ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

不幸感染

2024-12-06 13:03:09 | 
街がささやかなクリスマス色に染まっていく
人は遠くかけ離れた存在には鈍感だが
近い存在には極めて敏感である

目一杯背伸びして創られた
キラキラした世界観に
耐えられず目を背ける
人と比べてどうするの?
頭では分かっていても感じてしまう

安価なプレゼントに喜ぶ幸せな子
高価なプレゼントに喜べない不幸な子
それぞれの両親は子供たちに基づいた顔を浮かべている
幸福や不幸には感染する性質があるのだ
今はどうやら不幸の感染が流行っている
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人生の縮図

2024-12-02 13:26:54 | 
今日から逃れるため
布団の中に潜り込む
明日を封印するために
布団の中に潜り込む

目覚めた朝はすこぶる重く
逃れたはずの今日が
どんよりとした風体で
薄く笑って佇んでいる

師走の街は忙しなく暮れ
鋭く走る冷たい風に
流されるまま家路を急ぐ

すべてが終わりそうな深い闇の隅で
点々と光るイルミネーション
売れない画家が描いた
「人生の縮図」という名の作品のようだった
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才能と努力

2024-11-26 12:10:34 | 


例えるならば宝石と汗
例えるならば光速と徒歩
例えるならば素材と加工

才能は努力を醜いものとして見下し
努力は才能を甘えてばかりの怠け者と蔑む
水と油の関係性に近いと言える

しかし、どちらが優れているかの問題ではない
すべての才能は枯渇する運命にあり
時に努力は秩序を乱す
どちらも完全ではないのだ
だから相互扶助が求められるのだ

それには互いに敬意を持たなければ
直視できないほどの眩しさに
磨き抜かれた鋭利な光に
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敗れし者たち

2024-11-19 12:45:20 | 
並ぶ相手の様子を伺い
次の下りでラストスパート
もう一度だけ横顔を見て
自信が失せた彼の微笑み

私の方が綺麗なはずだ
性格だって私がいい
しかし男は彼女に惹かれる
色の魔法を振り撒けるから

私は彼に及ばない
金も名誉も何もかも
これから先もこのままか
一矢報いる手はないか

勝たせてください勝たせてください
彼らは両手を合わせ祈るのだ
奇跡を強く求めながら
平然とした顔で日々を過ごす
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春が来たなら

2024-11-16 12:45:37 | 
春が来たなら木漏れ日浴びて
背に温もりを感じたい
柔らかな陽が降り注ぎ
別れと出会いを眩しく染める

夏が来たなら水とふれあい
強がる熱をなだめたい
球児たちは大人びて
大人たちは青春に帰る

秋が来たなら寝転んで
色に包まれ、空を見上げる
キンモクセイの甘い香りが
風に流れて訴える

冬が来たなら服を重ねて
孤独な街をさまよい歩く
一人だろうがなかろうが
誰も彼もが寒さ抱えて
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儚き心音

2024-11-14 11:43:27 | 
溶けてしまったアイスクリーム
夏の火遊び淡いときめき
枯れてしまったオレンジの花
行き交う人の早足の音

止んでしまったオルゴールの声
優しい音色いまも心に
消えてしまった好みの時計
刻む仕事に飽きたのかい

飛んでしまった誰かの命
上へ飛んだのか
下へ飛んだのか
それは知らない

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ヒマリオとユリ

2024-11-12 12:16:48 | 
青空に薄い雲が点々としていた
風は穏やかで陽の温もりを感じる
ヒマリオとユリは川のほとりに並んで立っていた
二人の視線は川の流れにぼんやりと向けられていた

しばらくして後方のベンチに座ったヒマリオとユリ
当たり障りのない話をしても、言葉はすぐに途切れてしまう

出会った頃は互いの外見に惹かれた
ユリは美人と言われ慣れている顔立ちで
ヒマリオはユリの好みと一致した
日々を重ねるにつれ
互いの優しさや悩みを知るうちに、恋に愛が混ざり始め
思いやれば思いやるほど心の負担が増していった
恋と愛を繋ぐ薄氷の道はあまりに頼りなく
その上を共に歩く決心がつかず、ついに二人は断念した

どちらからともなくベンチから腰を上げ
少し穏やかに話したあと
「出会った時より今のヒマリオが好きだよ」とユリは声を強めた
そして無理に笑顔を描き、ヒマリオに背を向けた
ヒマリオはユリの後ろ姿が消えるまで
いや、消えた後もしばらくその場に立ち尽くしていた
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若者の世界

2024-11-07 13:28:30 | 
若い人の自殺が増えている
古い唄の世界ではなく
これだけ少子化というのに
今の時代が最も多いという
自殺の原因は6割が不明
心に方程式は通じない

私も高校の終わり
何の病だか分からなかったが
一日にして生きる資質を失った
そして一生、治らないことも悟った

大学へ向かう電車の中
座ることすら出来ない私は
窓際に立ち、掌に爪を突き刺し
ただただ耐えた
大学へ辿り着くと若い幸福たちが待っている
話せば話すほど孤独になった
来る日も来る日も必死で生きた
その結果は大学中退だった

友人たちとの関係が切れて以降
私は旅行したことがない
強い誘いがない限り
わざわざ苦しむ必要はないのだ

ならば死のうとしている若者にかけられる言葉はないのか
私もこれだけの思いをしてきたのだから
だが、残念ながら彼らにかける言葉は見つからない
あまりに無力である
むしろ心を持たぬ、抑揚のないAIの説得の方が
彼らの命を救う事が出来るのかもしれない
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フォールカラー

2024-10-31 13:35:59 | 
太陽が短命になり
冷たい風が吹き抜ける
僕の右手には新しいカレンダー
気づかぬうちに秋は深まっていた

帰宅して暗闇の部屋
着替えることもなくベッドに体を横たえた
「僕はもう」
そこまでしか聞こえなかったが
続く心の言葉もだいたい分かっていた

ある人には心地よく穏やかで
ある人には優しく
そして僕は秋の哀しさだけに心を奪われていた
_______________________________________________

大谷選手、山本投手。ワールドシリーズ制覇おめでとう。





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枯れない人

2024-10-24 13:47:00 | 
木枯らしの季節が近付いてくる
その人を知って40年が過ぎた
といっても私が一方的に認識しているだけなのだが
彼女は未だに枯れていない
女性として稀有な存在である

彼女は還暦に近づきつつある
華やかなる世界の住人のため
若く見られることはあるだろうが
ルノワールなら描かない長い道程が刻まれている
しかしそれすら、愛しく思えるのだ

20代半ばの彼女が言った
「早く30才になりたい」と
私は少し疑った
しかし、それから30年が過ぎた今
「なんなら、まだ大人になりたいと思っている」
ここまで来ると尊敬しかない
こうした独自の思想たちが、女性としての輝きを失わない理由かもしれない

30代、40代、そして50代
毎年、彼女は実りの秋を迎えてきたに違いない
画面越しに過ぎないが
あなたに逢えてよかった
枯れない人よ、どうかいつまでも
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