ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

コーヒーとスピッツ

2024-10-10 13:17:13 | 
性的にはマジョリティなのだろう
綺麗な女性とすれ違うとき
僅かばかり心を奪いたいと思うのだ
振り向いてほしい
僕は背中で受け止めるから
その頼りない背中で

自宅から職場まで歩いて15分とかからない
そこで1000円札の仕事をして
夕方になればシャッターを閉める
帰宅の途中、寒いスーパーに入り
気に入ったコーヒーを買い
再び自宅へ向かう
こうして1キロで完結する日々が終わる

無理を押して大学に通い
無理を押して仕事をこなそうとした若い自分に対し
罪の意識はある
しかし今だって苦しいのだ、虚しいのだ

先ほど買ったコーヒーをストローで飲み
スピッツのチェリーやスピカなどを聴いてみる
一瞬だけ幸福の香りがした


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自らに告ぐ

2024-10-04 13:01:23 | 
孤独である
ことに最近、それを強く感じる
かといって、死ぬ気にもならないから
今日もまた生きている

心に小さな家を立てようとした
小さな花を咲かそうとした
しかし、その作業中に
悲しみの洪水や、苦悩の暴風に
すべてを無にされた
何度も何度もその繰り返し
僕の時はすり減っていく

「自らに告ぐ。もっと粗末な家でいい。もっとみすぼらしい花でいい。
兎に角、建てよ、咲かせよ。さもなくば、さらに巨大な孤独に襲われることになる」

長い登り坂の途中で体を横たえていた僕は
冷たくなった風に乗ってきた抑揚のない言葉を
目蓋を閉じながら聴いた
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嘘の海底

2024-09-27 11:10:34 | 
嘘をつかずに生きられる人間と
嘘をつかずには生きられない人間がいるならば
僕は後者だ

全く予期していなかった
人生そのものがブラックに塗り潰されたあの日から
パニック障害という秘密を抱えてからずっと
この病を隠し通すから
すべて辻褄が合わなくなるのだ
話して理解されるものなら
それがいちばん楽だけれど
世の中はそこまで甘くない

自らの半生を正直に話せる人はたいがい恵まれている
もし僕が秘密を打ち明けるならば
胸を張って生きられなかった人になるだろう
「すっかり秋めいたね」
何気ない言葉を交わしたそのあとに
躊躇いがちに話すのではなかろうか
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灯りの捜索

2024-09-17 15:11:07 | 
暑さは強く残っているというのに
随分と早く日が暮れるようになった
家路を急ぐ街模様

立ち止まって考えるために置かれた信号
前を見ればどす黒く不安になり
振り返ればぼやけた古い景色に虚しくなる

抜け出したい
逃げ出したい
楽になりたい
せめて心だけでも

妙案など浮かんだことはない
稀に解けたと思っても
それはすべて錯覚なのだ
どこかに落ちていないだろうか
さりげない灯りが

夜を歩けば生活の音
ふいにひんやりと秋風
まだ夏のままの心がざわめいた
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素数の事件

2024-09-06 11:58:32 | 
カレンダーが8月から9月に捲られる頃
学生の自殺が多くなるという
 
夏の終わりの日、女子高生が商業施設の屋上から飛び降りた
しかし、この自殺にはさらなる悲劇が重なった
路上を歩いていた女性が凶器と化した女子高生と衝突したのだ
2人とも亡くなった
1人は加害者、もう1人は被害者という形で

台風10号、自民党総裁選、兵庫県知事
それらの合間にこの出来事が僅かな時間、テレビから流れた
世間はすぐに忘れてしまうのだろう
しかし、僕は2人の女性の運命の交差を上手く消化する自信がない
繁華街で起きた素数の事件を
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タイムマシーン

2024-08-07 15:06:32 | 

ヒトが言葉を獲得する前から

僕らはタイムマシーンに乗っている

但し、それは一方通行である

上りだか下りだか知らないが

未来や死に向かっているのは確かだ

 

過去に体ごと移動するものは

まだ発明されていない

音楽や景色が心のみをひととき

過去へ散歩に連れ出すことはあっても

 

子供の頃にその意識は薄いが

大人になり、年を重ねれば気付くだろう

思いもよらぬ時の進み具合に

 

春のタイムマシーン

夏のタイムマシーン

秋のタイムマシーン

冬のタイムマシーン

 

ぐいぐいと力強く前進していく

人は、いや生き物で有る限り

死ぬまで降りることは許されない厳格

僕らはそこから下車する時

どんな気持ちになるのだろう

 

夏服が咲く駅前通り

探すような早足の青年

立ち止まり、アスファルトに近づく老人

灼熱のタイムマシーンに流されながら

 

 

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プールサイド

2024-07-28 13:54:04 | 

焼き尽くす陽射し

ぽつぽつ蝉の声も流れ始めた

夏の経験が増えるたび

街も人も色褪せて

光に溶けたように姿をくらます

 

しばらく外に居ると

熱い湯に入っている錯覚があり

冷房の効いているスペースに飛び込む

 

その時、遠い夏のプールで

君も勢いよく飛び込んだ

やがて泳ぎ疲れた君が

両腕を伸ばし、プールから上がろうとしていた

その長い髪から

滴を落としながら

プールサイドを歩く君の笑顔は

涼しげだった

 

 

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最後のアイドル

2024-07-18 11:53:43 | 

オールスターゲームで大谷翔平がホームランを打った

瞬間にそれとわかる当たりは

ライトスタンドへ吸い込まれた

 

今年の大谷はグラウンド内外で色々とあった

赤から青へ

それはユニフォームが

チームが、リーグが変わるだけでなく

羽を伸ばせる場所から

勝利を求められる場所への移動だった

 

信じていた人間に裏切られた

大きな安らぎも手に入れた

彼にとって2024年は忘れられない年になったろう

シーズン終了後に、さらに大きなものを手にしていればいい

 

とまれ、オールスターの歴史に大谷翔平というスラッガーの名が刻まれた

今は素直にその事実を喜ぼう

彼は長身で、常に太陽を見上げる向日葵に似ている

その向上心を忘れずに

永遠の野球少年でいてくれ

僕の最後のベースボールアイドル

 

 

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見知らぬ友へ

2024-07-17 12:30:10 | 

絶望の友よ

顔も声も知らぬ友よ

今日も生きているかい?

か細い光を感じる事はないかい?

ないだろうね 

絶望しているのだから

このまま終わりにしようか?

それとも日々をしのいでもう少し待つか?

しかし何を待てと言うのだろう

 

僕の絶望の歴史も長くなったから

本来なら、友へ助言するべきなのかもしれない

しかしながら、驚くほどその術を持ち合わせていないのだ

ただ低価格な気休めが通用しない事は知っている

絶望から抜け出したという自信に満ちた声も届かない

 

まあ友よ

結論を急がない方がいい

今日でなくても明日でいい

明日になったら、また明日

見知らぬ君がいなくなるのが

僕には寂しい

 

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2024年7月

2024-07-10 11:41:32 | 

花になりたい女たち

傘になりたい男たち

そんな時代でないことは明白だ

ただ、理想のかけらのようなものが

灼熱のアスファルトの上で

ところどころ呼吸を止めない

 

明日が見通せない恍惚と不安 

明日を見通せた安堵と絶望

 

楽しそうに笑う君

痛々しく生きる君

居場所を探し求める君

淡々と日々をやり過ごす君

 

地上の暑さと混沌をよそに

空では7月の瑞々しい夕焼けが

ひとときの主役を務めていた

 

 

 

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