先生宅を後にして、私と糸井君は、かつて、先生によく連れて行ってもらった、近所の蕎麦屋に入った。私たちが出入りしていた頃のご主人は、すでに引退して、店を息子さんに譲っている。当たり前だったはずの風景が、音も立てずに、ひとつ、またひとつと消えていく。
「懐かしいでよね、ここの蕎麦屋」
「そうだね。先生は天ぷらそばが好きだった。それと、ここの先代のご主人に、天女さまって言われたんだ。初めて天女のタイトルを取ったとき」
「桜花戦、期待しています。桜花さまになってください」
「信じられないな、こんな早く、タイトル戦に出られるなんて。私だけの力じゃとても無理だった。糸井君の力が大きいよ。ありがとう」
「まあ、それはどうでもいいですけど」
糸井君の態度が急に改まった。
「あの、さおりさん。僕じゃだめですか?」
「えっ、どういうこと?」
「僕じゃ頼りないですか?」
糸井君は少し俯いた。
「いや、そんなことはないけど」
「男として、さおりさんは僕をどう思いますか?僕はさおりさんを女性として好きです」
「えっ。それはありがたいけど、いまは糸井君に限らず、誰とも付き合うつもりはないの」
突然の糸井君の告白に驚きはしたが、本音を伝えた。
「どうしてですか?」
「どうしても」
「そうですか」
糸井君は再び俯いた。
「懐かしいでよね、ここの蕎麦屋」
「そうだね。先生は天ぷらそばが好きだった。それと、ここの先代のご主人に、天女さまって言われたんだ。初めて天女のタイトルを取ったとき」
「桜花戦、期待しています。桜花さまになってください」
「信じられないな、こんな早く、タイトル戦に出られるなんて。私だけの力じゃとても無理だった。糸井君の力が大きいよ。ありがとう」
「まあ、それはどうでもいいですけど」
糸井君の態度が急に改まった。
「あの、さおりさん。僕じゃだめですか?」
「えっ、どういうこと?」
「僕じゃ頼りないですか?」
糸井君は少し俯いた。
「いや、そんなことはないけど」
「男として、さおりさんは僕をどう思いますか?僕はさおりさんを女性として好きです」
「えっ。それはありがたいけど、いまは糸井君に限らず、誰とも付き合うつもりはないの」
突然の糸井君の告白に驚きはしたが、本音を伝えた。
「どうしてですか?」
「どうしても」
「そうですか」
糸井君は再び俯いた。