【浩介視点】
2019年4月20日土曜日
急遽、慶が村上哲成という高校の同級生と会うことになった。昨日の夜、同じく同級生の山崎から連絡が入ったのだ。村上哲成が会いたがっている、と。
慶と村上哲成は、小学校・中学校も同じだったらしい。みんなに「テツ」って呼ばれてた、小柄で眼鏡の男子生徒、という風に記憶している。バスケ部だった村上享吾と仲が良かったから、バスケ部関係で見かけたことは何度もあるけれど、おれは話したことはほどんどない。山崎は高3の時に同じクラスだったらしく、その同窓会で会ったときに、連絡先を交換したらしい。
(急に会いたいって……何かの勧誘だったりしないよね?)
と、思ったけれど、口に出すのは失礼だから飲みこんだ。慶は単純に、懐かしい友達に会えることを楽しみにしている。
「何かあったら連絡して?」
「何かって何だよ」
あはは、と軽く笑って、慶は出て行ってしまった。でもやっぱり心配で、読んでいる本の内容も少しも頭に入ってこなくて、やっぱりおれも着いていけばよかったー……なんて思ってウンウン唸りながら、慶の帰りを待っていたところ……
『悪いけど迎えにきてくんね?』
慶が村上哲成と待ち合わせした時間から2時間後、そんなラインが入って、えええ!と悲鳴を上げてしまった。迎えにきて、だなんて、珍しすぎる!これは何かあったに違いない!!
『すぐ行く!』
速攻で返事をして家を飛び出した。慶!待ってて!すぐ行くよ!!
……なんて、慌てて車で駆け付けたのだけれども。
「おーきたきた」
待ち合わせの駐車場に入ると、慶がこちらに手を振りながらのんびり歩いてきた。その横に、同じくらい小柄な眼鏡の男性……村上哲成だ。
「ほら、浩介、テツ。覚えてるだろ?」
「え……あ、うん。こんばんは」
ニコニコの慶に何とかうなずいて、村上に挨拶すると、村上は嬉しそうにパチンと手を叩いた。
「おー覚えててくれたんだー」
「だから言っただろ。うちの浩介は恐ろしい記憶力なんだって。なんでも覚えてるぞ!なんでも聞いてみろ!」
「ちょっと慶……」
慶、珍しく酔ってるみたいだ。「うちの浩介」なんて言い方、嬉し過ぎる。でも、なんでもは覚えてないから聞かれても困る!と、思っていたら、
「それじゃ、今度までに何聞くか考えておく」
「おー」
「じゃあなー」
あっさり言って、村上哲成は駐車場から出て行ってしまった。なんだ。村上のことも送るつもりだったのに……
「じゃー、おれ達も帰るか!」
「……うん」
上機嫌の慶。なんかよく分からないなあ……とハテナでいっぱいだったのだけれども……帰宅途中の車の中で、上機嫌の理由は判明することになる。それは……
「で、お前みたか?みたよな?」
ニコニコの慶。みたって……
「ええと……何を」
「何って、テツだよテツ!」
「村上?」
ハテナハテナと思って助手席を見ると、慶はなぜか指揮でもしてるみたいに、手をフラフラさせながら、ヘラヘラと言った。
「あいつだけはおれのことを裏切らないって思ってたけど、本当に裏切らないでくれた。あいつはいいやつだ」
「………」
グッと嫉妬でお腹のあたりが押されたようになる。裏切らないって……そんなに信用してるってこと? 小さい頃からの友達って、やっぱり違うのかな……
そんなグツグツを知るはずもない慶は、ヘラヘラと話しを続ける。
「武史はダメだ。あいつはすぐ裏切りやがった。それに比べて、テツは良い奴だよな~~今日会えてよかった!」
「……ふーん」
内心面白くない。面白くなさすぎる。どんな話をしたんだろう。どんな話をしたら信用できるとかそんな話になるんだろう……
「なー? お前もみただろー?」
「だから、みたけど……」
ああ、ダメだなあ。慶はせっかく友達に会えて上機嫌なんだから、おれもそれを喜んであげなくちゃいけないのに、どうしてもそんな気になれない。話題を変えたい……
と、思っていたら。
「なー? おれの方が高かっただろ?」
「…………」
え?
思わず振り返った先の慶は、まだまだ上機嫌に手を振っている。
「おれの方が背、ちょっとだけ高かったよな? な?」
「…………え」
それは……
「テツとは、ガキの頃からどっちが背の順の一番前かでよく揉めててさー」
「…………」
「武史もさー同じくらいだったのに、あいつは途中からデカくなりやがったからさあ」
「…………」
「それに比べて、テツは良い奴だー」
あー良い奴だー良い奴だー、と、慶はさんざんはしゃいだ挙句、気が付いたら、寝息を立てていた……
(慶……)
そんなグツグツを知るはずもない慶は、ヘラヘラと話しを続ける。
「武史はダメだ。あいつはすぐ裏切りやがった。それに比べて、テツは良い奴だよな~~今日会えてよかった!」
「……ふーん」
内心面白くない。面白くなさすぎる。どんな話をしたんだろう。どんな話をしたら信用できるとかそんな話になるんだろう……
「なー? お前もみただろー?」
「だから、みたけど……」
ああ、ダメだなあ。慶はせっかく友達に会えて上機嫌なんだから、おれもそれを喜んであげなくちゃいけないのに、どうしてもそんな気になれない。話題を変えたい……
と、思っていたら。
「なー? おれの方が高かっただろ?」
「…………」
え?
思わず振り返った先の慶は、まだまだ上機嫌に手を振っている。
「おれの方が背、ちょっとだけ高かったよな? な?」
「…………え」
それは……
「テツとは、ガキの頃からどっちが背の順の一番前かでよく揉めててさー」
「…………」
「武史もさー同じくらいだったのに、あいつは途中からデカくなりやがったからさあ」
「…………」
「それに比べて、テツは良い奴だー」
あー良い奴だー良い奴だー、と、慶はさんざんはしゃいだ挙句、気が付いたら、寝息を立てていた……
(慶……)
どっと体の力が抜けそうになり、運転中運転中!と気を取り直す。
(自分の方が背が高いことをおれに見せたかったってことか……)
かわいすぎる。
慶の身長コンプレックスは、まだまだ健在らしい。
(……おれの、慶)
信号の隙に、眠っている額にキスをすると、慶は幸せそうに微笑んでくれた。ああ、幸せ……
(それにしても……)
村上哲成は、なんで突然、慶に会いたがったんだろう?
その疑問の答えは、今から2ヶ月後に判明する。
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(……おれの、慶)
信号の隙に、眠っている額にキスをすると、慶は幸せそうに微笑んでくれた。ああ、幸せ……
(それにしても……)
村上哲成は、なんで突然、慶に会いたがったんだろう?
その疑問の答えは、今から2ヶ月後に判明する。
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お読みくださりありがとうございました!
書く時間がなかったため、さくっと箸休め回にしてみました💦
次回金曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
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