西山朋佳女流三冠が4日に行われた朝日杯将棋オープン戦で阿倍光瑠七段との対局に勝利しました。この結果、直近のプロ公式戦で13勝7敗となり、「10勝以上、なおかつ勝率6割5分以上」の条件を満たし、プロ棋士への編入試験の受験資格を得ました。
そして、西山さんは受験する意向を表明しました。
それにしても西山さん、気持ちが良いくらいの早い決断でした。午後にもう一局、指すにも関わらず、昼休後に将棋連盟に意向を伝えました。阿部七段戦に勝てば、受験する事は決めていたのでしょう。
西山さんの将棋については、このブログでも何度も記してきました。才能は一級品です。特に終盤の強さはプロ棋士の中へ入ってもトップクラスだと思います。
ただし、編入試験に関しては厳しい戦いが予想されます。試験官は5名で、新しく棋士になった順に選ばれます。はっきり言えば、この5人の実力はプロ棋士の平均値より高いです。
他の世界では3年、5年かけて先輩に追い付くというのが普通でしょうが、将棋界は例外です。プロ養成機関である奨励会、特に三段リーグで熾烈な競争があり、その狭き門を勝ち抜いて間もない棋士たちのため、新人ながら他の平均的な棋士よりレベルが高いのです。
西山さんも三段リーグを14勝4敗という普通ならプロ棋士になれる好成績を残しながら次点となり、あと一歩届きませんでした。
よって、西山さんが試験官に勝ち越し、プロ棋士になることは至難です。願望を込めて合格できる確率は40%程度ではないでしょうか。序盤・中盤で離されて、得意の終盤力を生かせない心配もあります。
ただ、これだけの才能、魅せる将棋を指せる人はプロ棋士でも少ない。女性初のプロ棋士というインパクトを加えれば、事実上、藤井聡太名人ひとりで支えている現状を抜け出す絶好のチャンスでもあります。
これは西山さんだけでなく、将棋界にとって大勝負になる気がします。