これは旅ではない。
仕事の終わりが延びて月曜日。九時半まで働かされた。・・・十四時間。
本気で思った・・・先週で辞めておけばよかった・・・と。
もうこれは、モチベーションの問題だ。気持ちは先週で切れてしまっている。もう今は自由だったはずなのに・・・と思ってしまう。
火曜日、九時まで働かされた。・・・もう、ちょっとウンザリだ。
ウンザリしながらも、自由になった後のことを考える。
北海道から帰って来て、十日で仕事を見つけた。この仕事を辞めても、ずっと遊んでいる訳にもいかない。まだまだ代償を支払っている最中だ。仕事を探さなければならない。・・・でも、ちょっと休憩も必要だ。だって、結構頑張ったし・・・。
心ある人は、こう言ってくれた。
「無理して頑張ったんだから、少し身体を休めた方がいいよ」
ふむふむ。
「精神的にもまいったでしょう?ちょっとのんびりすれば?」
ふむふむ。
「睡眠不足がずっと続いてるんだから、たまにはたくさん寝なさい」
ふむふむ。
そうそうのんびりもしていられない事情はあるが、きっと十日間くらいはボケーっと過ごしてしまう気がした。
例えば、たくさん寝て、起きて、テレビを観て、ご飯を食べて、昼寝をして、バイクで日向ぼっこに出掛けて、帰って来て、ギターを弾いてメロディをひねり出し、深夜テレビを観て、ブログを書き、朝方に眠って・・・を何度か繰り返し、繰り返し、あぁぁ、もう十日が過ぎちゃったなぁ・・・的な感じかな。
その時、ふと想いがよぎった。
ちょっと待てよ・・・
そんな風に十日間過ごすなら、別に、家じゃなくてもいいよな・・・。どこか別の所で同じ風に過ごしてもいいんじゃないか?
火曜日は九時まで働かされた。例えば、そんな中でずっと考えていた。
この延長された労働は、言わばエキストラな労働なわけで、本来、先週で終わっていたはず。つまり、この延長された労働が生み出す賃金は、言わばエキストラマネー。本来、手に入らなかったはずのお金・・・あぶく銭。
あぶく銭は、使ってしまわなければならない。有効に使ってしまわなければならない。
時間とお金を両方有効に使う方法は?
実際、僕は疲れている。ヘトヘトもヘトヘト。ヘロヘロもヘロヘロ。思う存分昼寝がしたいと、心から願っている。
キーワードは「昼寝」だ。
僕は知らない街に行くと、歩き回ってしまう。ワクワクとドキドキに支配されて、休養どころじゃなくなってしまう。そうなるともう、それは旅だ。
旅にならない場所がいい。それはどこだ?素敵な場所はどこにある?
実は、一番最初に思い浮かんだのが「西表」。
・・・イリオモテに昼寝をしに行って来る・・・
想像以上に素敵な響きじゃないか?
実は、すぐに決まった。もう、あっという間に決まった。
実際は他の候補地チェンマイやロンドンも考えたが、「イリオモテで昼寝」には到底敵わなかった。物事を決める時、「響き」というのは、結構重要だ。
行ったことのある場所、これは最優先の条件。昼寝をしに行くのだから、勝手を知っているに越したことはない。
イリオモテの観光スポットは、前回の旅でほぼ周ってしまっている。だから、あれやこれやと忙しくなることは絶対に無い。
滞在費が安いこと。昼寝をするのだから暖かいこと、食費を浮かすために魚が釣れること・・・などなど、条件を充しまくっているのは、イリオモテをおいて他に無かった。
石垣島や竹富島はここイリオモテに来るための行程。思いっきり「旅」っぽい気がしたが、それは違う。だってこれは旅じゃない。昼寝だ。
旅には出ないよって言ったでしょ?ね?
これは昼寝だ。
屁理屈じゃない。
これは完全に昼寝だよ。だよ。だよ。
いわば、前代未聞の・・・昼寝だ。
この昼寝を思いついた時からずっと思ってることがある。
・・・こんなに素敵な時間の使い方があるだろうか・・・
こんなことを考えちゃうオレってすごいな。
そして、実行しちゃうオレってすごいな。
あぁぁ、幸せだな。
想像していた通り・・・幸せだな。
ねっ、期待は裏切らないでしょ?
そんな訳で、これは断じて旅じゃない!の巻・・・終わり。