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(BL小説)風のゆくえには~R18・初体験にはまだ早い

2015年09月04日 18時12分33秒 | BL小説・風のゆくえには~ R18・読切


*長編『将来』4-24-3の慶視点になります。

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 高校2年生のクリスマスイブ前日。
 一年以上に及ぶ片想いが実を結び、晴れて浩介と恋人(!)になったおれ。

 それから2ヶ月以上経つけれど、今までとそんなに変わっていない気がする……。

 大きく変わったことといえば、時々キスをするようになったこと。でもそのキスも、触れるだけの軽いキスばかり。唇よりも頬とか額とか頭のてっぺんとかの割合が高い。外国だったら普通に挨拶でするくらいのノリの、軽いキス。人目を忍んでコソッと。その度にきゅんとなる。

 それ以外は今までと同じように、一緒に登下校できるときはして、校内ではいつも一緒に行動して、休日は遊びに行って……今までと変わらない。

 でも、健全な高校生カップルなんてそんなもんか? とも思う。
 まわりをみていても、手を繋いで帰ったりするカップルはいるけれど(ちょっと羨ましい)、それ以上のことをしているとはとても思えない。
 今のままで充分すぎるほど幸せだし、だからまあ、これでいいのかな……と思っていたんだけど……


「聞いたか? 東野のやつ、こないだのバレンタインで彼女と……」
「マジで?! あれだろ? S女子大付属の……」

 クラスの男子14人でカラオケに来ているのだが、突然、暴露大会がはじまった。話題になっている東野自身はデートだそうで来ていない。

「バレンタインで、あたしをプレゼント! みたいな?」
「そうそう。今日、うち誰もいないから……、って誘われたらしいぞ」
「誘われてえー誰か誘ってくれー」

 お調子者の溝部がマイクを使って叫び、みんなでゲラゲラ笑っている中……

「ふーん……」
 おれの隣に座っている浩介がボソッと独り言のようにつぶやいた。

「いいな」
「………………え?」

 え? 今、「いいな」って言った?

「浩…………」
 浩介を見上げ、聞こうとしたところ、

「渋谷ー! お前はどうなんだ! どうせバレンタイン山のようにもらったんだろー!」
 溝部がマイクで話しかけてきた。

「うるせー。もらってねえよ」
「三年の先輩からも、他の学校の子からももらってたじゃねーかー!」
「…………」

 何で知ってるんだ。でも、最後までちゃんと見てろっての。

「あれは受け取ってねえよ。全部返した」
「はああ?!」

 正直に答えると、浩介をのぞく12人に一斉につめよられた。

「なんなんだよお前はっ」
「なんだその余裕はー?!」

 ゆさゆさと揺すぶられる。その横で「はいはいはい」と浩介がみんなの手を剥がしてまわる。

「僻まない僻まない。慶はそんなのもらう必要ないの」
「うるせー桜井。お前だって、バスケ部の女子からもらってただろっ」
「あれは義理だよー」

 へらへらと笑う浩介。そうだ、こいつバスケ部の女子からもらってたな……。

「義理でもいい! チョコならなんでもいい!!」
「彼女ほしー」
「やりてー」

 マイクを次々回して叫んでいく野郎ども。
 楽しそうに笑っている浩介。

 結局その後も「いいな」について追及することはできなかった。
 いいなって……いいなってことだよな……。


***


 翌朝、起きる寸前に夢をみた。
 浩介の腕の中にいるおれ。お互い何も着ていない。浩介の肌に直接触れているという感覚が気持ちいい。

「慶……大好き」
 耳元でささやかれる。大きくなったおれのものを浩介が優しく掴んでくれる。

 ああ……そんなことされたら、おれ………っ。


「!!!!!!」
 声にならない叫び声をあげて、飛び起きた。懐かしい感覚……

「…………マジか」
 夢精してしまった……。中学生かっつの。

 それもこれも、昨日浩介が「いいな」なんて変なことを言うからだ!!



 と、いうことで。

「今度の日曜、おれんち誰もいないから遊びに来い」

と、誘ってみた。カラオケにいった翌週の日曜日、ちょうど親は法事で夜まで帰ってこないし、妹の南は朝から友達のうちに遊びにいくと言っていたのだ。このタイミングでこんなチャンスが回ってこようとは、神様がおれ達に次のステップに進めと言っているのに違いない。

「う、うん………」
 肯きながらも真っ赤になった浩介。昨日の今日のこの誘いだ。言わなくても意味は分かるだろう。

 そういうわけで、この日曜日が来るまでの一週間はお互い妙に意識してしまって、「喧嘩でもしてるの?」と南に聞かれるくらいギクシャクしてしまった。

 そして、日曜の話題は故意に避け、なんとか迎えた運命の日曜日。


「お邪魔します……」
 緊張した様子でうちにきた浩介。家の中が妙にシーンとしている……。

 おれの部屋に通したはいいけれど、会話の糸口がつかめず、さらにシーン……としてしまう……。

「あの」
「慶」

 同時に口を開いてしまい、あわてて閉じる。

「なんだよ?」
「慶こそ」
「…………」
「…………」

 再びシーン………となる。

 顔を見合わせ、ぷっと吹き出してしまった。

「あーダメだなー」
「なんかおれ、緊張して手に汗かいてきたよ」
「マジか」

 思わず、何も考えず、その手を握ってしまい、

「!」

 再び飛び離れたおれ達……。

 だめだこりゃ。

「………困ったなあ」
「困るなよ」
「困るよ」
「…………」

 再び訪れる沈黙………

「お前さ……」
「うん」

 とりあえず、ローテーブルを挟んで斜め横、の位置から、真隣に移動させる。ベッドを背もたれにして二人で並んで座る。
 浩介が、そっと手を差し出してきた。絡めて繋ぐ。ホントだ。浩介、汗かいてる。……っておれもか。

「お前……男同士ってどうやるか……知ってる?」
「………あ、うん。一応……。それで……」

 浩介が繋いでいない方の手でカバンの中を探り、紙袋に入った何かを出してきた。

「何?」
「あの……普通にすると痛いでしょ? それで滑りをよくする、みたいな……薬?」
「…………」

 南だな、と思う。どうせ南が、例の変な本を一緒に作ってる友達と用意して、浩介に渡したに違いない。南と浩介って結構仲が良い……というか、南が浩介を利用しているというかなんというか……。
 まあ、いい。この際そんなことは後回しだ。

「じゃあ……やってみるか」
「うん……」

 そういいつつも、また止まってしまったおれ達。何を、どうすればいいんだ?

「とりあえず……服脱ぐか?」
「あ、うん」

 今までも海に一緒にいったり、写真部の合宿で一緒に銭湯に入ったりして、お互いの裸は見たことあるのに、自分の部屋という日常空間のせいか、これからはじまる初めてのことのせいか、上半身を晒すことですら恥ずかしくて仕方がない。……あ、そうか。

「明るいのもいけないんだな。カーテン閉めるな」

 シャツのボタンを半分開けたところで気が付いた。真昼間からカーテン閉めるのもいかがなものかとも思うけれど、部屋を少しでも暗くするためにはしょうがない。ザーッと閉めて、少し薄暗くなったところで、

「!」
「……慶」

 後ろから、ぎゅうっと抱きしめられた。ポツポツ……とシャツのボタンの続きが開けられていく。

「慶……大好き」
「………っ」

 夢と同じささやき。でも夢よりももっと甘くて愛おしい響き。

「こう……っ」
 振り返ると同時に、唇を重ねられた。いつもみたいな軽いキスじゃなくて、重ねて、吸い込まれて……

「んんん」
 キスを続けながらお互いの服を脱がしていく。同時にズボンを下着ごと引き下ろした段階で、

「あ」
「あ」

 顔を見合わせて笑ってしまった。
 ぴょんっと跳ね上がってるお互いのもの。こんにちは、とでもいいたげにそそりたっている。

「もう、この状態?」
「しょうがねえなあ……って、浩……っ」

 優しく掴まれて、震えてしまう。これも夢と一緒だ。
 でも、夢と違うのは、まだ終わらないってこと……

「浩介……」
「んっ」

 浩介のものを握ると、浩介がビクビクっと震えた。熱い……こんなに熱いんだ。

「慶……」
「ん……」

 立ったまま、お互いのものを扱き続ける。
 ああ……気持ちいい……。人にされるのってこんなに気持ちいいのか。いや……浩介だから気持ちいいんだな。
 浩介のものがおれの手の中でさらに固くなっていくことも、今までしたことのない、舌を絡めるキスも、さらにまた興奮状態を誘う。

「このままじゃ……いっちまう……」
「ん……」
「どう……する? このまま、いくか……?」
「あ……そうか」

 ふうっと大きくため息をついて、浩介が手をとめた。

「あまりにも気持ち良くて忘れてた」
「あーうん。別にこのままでもいいんだけどな」

 無理に痛そうなことをすることもあるまい。とは思う。でも……

「でも、おれ、慶と一つになってみたい」
「………」

 考えを読まれたかのようなセリフに、目を見開く。浩介の真剣な顔。

「じゃあ……するか」
「うん」

 紙袋から容器を出してみる。んーと?これを塗ればいいんだな?
 ぬるぬるとしたものを手に取り、浩介のものに塗ってみる。

「あ……っちょ……っあんまり触らないでっいっちゃうよっ」
 浩介の腰が引けてる。相当気持ちいいらしい。確かにこのぬるぬるは気持ちよさそうだな……。

「じゃ、入れてみろ」
「え!?おれが先!?」

 ぎょっとした浩介を置いて、ベッドに寝っころがる。そして両手を差し出した。

「ほら、こいよ」
「慶………」

 浩介がごくりと唾を飲んだのが分かった。

「じゃあ………」

 両太股をぐっと押され、足を押し広げさせられる。すべて露になる。かなり恥ずかしい体勢………。

「慶……色っぽい……」
「…………っ」

 見下ろしてくる浩介の目………ドキドキする。

「じゃ………入れるね」
「ん」

 覚悟を決めて、浩介のものを待つ。穴の入り口に温かいものがあてがわれ、びくりとなる。これが中に………………

「!!」

 うっと声を上げそうになるのをあわてておさえる。い………痛いっ。まだ先が少し入っただけなのに……っ。

「……慶」
「…………あ」

 すぐにすっと痛みがなくなった……。浩介が心配そうにこちらを見下ろしている。

「大丈夫?」
「大丈夫……ってなにやめてんだよ」
「だって……」

 しまったな……。正直に痛そうな顔をしてしまった。
 平気な顔を取り繕って、浩介をあごで促す。

「もう一回やれ」
「でも」
「いいから。さっさとしろよ。時間ねえんだから」
「え」

 自分で言ってから、あ、と気がつく。そうだ。なんとなく気もそぞろになっているのは、家族が急に帰ってくるんじゃないかという心配もあるからかもしれない。

「時間ないの?」
「あー、ないっつーか、急に親とかの予定が変更になったりしたらって思ったりして……」
「そっか……」

 浩介は頷くと、ローテーブルに置いておいたジェルに手を伸ばした。

「浩介? …………っ」
 おもむろにジェルを塗られ、ぶるっと震えてしまう。予想以上に気持ちいい……っ。

「時間ないなら、余計に。今度は慶がしてみてよ」
「んー……」

 考えてしまう。
 もしかしたら、これから時間をかけてゆっくりやれば、痛くなくできるかもしれない。でも時間に制限がある中で、そこまでできるだろうか……。そもそも…………

「なんか、そういうの……違うんだよなあ」
「え?」

 起き上がり、浩介の頬にキスをする。

「慶?」
 ビックリした表情の浩介の鼻の頭にもおでこにもキスをする。最後に唇をぺろりと舐める。

「慶」
 浩介がクスクス笑いながら、同じように頬に鼻におでこにキスを返してくれる。そして唇を重ねながらぎゅうっと抱きしめてくれる。素肌の触れ合いがとてつもなく気持ちいい。そのままベッドに横になる。

「うん……こういうのだよな」
「何? 何の話?」

 言いながらも、浩介が耳や首にもキスをしてくれる。

「なんつーか……想像してた初体験?っていうのか? 痛いとか時間がねえとかそういうんじゃなくて、こんな風に……、あ」

 言っているそばから優しく掴まれた。ジェルのぬるぬるが残っているので余計に気持ちがいい。寝そべったまま、おでこをコツンと合わせる。

「こんな風に?」
「ん」

 おれも浩介のものに手を伸ばす。先走りをくるくると伸ばし先に広げると、浩介が小さくうめいた。

「慶……」
 切なげな瞳でおれをまっすぐに見る浩介……。

「慶、大好き」
「ん」
「大好きだよ」
「ん」

 再び唇を合わせる。合わせながらも、手は扱き続ける。
 亀頭をくるっくるっと回しながら扱いてくれる浩介。たぶんいつもこうやってやってるんだろうな、と思うと、なんだか余計にゾクゾクする。
 おれもいつも自分がしていて一番気持ちのいいことを浩介にしてみる。浩介が「んんんっ」と声をあげた。

「慶……いっちゃいそう……」
「ん……おれも……」

 喋る余裕もない。空いているほうの手で、枕に引いていたタオルケットを取って、扱いている下に置く。

「この上、出し……」
「んん」

 舌を絡ませ口づける……一段と固く大きくなる浩介。次の瞬間、

「ん……、あっ」
 声と共に浩介のものが吐き出された。

 浩介のいった瞬間の顔、見れた。……すげえ、かわいい……。

 そんな感動に浸る前に、浩介の手が容赦ない速さで扱いてくる。

「……浩っ」
 速すぎだろ……っ。追い立てられるように快感が体の中で膨れ上がってくる。

「んんんっ」
 そのまま、あっという間に頂点に連れていかれてしまった。タオルの上に乳白色のものが仲良く並んでいる……。

「あー……」
 タオルを上によけて、ぐてっと浩介の肩に額を押しつけると、

「慶……かわいい」
 ぎゅうううっと抱きしめられた。何も着ていない素肌同士の触れ合いが心地いい……。

「んー……これだよな」
 さっきから思っていたことを口にしてみる。

「なんつーか……セックスってのはこんな風にふわふわ気持ちいいもんだと思ってたんだよなあ」
「ふわふわ?」
「うん……。まあ、もしかしたら、ちゃんとやったらもっととんでもなく気持ちいいのかもしんねえけど」
「うん……」

 再びおでこを合わせる。

 ずっと片思いしてた浩介が好きだといってくれる。抱きしめられる。抱きしめる。キスする。キスされる。それで今はもう充分。だから……

「ちょっと……まだ早いのかもしんねえな、とか思ってな」
「うん………」
「でも、いつかは……」
「うん」

 それがいつになるのかは分からないけれど……


「じゃあ……着替えるか」
「あ、待って」
「ん?」

 もう一度、ぎゅううっと抱きしめられる。さわさわと背中や腹のあたりをなでられる。

「浩介?」
「今のうちに堪能させて。覚えておかないと」
「なんで?」
「覚えておいて、今晩からのオカズに」
「……………」

 真面目にいってんだか、冗談でいってんだか分からない……。

「まあ、でも、ずっとやらないってわけじゃ……」
「でももう受験生になるしね。するのは受験が終わってからだね」
「あー……そうだな」

 そうだった。もう受験生になるんだった…。
 浩介が再びおでこをこつんとさせて言う。

「受験終わったら、どこか泊まりで旅行に行こうよ」
「おお、いいな」
「そしたらそこでちゃんと最後までしよ?」
「…………ん」

 そうだな。おれたち、初体験にはまだ早かった。

「それまでは健全な交際を」
「健全ってなんだよ?」
「キスまではOK」
「ん」

 触れるだけのキス。それだけでも充分気持ちいい。

「受験が終わるまでは妄想にとどめておくね」
「妄想って……」
「慶とあんなことやこんなことして……って」
「あんなことやこんなこと?」
「あんなことやこんなこと」

 真面目に言ってるんだか、冗談で言ってるんだか……。真面目にいってる気がする……。

「お前……実はムッツリだな」
「バレちゃった?」

 浩介がクスクス笑いながら、再び唇を合わせてくる。

 いつか、その日がくるまで、ゆっくりゆっくり愛を育てよう。



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長々と書いてしまいました。
最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございます!
初めてだから手探りすぎて、なかなか進まない二人……。

「神様がおれ達に次のステップに進めと言っているのに違いない」

なんて、現在の慶だったら言わなそうなセリフ。
でも、高校生の慶はそういうことよく言ってました。
片想い期間長かったしね……。まだ片想いの時の遠慮みたいなのが残ってますね。

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クリックしてくださった方!!本当にありがとうございます!!
一人ずつお会いして頭下げて回りたい気持ちでいっぱいです。
ありがとうございます!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!


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「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら

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