この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

一将棋ファンとして一言言いたい『AWAKE』。

2021-01-03 10:08:21 | 新作映画
 吉沢亮主演、山田篤宏監督、『AWAKE』、1/1、Tジョイ博多にて鑑賞。2021年1本目。

 2020年に不思議だったことの一つに去年の6月に新しくオープンした映画館、キノシネマ天神に一度も映画を観に行かなかったことがあります。
 自分はいつもの年であれば60本前後劇場に映画を観に行くぐらいの映画好きなので、新しく出来た映画館には一日も早く映画を観に行きたいという思いはあるのですが、なぜかタイミングが合わないんですよね。
 『AWAKE」も最初はキノシネマ天神に観に行くつもりでした。
 しかし1月1日の上映スケジュールが発表されたら、それまで一日二回上映だったのが一回になっているじゃないですか。
 それも思いっきり上映時間が中洲大洋劇場の『新感染半島 ファイナル・ステージ」と重なっているので、仕方なくTジョイ博多で観賞することにしました。
 果たしてキノシネマ天神で映画を観る日は来るんでしょうか…。

 というようなどうでもいいことはさておき、Tジョイ博多で観た『AWAKE」の感想です。

 映画『AWAKE」は2015年に行われた将棋電王戦FINAL第5局、阿久津主税八段 VS AWAKE戦で、阿久津八段がAWAKEに対していわゆる「ハメ手」で勝利したことから着想を得て作られた作品です。
 あくまで着想を得ているだけなので事実通りというわけではありません。
 ただ、事実でない部分が一将棋ファンから見ると、何だか不自然な部分があって、ちょっと納得行きませんでした。

 映画の中で吉沢亮が演じた清田栄一は実際に「AWAKE」を開発したプログラマーである巨瀬亮一氏を投影したキャラクターなのでそれほど違和感はありません。
 それに対して映画の中でAWAKEと対局する浅川五段は阿久津八段とは似ても似つかぬキャラなので、その差異が作品に少なからずゆがみを生じさせているような気がします。
 実際の巨勢氏と阿久津八段に何らかの因縁があった、という話は聞きません(確認が取れてないだけで因縁があったのかもしれません)。
 ですから阿久津氏がAWAKEとの対局においてハメ手を用いることを選択したとしても、その選択の是非はさておき、何らかの事情があったのだろうな、と想像するだけです。
 一方、清田と浅川五段は奨励会時代浅からぬ因縁があった、という設定です。
 さらに映画の中では浅川五段がAWAKEとの対局までの苦悩する日々が描かれています。
 そういった、本来であれば想像するしかなかった部分がかなり具体的に描かれているので、浅川五段がハメ手を用いることを選択したことにすごく違和感を覚えます。
 ソフトの開発者が奨励会時代に因縁がある相手だと知った上でハメ手を用いるだろうか、と疑問に思ってしまうのです。

 物語は最後に、空港と思しき場所で浅川五段と甥っ子が将棋を指し、その後ろで二人の対局する姿を何のわだかまりもない様子で眺める清田を映し幕を閉じます。
 しかし、、、実際の巨勢氏はハメ手を用いた阿久津八段をそんなに簡単には許してはいないんじゃないかと思ってしまうんですよね。

 断っておきますが、すべては自分の想像です。
 もしかしたら今では巨勢氏と阿久津八段は懇意の仲なのかもしれません。
 また、自分と同じような将棋ファンの方がこの映画を観ても違和感を覚えないかもしれません。
 そしてそれが間違っているというつもりはありません。
 あくまで自分は違和感を覚えた、というだけなので…。

 細かいことにケチをつけてしまったかもしれませんが、『AWAKE』は挫折と再生の物語として良く出来ていると思います。
 山田篤宏監督はこれが初めての商業長編映画だそうです。
 実力のある新人監督が出てきたな、と次回作を期待します。

 お気に入り度★★★☆、お薦め度★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。

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