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月の女王-20

2014年08月23日 21時00分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)

「・・・・・・・・・」
 ぼんやりと目を覚まし、周りを見渡して、そこがクリスのうちのリビングだと気がついた。
「・・・・・・大丈夫か?」
 心配そうな青い瞳にのぞきこまれ、小さく肯く。
「私・・・・・・」
「気を失ってたんだよ。・・・・・・なんか飲むか?」
「うん・・・・・・」
 ゆっくりと起き上がり、かけられていたタオルケットを折りたたむ。
「イズミくんと白龍君は?」
「見張りと結界張り」
「そう・・・。ありがとう」
 紅茶のカップをうけとり、一口飲み、ほっと溜息をついた。
「おいしい・・・」
「インスタントだけどな」
 すっと横にクリスが座る。いつもはお喋りなクリスも何もいわない。
 しばらく無言のままでいたが、ポツリ、と香がいった。
「ごめんね」
「何が?」
「迷惑かけて」
「いや?」
 クリスは肩をすくめた。
「高村が車で迎えにきてたからすぐに車に乗ったし。それに駐車場からここまで、せっかくオレがお姫様抱っこで運んでやろーと思ったのに、イズミの奴が、それやったら絶対にお前が怒るから自分が運ぶってきかなくてさ。結局イズミのお姫様抱っこでここまできたんだぜ、お前」
「イズミくんが・・・・・・」
 そのやり取りを想像しているうちに、香は屋上でのイズミの様子を思い出した。
「そういえば・・・イズミくんと知り合いだったの?親戚ってことになるのよね?考えてみたら、昨日のカトリシアさんもイズミくんに何か話しかけてたよね?英語だったから何言ってるのかわからなかったんだけど」
「ああ・・・・・・」
 クリスは決まり悪そうに頭をかいた。
「イズミの父親は叔父の系列会社の社長でさ、ガキのころ、イズミは歳の離れた姉さんと一緒に、オレのうちによくきてたんだよ。その関係でジーンの兄貴とイズミの姉さんが知り合って結婚したってわけ」
「だったらそういえば良かったのに・・・・・・」
「まあ、色々あるんだよ。ただの親戚ってわけじゃないからさ・・・・・・」
 クリスが言い淀む。「クリストファー様」とイズミが「様」付けをしたのも、そこらへんからくるのだろうか、と香は考えたが、追求するのはやめておいた。
「みんな色々あるんだね・・・・・・」
 クッションを抱えこみ、香はひとり言のようにつぶやいた。
「あのね・・・・・・ここだけの話、していい?」
「ここだけの話?」
 聞き返したクリスにコクリと肯くと、香は小さく続けた。
「私ね・・・小さい頃、人の心の声が聞こえちゃったの」
「心の声・・・・・・・・・?」
「私はそれが普通のことだと思ってたんだけど、違ったんだよね。幼稚園に入る前にお母さんから『口から出てくる言葉だけを聞くように』って言われて・・・。でもそれが結構難しくてね・・・」
「・・・・・・・・・」
「みんなから『変な子』って言われて避けられて・・・。でも小学校に入るころには、だいぶ本当の声と心の声の聞き分けができるようになってたから、はじめは普通に過ごせてたんだけど・・・・・・」
 香はクッションに顔をうずめ、震える声で続けた。
「ヒトミちゃんがみんなに・・・・・・」
「香・・・・・・」
 そっとクリスが香の頭に手をおいた。
「無理に話すことないぞ」
「うん・・・・・・」
 ゆっくりと身を起し、ふうっと大きく息をはく。
「小学校二年生の夏に、急に心の声が聞こえなくなって楽になったんだけどね。でも、小学校は行くのがつらかったなあ・・・。だからいっぱい勉強して、中学受験して、今の高校の付属中学に入学したの。同じ小学校の人一人もいなかったし、学校の近くに引っ越したから、小学校時代の人に会うことも今までなかったからさ。今日はちょっとビックリしたっていうか・・・・・」
 しばらくの沈黙のあと、ふと、思い出したように、香がクリスを見上げて言った。
「いつから超能力使えた?イズミくんは十年前って言ってたけど」
「ああ、オレは生まれつき」
 クリスがピッとクッキーを指差すと、一枚フワフワとこちらに飛んできた。
「昔はこういういわゆるサイコキネシスってやつしかできなかったんだけど」
「しかって・・・・・・」
 香の目が点になる。
「じゅうぶんすごいんだけど」
「別にすごくねえよ。こんなの手で取ったほうが早いし」
 クリスは空中に浮いたクッキーを手で取って口に入れた。
「オレのうち、能力者が生まれる家系なんだよ。オレの弟もサイコキネシス使えるし、ジーンは催眠誘導が得意だし」
「へええ・・・・・・」
 もう一枚フワフワと飛んできたのを今度は香が取る。香が、ふふっと笑ったのを見て、内心ほっとして、話を続ける。
「で、十年前から、オーラが使えるようになったんだ」
「おばあさんの夢、見た?」
「・・・・・・・・・イズミから聞いたのか?」
「うん」
 イズミはどこまで話したのだろう?と思ったが、おそらく詳しくは話していないとみた。
 クリスはふっと優しい笑みを浮かべた。
「見たよ。十年前から今まで、何度も見た」
「何度も?おばあさん何度も出てきたの?」
「いや、おばあさんが出てきたのは何回かだけ。あとは・・・・・・」
 海辺の少女。
 長い黒髪をなびかせて・・・
 さみしそうな黒い瞳に涙を浮かべて・・・
「あとは?」
「あとは・・・・・・、お、帰ってきた」
 クリスが詰まったところで、タイミング良く、イズミと白龍が戻ってきた。
「香、もう大丈夫なのか?」
「うん。ありがとう」
 心配そうなイズミに香が肯く。
「アーサーがきたから見張り代わってもらったよ」
「そっか。お前らも紅茶飲む?」
「ああ、私がやるから大丈夫」
 クリスとイズミのやり取りを冷静に見ていると、二人の間に流れる変な緊張感が伝わってくる。言葉は横柄でありながら、イズミはクリスに対して一歩下がった対応をしている。そこがちぐはぐでなんだか気持ち悪い。
 その微妙な空気を打ち消すように、香が白龍に明るく話しかけた。
「今、夢の話を聞いてたの。十年前の夢、白龍君は見た?」
「見ましたよ。もちろん。それから能力が開花しましたから」
 白龍がすっと手のひらを上に向ける。それを見て、クリスが「おっ」と目を輝かせた。
「それさ、どこまで凝縮できるかとかやらなかった?」
「やったやった」
 クリスの言葉に、白龍が苦笑した。
「今の限界はこのくらいかな」
「おっすげっ。オレそこまで小さくできないっちくしょーっやってやるーっ」
「小さくするだけじゃなくて、凝縮、だからな」
「わあってるってっ」
 二人の様子を見て、紅茶を運んできたイズミがやれやれと肩をすくめる。
「こういうところ、男子だな~と思うな。負けず嫌いというかなんというか」
「・・・・・・・・・」
「香?」
 眉を寄せている香の目の前をイズミが手を振る。
「どうかした?」
「イズミくん・・・・・・」
 香は眉を寄せたまま、つぶやいた。
「二人は・・・何をしているの・・・?」
「え?」
 香の言葉にクリスと白龍も振り返る。
「香・・・・・・」
「まさか・・・・・・」
 クリスが手のひらを上に向けたまま、香の目の前につき出す。
「これが・・・・・・見えないのか?」
「・・・・・・手?」
 きょとんと香が言う。クリス・白龍・イズミは一斉に青ざめた。
「封印が・・・・・・」
「かかってしまったのか・・・・・・」


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あの~~
要約っていいながら、全然要約しないで、普通に書いちゃったよ^^;
これじゃいつまでたっても終わらないじゃん!!

でも書きたかったんだもん~~~っ。
楽しいんだもん~~っ。

今まではノートに書いてあったから、それみてまとめようってできたんだけど・・・・・・。

いやいや、要約要約・・・次は要約で・・・

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次回更新はまた来週の土曜日夜9時です。
よろしくお願いいたします。



コメント
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