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BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係15-1

2019年07月05日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係

【哲成視点】

 3月中旬。歌子さんに言われた。

『そんなつもりないのに期待もたせるようなことするのはやめて?』
『私、これ以上、享吾君が傷つくの、見たくないのよ』
『だから……それができないなら、会わないで?』

 享吾の奥さんである歌子さんには『会わないで』という権利はある。でも、そんなこと、言われたくなかった。ふざけんな、と思った。

 でも……

 帰宅の道中で一人になり、冷静に考えて……ことの重大さに気が付いて血の気が引いてしまった。亨吾の病気はせっかく良くなっていたのに、オレに会ったことでまた復活した、ということだ。それが享吾にとって良い事のわけがない。

 だから、連絡は取るけれど会わない、という距離の取り方をすることにした。会ったらきっと、また触れたりして『期待させて』しまう。だからこのまま会わずにやんわりと離れていけばいいのかな、と思ったのだ。『人生のパートナー』だという歌子さんに享吾のことを任せて、このままオレは離れて……

(それで、オレは一人になる)

 オレには家族もいない。一番の理解者だった母は小学生の時に亡くなった。父は再婚相手の清美さんの言うなりで、手塩にかけて育てた妹の梨華も、結局、母親である清美さんを頼るようになった。

 オレの今までの人生って、いったい何だったんだろう……

***

 4月になり、新しい年号が『令和』と発表され、世の中は令和ブームに包まれた。まだ平成だというのに、平成が気の毒だ。

(平成……か)

 平成の年号が発表された時、オレは中学校二年生で、幼なじみの松浦暁生と一緒に塾で勉強をしていた。「ア・テスト」という高校受験に大きくかかわってくるテストの日にちが近づいていたからだ。

 そしてそのテストが終わって数日後に行われた球技大会で、オレは初めて『村上享吾』という男を認識した。バレーボールの試合中、途中で突然手を抜いた奴に、なんなんだコイツ!と怒りを覚えてしまったのだけれども、今なら分かる。あの時享吾は、目立つことが嫌いなお母さんのために、これ以上活躍しないように力を抜いたのだ……

(…………キョウ)

 あれからずっと一緒にいた。『平成』という時代をオレ達はずっと一緒に過ごしてきたんだ。でも、その『平成』も終わる。

 オレ達も、もう、終わりにしないといけない。



 ……なんて、一度は決心したものの、心はずっと揺れ動いていた。

(でも、なんでオレが離れないといけないんだ?)
(いや、それがキョウのためなんだから……)
(でも、一緒にいる道もあるんじゃないか?)

 そんな自問自答を繰り返しながら、ふいに頭をよぎったのは、一枚の写真だった。

(渋谷達は、あんなに幸せそうに一緒にいるのに……)

 渋谷慶と桜井浩介。同じく同級生で同じく同性同士でありながら、今は一緒に暮らしているらしい。

 なんでだよ……

(……そういえば、キョウ、桜井と話したんだよな)

 先月のバスケ部同窓会で、享吾は桜井と会ったそうで、それからまた変になってしまったのだ。

(何を話したんだろう……)

 あの時は、何となく詳しく聞けなかったけれど、今思えば、聞けばよかった。
 そう思ったら、いてもたってもいられなくなってきた。

(山崎に頼んでみようかな……)

 高校三年時に同じクラスだった山崎とは、同窓会で再会した際に連絡先を交換してある。山崎と渋谷達は今でも仲が良いらしいので、連絡をとってもらえるに違いない。
 オレは、桜井とはほとんど話したこともないけれど、渋谷とは小学校から同じで、結構仲も良かった。

 よし。オレは、渋谷から話を聞いてみよう。


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お読みくださりありがとうございました!
全然途中だけど😢とりあえず書けたところまで……
次回火曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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