2勝2敗で迎えた桜花戦最終局。勝った時のことは、考えていない。しかし、もし負ければ覚悟を決めていた。将棋はこれまでにして、最愛の人に会いに行く。先生に会いに行く。
将棋館の外は、よく晴れていた。振り駒の結果、私が先手となった。やはり最後は、自分らしく攻め将棋でいきたい。まだ菜緒は、このシリーズ、本調子ではないようだった。私が菜緒の本当の力を引き出す。そして勝ってみせる。
私の駒が激しく前進する。菜緒は私の攻めに対する備えを、淡々と固めていく。駒がぶつかり合った。この将棋、もう引くつもりはない。引いたら負けだと思った。そして、この将棋に限れば、負けたら終りなのだ。私の攻めを菜緒は堂々と受ける。なかなか活路を見出せない。この81マスの宇宙の中に、どこか光が差しているはずだ。私が愛した、宝石箱のような盤上の宇宙の中に。菜緒には、すでに光が見えているのだろうか?
ついに光の指す場所を見つけた。菜緒の堅陣のわずかなほころびを私は突いた。菜緒の懐で私が蒔いた歩の種は、やがて金に成り、菜緒の陣形をかき乱した。そしておそらくその心さえも。
将棋館の外は、よく晴れていた。振り駒の結果、私が先手となった。やはり最後は、自分らしく攻め将棋でいきたい。まだ菜緒は、このシリーズ、本調子ではないようだった。私が菜緒の本当の力を引き出す。そして勝ってみせる。
私の駒が激しく前進する。菜緒は私の攻めに対する備えを、淡々と固めていく。駒がぶつかり合った。この将棋、もう引くつもりはない。引いたら負けだと思った。そして、この将棋に限れば、負けたら終りなのだ。私の攻めを菜緒は堂々と受ける。なかなか活路を見出せない。この81マスの宇宙の中に、どこか光が差しているはずだ。私が愛した、宝石箱のような盤上の宇宙の中に。菜緒には、すでに光が見えているのだろうか?
ついに光の指す場所を見つけた。菜緒の堅陣のわずかなほころびを私は突いた。菜緒の懐で私が蒔いた歩の種は、やがて金に成り、菜緒の陣形をかき乱した。そしておそらくその心さえも。