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BL小説・風のゆくえには~翼を広げて・三年目-3

2017年10月06日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~  翼を広げて


2005年冬


【浩介視点】


 山田ライトが、突然ケニアにやってきた。

「教えてくれれば迎えにいったのに……」
「サプライズの方が感動が大きいでしょー?!」

 うひゃひゃひゃひゃ、とあいかわらずの笑い声が懐かしい。でも、アマラは「その笑い方やめて」と眉をひそめている。

 おれが日本にいた頃に所属していた日本語ボランティア教室での教え子だった山田ライト。

 今、下宿させてもらっている家主のシーナと、ライトの父親がいとこの関係にあるので、ライトとシーナの娘のアマラは「はとこ」ということになる。

 2歳違いの彼らは、幼い頃、一緒に遊んだことがあるらしい。

「その笑い方、昔から変わらないよね」

 アマラは本当に嫌そうに言うと、シーナの手伝いに行ってしまった。今日は職員や近所の人たちを招いてのホームパーティーがあるのだ。

 ライトはわざとらしく肩をすくめると、こちらを振り返った。

「浩介先生、最近どう?」
「うん。まあ……ようやくちょっと落ちついたところだよ」

 こちらでは、新学期が1月からはじまる。進学を希望する子が昨年よりも増えたため、この数か月はその対応にも追われていた。

「でも、新学期準備でまた忙しくなるよ」
「へー。大変だねえ」

 去年も一昨年も忙しかった。一度立ち止まろうと思ったのに、結局こうして日々に流されてしまっている……

「ライトは、大学はどう?」

 聞くと、ライトはヒラヒラと手を振って、嬉しそうに言った。

「たーのしーよー」
「そう。良かった……」

 日本に住んでいた時は、学校に行きたくない、と言って高校進学をしなかったライト。でも、3年半前に父親のいるアメリカに移住してから、高校に進学し、今年の秋からは大学生になったそうだ。

 ライトは、アメリカでの充実した大学生活をひとしきり話してから、ふと思いついたように、日本語に切り換えて、言った。

『そういえば、夏に日本に帰ったとき、慶君に会ったよ』
『………っ』

 慶、の言葉に心臓がグッと掴まれたようになる。

 慶。慶……。もう一年以上会っていない……


『元気だった……?』

 自分の乾いた久し振りの日本語が耳に響く。と、ライトは、うーん……と首を傾げた。

『あいかわらず美人だったけど……、なんか大人しくなってた』
『大人しく?』
『うん。なんていうか……』

 えーと……と悩んでから、ライトはぽんと手を打った。

『老けた』
『ふ、老けた!?』

 慶が老けた!? 想像つかない……っ

『うん。前は学生っぽかったじゃん? それが、なんか社会人ぽくなってた。そうは言っても、30過ぎてるようには見えなかったけど』
『あ…………そうなんだ』

 老けたって、そういう意味か……。あかねからの情報と同じだ。『大人っぽく』なったということだ。

『二人全然連絡取ってないんだって? あんなに仲良かったのに冷たいねえ』
『………………』

 ぐっと詰まってしまう。
 ライトはおれと慶はただの友達だと思っている。そのライトですら、今のおれは『冷たい』と思う対応をしているということだ。

 確かに電話くらいはできるんだけど……でも、電話で声を聞いたら、絶対に会いたくて我慢できなくなる。今はまだ、そんな甘えたことを言ってはいけないと思うのだ。
 それに何より、そうして会いにいったことが、母に知られて、また母が慶に嫌がらせをしたらと思うと、こわくて、こわくて……

 そんなおれの葛藤には気がつかないようで、ライトがニコニコと続ける。

『慶君にね、冬に浩介先生に会いに行くけど伝言ある?って聞いたんだけどね』
『…………うん』

 ドキッとする。伝言……伝言。慶はなんて………

 こちらのドキドキを裏切って、ライトはあっさりといった。

『ない。だって』
『……………』

 ない。

 う………と胸が苦しくなる。
 慶にとって、おれはもう、伝言することもないような、そんな興味のない存在……?

 何かを吹っ切ったかのように、大人になったという慶……

 その吹っ切ったものというのは、やっぱり、おれのこと……?

 頭の中を黒い思いが渦巻いて、立っているのがやっとのところに、ライトの明るい声が流れてくる。

『だからさ、頑張れとか言えばいいじゃんって言ったんだよ』
『…………』
『そしたら慶君、なんて言ったと思う?』

 ライトは、わざとらしく咳をすると、腕を組み、顎をツンとあげた。

 はっとする。それ、慶が何かを宣言するときの仕草……

 ライトは顎を上げたまま、キッパリと言った。

『あいつが頑張ってることはおれが一番良くわかってる。だからこれ以上頑張れなんて言うわけねーだろ』
『!』

 慶……っ

『おれはただ、待ってるだけだ』
『……………』

 慶……

『って、言ってたよ』
『………………』

 慶………慶。崩れ落ちそうだ……

 慶はいつだって真っ直ぐで……、真っ直ぐおれのことを見てくれていて……

 おれは……おれは、あなたのために、何をすればいい?

 どうしたら、迎えにいこうって思えるようになれるんだ……?




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お読みくださりありがとうございました!
って、書こうと思ったうちの3分の1までしか書けていないのですが、
風邪を引いたらしく鼻水ズルズル頭ボーっなため諦めました。
皆様もどうぞお気をつけください……
次回、火曜日に続きをアップできたらいいなあ……と。

こんな真面目な話にクリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当に本当にありがとうこざいます!
有り難いー有り難いーと画面に向かって拝んでおります。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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コメント (5)
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