ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

スピッツ「みなと」

2024-01-12 12:40:51 | 歌詞

船に乗る訳じゃなく だけど僕は港にいる

知らない人だらけの隙間で 立ち止まる

遠くに旅立った君に 届けたい言葉集めて

縫い合わせてできた歌ひとつ 携えて

 

汚れてる野良猫にも いつしか優しくなるユニバース

黄昏にあの日二人で 眺めた謎の光思い出す

君ともう一度会うために作った歌さ

今日も歌う 錆びた港で

 

勇気が出ない時もあり そして僕は港にいる

消えそうな綿雲の意味を 考える

遠くに旅立った君の 証拠も徐々にぼやけ始めて

目を閉じてゼロから百まで やり直す

すれ違う微笑たち 己もああなれると信じてた

朝焼けがちゃちな二人を染めてた あくびして走り出す

君ともう一度会うための大事な歌さ

今日も歌う 一人港で

 

作詞・作曲は草野正宗。2016年発売。

この曲は東日本大震災で亡くなった人々への鎮魂歌と推測されています。草野さん自身は、そうしたことは語っていませんが。元日の能登の大地震。また、阪神・淡路大地震が起きた1月17日が迫ってきた今、スピッツの「みなと」を思い出しました。

 

「遠くに旅立った君」という表現から、君がこの世の人ではないことが解ります。しかも君は1人ではなく、複数の人を指しているのだと思います。「コンサートを見に来てくれた人」「スピッツの曲を聴いてくれた人」。あるいは大地震で亡くなった全ての人々かもしれません。

 

「汚れてる野良猫にも、いつしか優しくなるユニバース」

草野さんの歌詞にはよく野良猫が登場します。野良猫=弱者でそれほどずれていないのではと思います。「優しくなるユニバース」。日本は寄付の文化が根づいていないと言われます。子供が小銭を寄付していたら、「すごいね、偉いね」と褒めてあげることがこの先に繋がるのではないでしょうか。

 

「君ともう一度会うための大事な歌さ。今日も歌う、錆びた港で」

東日本大震災で象徴的だったのは津波です。だからこそ主人公の「僕」は港で死者に向けて歌っています。

「遠くに旅立った君の証拠も徐々にぼやけ始めて」

この曲の発売はこの大震災から5年後。徐々に記憶の風化は進んでいきます。

だから「目を閉じてゼロから百まで」思い出そうとしているのでしょう。

「すれ違う微笑たち、己もああなれると信じてた」。しかし、そうはならなかった。

 

「君ともう一度会うための大事な歌さ。今日も歌う、一人港で」

言葉を断定的にせず、抽象的な言葉を丁寧に並べていく。草野さんらしい、彼にしか書けない鎮魂歌ですね。

 

コメント
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