杉原千畝 スギハラチウネ』と公開日が同じなんですよね。
どちらも史実を元にした、人を助けることがテーマの作品なので、客層がかぶるような気がするのですが、公開日をずらさなかったんでしょうかね。
実際試写会に一緒に行ったお袋は『海難1890』を観たから『杉原千畝 スギハラチウネ』の方はいい、みたいなことを言ってましたけどね…。
お気に入り度★★★、お薦め度★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)。