先週の月曜に20歳の男子大学生が内科外来を受診した。その1週間前から右こめかみの痛みがあった。受診2日前の土曜日に高熱が出て、近くの内科クリニックを受診した。インフルエンザB型と言われて、リレンザを処方された。
リレンザを吸入しようとしたが嘔吐してしまい、使えなかった。翌日曜の夜間に当院の救急外来を受診した。当直の外科医が点滴とラピアクタの点滴静注をして帰宅とした。
月曜日に受診した時は解熱していたが、こめかみの痛みが続いていて、食事がとれないという。痛みの部位は1週間同じだった。圧痛はない。他の部位に痛みはない。咳はわずかにあったらしが、その日はなかった。鼻汁・咽頭痛は訴えない。痛みは継続していて、時々耐えられないくらいひどくなるそうだ。患者さんとしては初めての症状だった。
何の痛みかわからなかった。くも膜下出血疑いとして頭部CTを行ったが、頭蓋内に異常はなかった。1週間経過して出血が吸収されてきたことも考えて、微小な出血の有無をみようと頭部MRIまで行ったが、なかった。ただ右副鼻腔に液体貯留があり、副鼻腔炎の所見だった。血液検査で白血球数11500・CRP9と炎症反応は上昇していた。食欲もないし、アパートに一人暮らしなので、入院でみることにした。
右眼の奥は痛くないかと聞いてもいたくないという。耳鼻咽喉科の外来(大学病院から出張)で診察してもらうと、右鼻腔内に膿性鼻汁の垂れ込みがあった。副鼻腔炎で間違いはなかったが、耳鼻咽喉科の先生も「右側はあっているけど、こめかみですか」と言っていた。
抗菌薬の点滴静注を5日続けると、こめかみの痛みは消失して、炎症反応も陰性化した。入院後に受診時にはなかった発熱が2日だけあったが、すっかり解熱した。こめかみの痛みは、副鼻腔炎の痛みと判断される。そこに痛みを感じるのもあるのだろう。食欲も出たので、その後抗菌薬は内服に切り替えた。退院2週間後に、耳鼻咽喉科外来で経過をフォローしてもらえることになった。
こめかみの痛みを訴えた細菌性副鼻腔炎というだけの話。こめかみは、目(目尻)と耳の間の噛んだ時に動く部位。「米噛み」ということらしい。