この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

読み続けてきてよかったと思った『クジラアタマの王様』。

2019-07-25 22:22:23 | 読書
 伊坂幸太郎著、『クジラアタマの王様』読了。


 小説界は異世界物が花盛りですね。
 スライムに転生したり、竜に転生したり、剣に転生したり、ありとあらゆるものに転生しまくっているようですが、あまりにも転生しまくりで逆に手を出す気には全くなれません。

 とはいえ、伊坂幸太郎の異世界ものとなるとさすがに話は違います。
 興味津々読ませてもらいました。
 いやいや、面白かったですねぇ。
 さすがは伊坂幸太郎だと思いました。
 というか、直近の作品の中では本作が一番好きかもしれません。

 ただ、純粋に異世界物として評価すると本作は失敗作かもしれません。
 どういうことかというと作中の「あちらの世界」が一つの世界として存在しているようには思えなかったからです。
 ハシビロコウの指示に従って怪物を倒したら、それでどうなるのか?
 倒したら、それで金貨でももらえるのか?
 逆に倒さなかったらどうなったのか?
 町が滅びるのか、世界が滅びるのか、それとも?
 そういったことが作中一切示されないので、あちらの世界がリアルになりようがないのです。

 まぁそれが作品の狙いだからと言われれば納得はするんですけどね。
 実際「こちらの世界」でのお話は無類に面白いので。
 主人公岸の会社に小沢が突然やってくるところは気に入って、何度も読み返しました。
 新社長の正体が明かされたときはニヤリとしてしまいましたよ。
 それは十分予測の範囲内だったのですが、だからこそ読み通りで嬉しかったというか。

 それにしても伊坂幸太郎は前作『シーソーモンスター』からわずか三ヶ月で新刊を上梓ですか?
 前々作の『フーガはユーガ』も刊行は去年の11月でしたから、驚異的な刊行ペースだと言えます。
 作品のクオリティ自体は特に下がっているとは思わないので、単純に一読者としては嬉しい限りではあるのですが、これはいったいどうしたことなのかと思わないではないです。
 もしかしたらあちらの世界で三ヶ月ごとに新作を上梓しないと世界が滅びるとでも言われたのかもしれませんね。笑。

 次回作も楽しみです。
コメント
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