この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ハッピーエンドとアンハッピーエンドは紙一重。

2019-07-11 20:47:15 | 旧作映画
 映画のお茶会主催のumeumeさんは「全日本ハッピーエンド推進評議会会長」なのだそうです。笑。
 ハッピーエンドを推進したくなる気持ち、わからないではありません。
 何といっても自分が一番好きなテレビアニメは『未来少年コナン』ですからね。
 『未来少年コナン』以上のハッピーエンドの作品ってないんじゃないでしょうか。

 しかし同時にハッピーエンドとアンハッピーエンドってそんなに簡単に境界線は引けないだろうとも思いますね。
 例えば『ターミネーター2』ってハッピーエンドなんですか?それともアンハッピーエンド?
ハッピーエンドに決まっているだろう、未来からの刺客であるT-1000を倒しているのだから、っていう人もいるかもしれません。
 でもT-1000を倒すためにT-800が犠牲になっているんですよね。
 誰かが犠牲になったとしても最終的に敵を倒すことさえ出来ればハッピーエンド?
 まぁ人生と同じでハッピーエンドの定義もそんなに簡単なものではないのでしょう。

 自分は『ターミネーター2』のエンディングをハッピーエンドでもアンハッピーエンドでもなく、これ以上のものはない、ベストエンドだと考えています。
 仮に『ターミネーター2』でT-800が生き残り、サラやジョンと「敵のターミネーターを倒したことだし、みんなで焼き肉でも食べに行くか!」みたいな終わり方だったら最悪ですよね。
 そんなハッピーエンドの『ターミネーター2』は見たくないです。

 さて、自分はハッピーエンドとアンハッピーエンドの境界線を引けない作品の一つに『マーターズ』があると考えています。
 何言ってるの?少女が延々と拷問され、最終的に皮まで剥がれる『マーターズ』のどこにアンハッピーエンドではない要素があるというの?という人もいるかもしれません。
 いや、『マーターズ』を見た人のほとんどはそう思うに違いありません。

 ただ自分も根拠なくそう主張しているのではないのです。
 根拠はあります。
 あるのだけれど、それを説明するとかなり長くなるのですが…。
 
 マドモアゼルは従者に「疑いなさい」と言い残し、拳銃自殺します。
 「疑いなさい」と言ったということは彼女自身疑っていたということになります。
 自分自身で疑っていない人間が他人に「疑いなさい」というのは筋が通らないですからね。
 では彼女は何を疑っていたのか?
 この場合は文脈から死後の世界のことだとうかがえます。

 でもおかしいですよね。
 なぜ死後の世界の存在を探る首領であるマドモアゼルが突然死後の世界の存在を疑うようになったのか?
 この場合の鍵はマドモアゼルが直前に聞いたアンナの今わの際の言葉でしょう。
 アンナの言葉によってマドモアゼルは死後の世界の存在を疑うようになってしまったのです。
 このことからアンナの今わの際の言葉は死後の世界に関することではなかったということになります。
 アンナが死後の世界のことを呟いて、それを聞いたマドモアゼルが死後の世界の存在に疑念を抱くというのはやはり筋が通らないですからね。

 ではアンナは具体的に何と呟いたのでしょうか。
 間違いなく言えるのは、その時のアンナはマドモアゼルに一矢報いてやろうとか、一杯食わせてやろうとかいった、そんな複雑な思考が出来るような状態ではなかったということです。
 単純にその時心の中で思っていたことを口にしたに過ぎない。
 
 アンナが死ぬ間際に心の中で思っていたこと、それは一つしか考えられないですよね。
 そう、親友であるリュシーに対する謝罪です。
 彼女はこう呟いたのではないでしょうか。
 リュシー、あなたのことを信じなくてゴメンなさい、あなたのことを信じていればこんなことにはならなかったのに…。
 
 アンナはリュシーから計画のすべてを聞いて同行していたのではないのでしょう。
 ただ、すべての決着をつけてやる、ぐらいの曖昧なことしか聞いていなかったのではないでしょうか。
 それで一家を惨殺し始めたリュシーを見て、彼女が狂ってしまったと思ってしまった。
 つまりアンナはリュシーを疑い、リュシーはアンナに疑われたことに絶望し、自ら命を絶ったのです。

 一方アンナの言葉にマドモアゼルは絶望しました。
 なぜかというとマドモアゼルがアンナの口から聞きたかったのは、死後の世界に関することだったからです。
 何でもいい、お花畑が綺麗ですとか、天使が舞っていますとか、光に満ち溢れていますとか、そういった死後の世界に関することを聞きたかった。
 彼女は死後の世界を探ることに生涯を賭けていたのです。
 アンナの口から親友への謝罪の言葉など聞きたくなかった。
 このあと組織のメンバーに対し、彼女はアンナの今わの際の言葉を伝えなければいけませんでした。
 しかし、彼女はアンナは死ぬ間際、親友への謝罪の言葉を口にした、などと説明する気にはなれませんでした。
 だから彼女は拳銃自殺したのです。

 長くなりましたが、要約するとマドモアゼルはアンナの言葉を聞いて自ら命を絶ったということになります。
 死後の世界を探る組織がマドモアゼルの死後どうなったのか、作中描かれることはありません。
 マドモアゼルには後継者がいて、彼女の死も大した痛手にはならなかったのかもしれません。
 しかしマドモアゼルという巨大な求心力を失って組織は崩壊した、とも考えられます。
 どちらとも考えられるというのであれば、自分は当然後者を採ります。

 武器一つ持たない無力な少女の言葉によって、巨大な悪の組織が崩壊したのであれば、こんな痛快なことってないですよね。
 自分が『マーターズ』を単純なアンハッピーエンドとは言えないと考える根拠の一つはそういったことです。
 つまり根拠はもう一つあるのですが、それについては長くなってしまったので別の機会に…。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする