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BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係20-1

2019年07月30日 07時33分06秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係

【享吾視点】

 母の日。5月2週目の日曜日。

 オレがオーナーをしているワインバーで、母の日イベントを行った。発案者は歌子だ。まあ、イベントと言っても、テーブルすべてにカーネーションを飾っていることと、入り口近くにカーネーション一輪の花束をたくさん用意して、お客様に「ご自由にどうぞ」と声かけをしているだけで、あとは変わらない。演奏する曲に少し年代上の曲をまぜたくらいだ。

 8時のステージを終えて控え室に戻って一息ついたところで、歌子が呼びにきた。オレの両親が到着したらしい。

「カーネーション渡してね?」

と、一輪押し付けられて、渋々テーブルに向かう……と、

「…………え」

 その隣のテーブルに、哲成と哲成の18歳年下の妹の梨華ちゃんが座ろうとしているから驚いてしまった。「お久しぶりです」なんて、哲成とオレの両親が話してる。どうやら偶然隣になったようだ。

「あ、こんばんは!」
 オレに気が付いた梨華ちゃんが明るく挨拶してくれた。娘の花梨ちゃんとそっくりだ。……って。

「あれ? 花梨ちゃんは?」
 今朝方、哲成は、急に仕事になったという梨華ちゃんから連絡を受け、花梨ちゃんの世話のために実家に戻ったのだ。それなのに花梨ちゃんがいない……。首を傾げたオレに、梨華ちゃんが元気いっぱいに答えてくれた。

「ジイジとバアバに預けました!」
「すげー無理矢理な」

 苦笑を浮かべている哲成。

「旅行から帰ってきたばっかの親に有無を言わさず……」
「だって、歌子先生の旦那さんの演奏聴きたかったんだもんー」
「別に今日じゃなくても……」
「今聞きたいって思ったら今しないとなのっ」
「あーはいはい」

 梨華はあいかわらずせっかちだなあ、と、哲成は妹が可愛くてしょうがないって瞳をしながら言っている。昔から変わらない。大人になってからはほとんど妹の話をしなくなってしまったけれど、学生のころは、まれに、こういう顔をしながら妹のことを話してくれていたのだ。

「だって、さっちゃんのママが自慢してたんだもんー。あー今から楽しみ!」

 きゃっきゃっと言っている梨華ちゃん。その横で、歌子が「娘さんが私のピアノ教室に通ってくれてて……」と、オレの両親に説明している。


「あ、それ、カーネーション?」
「ああ……うん」

 哲成が、オレの手元のカーネーションに気が付いて言ってきた。

「そういや、入口のとこにいっぱいあったな」
「ああ、うん。母の日のイベントで……」

 今から母に渡そうとしていた、というのがバレるのが何となく気まずくて、

「梨華ちゃん、どうぞ」

 咄嗟に梨華ちゃんに差し出した。

「え」
 キョトンとした梨華ちゃん。

「え、もらっていいの?」
「帰ったら清美さんに渡せばいいじゃん」

 哲成が言うと、梨華ちゃんは目をパチパチとさせて「なんで?」と首をかしげた。なんでって……

「なんでって、母の日だから。何言ってんだ?梨華」
「あー……」

 梨華ちゃんは引き続き首をかしげ続けると……

「じゃ、テックンにあげる」

と、オレが渡したカーネーションを哲成に差し出した。



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お読みくださりありがとうございました!
う……もう7時半過ぎましたね……。予定の半分しか書けてませんが、更新しないのも悔しいのでここまであげます(涙)
次回金曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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