『月の女王』8冊目のノートから、要約と抜粋2。
第4章 覚醒
7月21日早朝6時過ぎ。
香・イズミ・クリス・白龍の4人が、町はずれの工場跡地に向かって歩いていた。
ぶーぶー文句を言うクリスとケンカをする香。
ことの発端は、昨晩遅くにかかってきた一本の電話。同級生の<松村明美>が「助けてほしい」と言ってきた。
明美が昨晩、他校の生徒にクリス達を連れてこいと言われたというのだ。
妙子・クリス・白龍にのされた奴等が、いわゆる『お礼参り』を企てているらしい。
妙子にはもう連絡済みだという。妙子は自分の友人達を連れて行くから、香達には絶対に知らせるな、と言っていたが、連れていかなかったら、自分も何をされるかわからないので、やっぱり香達にもきてほしい、という。
そう言われて、嫌といえるはずもない香。
イズミに事情を話し、クリスの家に電話をして、翌朝早く家を出てきたというわけだった。連中曰く、日中や夜だと目立つので、早朝が一番目立たなくて良いらしい。
↓↓↓
「あ、おはよう、松村さん」
「きてくれてありがとう、斉藤さん」
松村明美が照れたように笑う。
(そういえば・・・・・・)
ふと、香は一つのことに気がついた。
(私、連絡網以外で、電話でクラスの人と話すのなんて、夕子と妙子さん以外で初めてだったんだ)
そう思うとなぜか恥ずかしくなってきた。
(しかも、松村さんと話すのなんてあれが初めてなのに、『早く寝てね。おやすみ』まで言われてる。うわー・・・)
一人で赤くなっていると、いきなり後ろから甲高い叫び声があがった。
「ちょっとー!なんで香ちゃんがいるのよー?!危ないじゃないーっ」
「あ、妙子さん」
「んもーっだぁれ?!あたしの香ちゃんに知らせた人は?!言わないでっていったじゃないのっ」
「まぁまぁ妙子さん、あの場には私もいたんだから・・・ね?」
「もーっ香ちゃんってば優しいんだから・・・・・・ま、そこが好きなんだけど。じゃ、あんたたち」
ぱっとふりかえるとクリス、白龍、イズミを指し、
「香ちゃんのこと守ってあげてよっ」
「・・・・・・お前にいわれたくねーよ」
ぼそっとふてくされたようにクリスは言ったが、妙子はあえてそれを無視して、
「じゃ、よろしくね。・・・あ、きたきたきた」
と、妙子が言うが早いか、五人の高校生らしき男子がこちらにやってきた。
「香ちゃん、紹介するね。私の友達。右から順に、鈴木君、佐藤君、田中君、高橋君、渡辺君」
「・・・・・・それ本名?」
「本名よっ当たり前でしょっ。中学のときの友達なの」
妙子がニッコリと笑う。鈴木君たちが香に頭を下げているのを見ながら、クリスは白龍に耳打ちした。
「よくいうよな、友達だってよ。ありゃ、噂に名高い織田さんのとこの・・・・・・」
「菅原司直属の先鋭隊だな。僕も初めてみた」
「あんなもん動かせるってことは、妙子ってかなり司に信用されてるってことだよな」
「ああ。それにしてもどういうつもりだ?先鋭隊まで引っ張りだしてきて・・・」
「ちょっとあんたたちっ。男二人でなにコソコソやってんの」
二人の間にぐいぐい入り込んだかと思うと、妙子はふと表情をあらためた。
「香ちゃんにあたしのこと言ってないの?」
「『あたしのこと』ってなんだよ?」
「今さらとぼけないでよね。知ってるんでしょ?」
「なにを?」
「・・・・・・まあいいわ。いわないでいてくれたことには感謝するわ。なるべくならこれからも内緒にしておいてほしいんだけど・・・お願いできる?」
「・・・・・・さあな」
クリスはふいと視線を外した。その先では香とイズミと松村明美がなにやら楽しそうに話している。
「目的は何ですか?」
「目的?今日のこと?」
「ええ。先鋭隊まで連れてくるなんて・・・・・・」
「今日の目的はただ一つ。月の姫を傷つける可能性のある者を排除すること。それだけよ。あんた達に手を出したり、ましてや月の姫をこの機会に連れて行くなんてことは考えてないわよ」
「・・・・・・」
信用できない、といった表情でクリスと白龍に見られ、妙子はちょっと首をすくめた。
「本当よ。だいたい、先鋭隊の五人ごときがあんたたちにかなうわけないじゃない」
「それはそれは・・・ずいぶん高く評価されたもんだな」
「あら、だって・・・」
と、妙子がいいかえそうとした、その時、
「きたっ」
緊迫した声が上がった。
工場の裏門のほうから男女二十名ほどが歩いてきた。歩いているのだが・・・・・・。
「なんか・・・・・・様子がおかしくないか?」
「自分の意思で歩いているわけではないようですね」
「どういうこと・・・?」
「つまり・・・」
「ね、なんか変じゃない?」
ぐいっとクリスのシャツのすそをひっぱり、香が顔を出した。明美も異変に気がつき動揺しているようである。
「香、オレ達のそば、離れるなよ。・・・ワナかもしれない」
「ワナ?ワナって・・・スタンくんたちの?」
「いや、違うと思う」
いやにきっぱりとクリスがいいきったのと同時に、
「きたよっ」
わっと叫び声が上がった。前触れもなく、彼らは凶器となるべく棒やナイフをもってこちらに走ってきたのだ。明美が固まって震えるのを見て、妙子が中に割って入り、
「あんたはそこの物入れの中に入って扉を開かないようにして!何があっても出てきちゃだめだよ!」
いいながらも、相手のナイフを蹴り落としている。明美があわてて物入れの中に入る。
「鈴木君佐藤君田中君高橋君渡辺君っ片っぱしからやっちゃってっ殺さない程度にねっ」
こちらの方が人数は少ないが、妙子と鈴木君達の強さは抜群で、断然こちらが優勢に見える。
妙子が悠々とふいうちを狙ったらしい男子生徒をけりあげた。それに対し、香はほうっと感心したように、
「すっごーい。妙子さんってば体柔らかーい。あんなに足あがるなんて」
「お前な・・・そんなこと悠長に言ってる場合か?」
「え?だってこっちの方が勝ってるじゃない?」
「いや・・・このままだと負ける」
横でこの様子を黙って観察していたイズミが無表情に言い放った。
「え?なんで?」
「よく見てみろ、香。あいつら痛みも疲れも感じていない。それに対してこっちはかなり疲労している。本庄妙子ですら・・・」
「な・・・どうして・・・」
「何者かに操られているようですよ。ですから彼らは催眠状態であって自分が何をしているのかすら分かっていない」
「逃げたほうがよさそうだな」
「に、逃げるって・・・そんな、妙子さんを置いて・・・」
言いかけたが、はっと口をつぐんだ。
「こっちに・・・きてる・・・」
「あいつらの狙いはお前だな、香」
クリスは香を背にかくし、妙子に向かって叫んだ。
「妙子っ。奴等を食い止めろっ。オレ達で震源地を突き止めるっ」
「早くしてよっそうそう長くもたないからねっ」
叫び返す妙子はなぜか楽しそうだ。しかし確かに動きは鈍ってきている。
「白龍、わかるか?」
「工場の屋上に一人。しかし、あれは・・・」
言いかけたところに、鉄の棒を持った男がこちらに突進してきた。白龍が手をかざし風をおこす。
「白龍、ここで足止めしててくれるか?」
「・・・わかった。気をつけてくれ」
「うん。お前も。・・・じゃ、いくぞっ香、イズミ」
ぐいっと香の腕をひっぱりクリスはかけだした。
↑↑↑
-----------------
さて。あと一回・・・むむむ。あと二回ってとこか・・・。
せっかくだから残りは全部写そうかな・・・
長いかな・・・^^;
第4章 覚醒
7月21日早朝6時過ぎ。
香・イズミ・クリス・白龍の4人が、町はずれの工場跡地に向かって歩いていた。
ぶーぶー文句を言うクリスとケンカをする香。
ことの発端は、昨晩遅くにかかってきた一本の電話。同級生の<松村明美>が「助けてほしい」と言ってきた。
明美が昨晩、他校の生徒にクリス達を連れてこいと言われたというのだ。
妙子・クリス・白龍にのされた奴等が、いわゆる『お礼参り』を企てているらしい。
妙子にはもう連絡済みだという。妙子は自分の友人達を連れて行くから、香達には絶対に知らせるな、と言っていたが、連れていかなかったら、自分も何をされるかわからないので、やっぱり香達にもきてほしい、という。
そう言われて、嫌といえるはずもない香。
イズミに事情を話し、クリスの家に電話をして、翌朝早く家を出てきたというわけだった。連中曰く、日中や夜だと目立つので、早朝が一番目立たなくて良いらしい。
↓↓↓
「あ、おはよう、松村さん」
「きてくれてありがとう、斉藤さん」
松村明美が照れたように笑う。
(そういえば・・・・・・)
ふと、香は一つのことに気がついた。
(私、連絡網以外で、電話でクラスの人と話すのなんて、夕子と妙子さん以外で初めてだったんだ)
そう思うとなぜか恥ずかしくなってきた。
(しかも、松村さんと話すのなんてあれが初めてなのに、『早く寝てね。おやすみ』まで言われてる。うわー・・・)
一人で赤くなっていると、いきなり後ろから甲高い叫び声があがった。
「ちょっとー!なんで香ちゃんがいるのよー?!危ないじゃないーっ」
「あ、妙子さん」
「んもーっだぁれ?!あたしの香ちゃんに知らせた人は?!言わないでっていったじゃないのっ」
「まぁまぁ妙子さん、あの場には私もいたんだから・・・ね?」
「もーっ香ちゃんってば優しいんだから・・・・・・ま、そこが好きなんだけど。じゃ、あんたたち」
ぱっとふりかえるとクリス、白龍、イズミを指し、
「香ちゃんのこと守ってあげてよっ」
「・・・・・・お前にいわれたくねーよ」
ぼそっとふてくされたようにクリスは言ったが、妙子はあえてそれを無視して、
「じゃ、よろしくね。・・・あ、きたきたきた」
と、妙子が言うが早いか、五人の高校生らしき男子がこちらにやってきた。
「香ちゃん、紹介するね。私の友達。右から順に、鈴木君、佐藤君、田中君、高橋君、渡辺君」
「・・・・・・それ本名?」
「本名よっ当たり前でしょっ。中学のときの友達なの」
妙子がニッコリと笑う。鈴木君たちが香に頭を下げているのを見ながら、クリスは白龍に耳打ちした。
「よくいうよな、友達だってよ。ありゃ、噂に名高い織田さんのとこの・・・・・・」
「菅原司直属の先鋭隊だな。僕も初めてみた」
「あんなもん動かせるってことは、妙子ってかなり司に信用されてるってことだよな」
「ああ。それにしてもどういうつもりだ?先鋭隊まで引っ張りだしてきて・・・」
「ちょっとあんたたちっ。男二人でなにコソコソやってんの」
二人の間にぐいぐい入り込んだかと思うと、妙子はふと表情をあらためた。
「香ちゃんにあたしのこと言ってないの?」
「『あたしのこと』ってなんだよ?」
「今さらとぼけないでよね。知ってるんでしょ?」
「なにを?」
「・・・・・・まあいいわ。いわないでいてくれたことには感謝するわ。なるべくならこれからも内緒にしておいてほしいんだけど・・・お願いできる?」
「・・・・・・さあな」
クリスはふいと視線を外した。その先では香とイズミと松村明美がなにやら楽しそうに話している。
「目的は何ですか?」
「目的?今日のこと?」
「ええ。先鋭隊まで連れてくるなんて・・・・・・」
「今日の目的はただ一つ。月の姫を傷つける可能性のある者を排除すること。それだけよ。あんた達に手を出したり、ましてや月の姫をこの機会に連れて行くなんてことは考えてないわよ」
「・・・・・・」
信用できない、といった表情でクリスと白龍に見られ、妙子はちょっと首をすくめた。
「本当よ。だいたい、先鋭隊の五人ごときがあんたたちにかなうわけないじゃない」
「それはそれは・・・ずいぶん高く評価されたもんだな」
「あら、だって・・・」
と、妙子がいいかえそうとした、その時、
「きたっ」
緊迫した声が上がった。
工場の裏門のほうから男女二十名ほどが歩いてきた。歩いているのだが・・・・・・。
「なんか・・・・・・様子がおかしくないか?」
「自分の意思で歩いているわけではないようですね」
「どういうこと・・・?」
「つまり・・・」
「ね、なんか変じゃない?」
ぐいっとクリスのシャツのすそをひっぱり、香が顔を出した。明美も異変に気がつき動揺しているようである。
「香、オレ達のそば、離れるなよ。・・・ワナかもしれない」
「ワナ?ワナって・・・スタンくんたちの?」
「いや、違うと思う」
いやにきっぱりとクリスがいいきったのと同時に、
「きたよっ」
わっと叫び声が上がった。前触れもなく、彼らは凶器となるべく棒やナイフをもってこちらに走ってきたのだ。明美が固まって震えるのを見て、妙子が中に割って入り、
「あんたはそこの物入れの中に入って扉を開かないようにして!何があっても出てきちゃだめだよ!」
いいながらも、相手のナイフを蹴り落としている。明美があわてて物入れの中に入る。
「鈴木君佐藤君田中君高橋君渡辺君っ片っぱしからやっちゃってっ殺さない程度にねっ」
こちらの方が人数は少ないが、妙子と鈴木君達の強さは抜群で、断然こちらが優勢に見える。
妙子が悠々とふいうちを狙ったらしい男子生徒をけりあげた。それに対し、香はほうっと感心したように、
「すっごーい。妙子さんってば体柔らかーい。あんなに足あがるなんて」
「お前な・・・そんなこと悠長に言ってる場合か?」
「え?だってこっちの方が勝ってるじゃない?」
「いや・・・このままだと負ける」
横でこの様子を黙って観察していたイズミが無表情に言い放った。
「え?なんで?」
「よく見てみろ、香。あいつら痛みも疲れも感じていない。それに対してこっちはかなり疲労している。本庄妙子ですら・・・」
「な・・・どうして・・・」
「何者かに操られているようですよ。ですから彼らは催眠状態であって自分が何をしているのかすら分かっていない」
「逃げたほうがよさそうだな」
「に、逃げるって・・・そんな、妙子さんを置いて・・・」
言いかけたが、はっと口をつぐんだ。
「こっちに・・・きてる・・・」
「あいつらの狙いはお前だな、香」
クリスは香を背にかくし、妙子に向かって叫んだ。
「妙子っ。奴等を食い止めろっ。オレ達で震源地を突き止めるっ」
「早くしてよっそうそう長くもたないからねっ」
叫び返す妙子はなぜか楽しそうだ。しかし確かに動きは鈍ってきている。
「白龍、わかるか?」
「工場の屋上に一人。しかし、あれは・・・」
言いかけたところに、鉄の棒を持った男がこちらに突進してきた。白龍が手をかざし風をおこす。
「白龍、ここで足止めしててくれるか?」
「・・・わかった。気をつけてくれ」
「うん。お前も。・・・じゃ、いくぞっ香、イズミ」
ぐいっと香の腕をひっぱりクリスはかけだした。
↑↑↑
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さて。あと一回・・・むむむ。あと二回ってとこか・・・。
せっかくだから残りは全部写そうかな・・・
長いかな・・・^^;