この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

結局よくわからなくなった『ガタカ』。

2018-02-21 21:50:47 | 旧作映画
 昨日は映画『ガタカ』の最終考察を書きかけて、途中で止めました。
 何だか急に自分の考察に自信が無くなったのです。

 自分は初鑑賞以来、ジェロームが自ら命を絶ったのは、ビンセントが生きて地球に帰らない、そう思っていたからだと考えていました。
 そう考えると何もかもが腑に落ちるからです。
 それに、単に宇宙飛行士になりたいと夢見ている男の宇宙行きの手助けをするよりも、宇宙に行ったら死ぬ男の宇宙行きの手助けをする方が、よりドラマティックじゃないですか?
 さらに言えば、主人公は見事宇宙飛行士になりました、その一方で主人公が宇宙飛行士になるために協力した男は自ら命を絶ちました、ではあまりにもバランスが悪すぎますよね?
 ビンセントが地球に生きて戻らない、ジェロームがそう考えていたのであれば、映画はよりドラマティックになり、より完璧に、より感動的になる、そう思っていました。

 しかし、、、昨日、ビンセントが宇宙へと旅立つ日の朝のシーンを見ていて、あれ?と思いました。
 ジェロームはビンセントにこう言います。
 おまえが地球に戻ってきたとき困らないように(検体サンプルを)大量に用意した、と。
 自分はこれまでこの言葉を額面通りには受け止めていませんでした。
 なぜかというと理由その1、尿や血液といった検体サンプルは一度に大量に用意できるものではない。
 理由その2、仮に大量に用意できたとしても、ビンセントが地球に戻ってくる一年後には(いくら冷蔵保管していても)検体サンプルは変質、劣化、腐敗していて検査に不適だからです。
 一年間冷蔵庫に入れっぱなしだった牛乳なんていくらずっと冷やしていたとしても飲めるものじゃないですよね。それと同じです。

 だから、ジェロームの言葉は、お前が地球に戻るのを待っているぞ、という彼なりの激励なのだろう、ぐらいに思っていました。
 しかし昨日そのシーンを見ていて、もしかしてジェロームは本当に一年後ビンセントが戻ってきたときのために検体サンプルを用意しているのか?と疑問に思ってしまいました。
 それは先ほど述べたような理由で二重にあり得ないんです。
 でもジェロームの目を見ていたら、そう思っているように思えて仕方なくなったんですよね。
 
 しかし、そうなると今度は『ガタカ』という映画そのものが自分にとってまるでわからないものになります。
 他の多くの人同様に、なぜジェロームが命を絶ったのかまったくわからない…。

 一度理解したはずの作品がふとしたことでまるでわからないものになる、そんな経験は初めてだったで、自分でもちょっと戸惑っています。
コメント (2)
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