【享吾視点】
「………あーわかったわかった。え?1時間? そりゃ厳しいなあ……」
「………?」
聞こえてきた哲成の声にぼんやりと目を覚ました。カーテン越しに射し込まれている光は朝日と思われる。今、何時だろう……
(っていうか、オレ、あのまま寝たのか……)
哲成が風呂に入っている間に不安感が強くなってしまったため、安定剤を服用したのだ。その影響か、一緒にベッドに横になった直後、唐突な睡魔に襲われ、途中から記憶がまったくない……
(まあ、寝なかったとしても、何もできなかっただろうけど……)
今まで20年近くも、「何もしてはいけない」と自分を律してきたのだ。それが体に染み付いているらしく、体が素直に反応してくれない……
(あの不安感はそれが原因か?)
せっかく、哲成がしてもいいと言っているのに。長年溜まりに溜まった欲望を果たせたはずだったのに……
(…………哲成)
何もせず寝てしまったオレをどう思っただろう……?
起き上がり、声が聞こえる方に目をやると、ちょうど哲成がスマホを手にこちらに戻ってくるところだった。
「おー起きたか」
いつも通りの笑顔。愛しさで胸がいっぱいになる。抱きしめたいのを我慢して、普通に問いかける。
「電話? 何かあったのか?」
「いや、梨華がさ、どうしても仕事に行かなくちゃいけないから、花梨を預かってくれって……」
言いながら、部屋着から外出着に着替えはじめた哲成。思わず、凝視してしまう。
(ああ……その白い肌にたくさん跡をつけて、その細い足を押し開いて……)
今まで妄想はたくさんしてきた。シミュレーションは完璧だった。それなのに……
「でな、今から一時間以内に来いっていうんだよ。だから、行ってくる」
「え」
行ってくる?
アッサリと言われ、我に返る。
「ああ、それじゃ、オレも帰る……」
「いや、いいよ。体キツそうだし、ゆっくりしてってくれ」
ぶんぶんと手をふられた。
体キツそうって何だ?と、首をかしげると、哲成は眉を寄せた。
「昨日の夜から今まで、蹴ってもくすぐっても全然起きないくらい爆睡してたじゃんお前。具合良くないんだろ。大丈夫か?」
「……………」
そうか……そう思われてたのか……
それは良かった、というべきか。
「お前今日、夕方からバーでピアノ弾くんだよな? 行けるのか?」
「ああ……うん。大丈夫。夕方までには治る……」
「そうか」
哲成は、テレビの前のゴチャゴチャと物を置いてあるカゴからキーケースを取りだすと、
「お前今日、夕方からバーでピアノ弾くんだよな? 行けるのか?」
「ああ……うん。大丈夫。夕方までには治る……」
「そうか」
哲成は、テレビの前のゴチャゴチャと物を置いてあるカゴからキーケースを取りだすと、
「んじゃ、オレも行くから、そこで鍵返して」
キーケースから一つ鍵を抜いて渡してくれた。
「スペア作っといて」
「え」
スペア……合鍵。その単語に胸が高鳴る。
哲成はずっと自宅暮らしだったので、こうして鍵を貰うのは初めてだ。
感動したオレに気付いた様子もなく、哲成はアッサリと手を上げた。
「んじゃ。適当にそこらへんのもの食べていいからな」
「あ……うん」
「じゃーな」
玄関に向かいながら、背中に手をつけて、グーパーグーとした哲成。中学の時に決めた『またあとで』のサインだ。
「じゃーな」
玄関に向かいながら、背中に手をつけて、グーパーグーとした哲成。中学の時に決めた『またあとで』のサインだ。
そして、振り返りもせず、出ていってしまった。今までとまったく変わらない……
「哲成……」
閉められたドアに向かって呼んでみる。
「哲成……」
閉められたドアに向かって呼んでみる。
オレたちもう、中学の時とは違うんだよな? もう、親友だけじゃないんだよな……?
でも…………でも。
なんだか途方に暮れてしまった。
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なんだか途方に暮れてしまった。
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お読みくださりありがとうございました!
また遅刻m(_ _)mしかも予定のところまで書けなかった……でも更新しないのは悔しいので上げますっ。
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