先週の日曜日は、消化器病学会東北支部教育講演会に行ってきた。講演のプログラムを見ると、残念ながら現場の臨床医にはほとんど役に立たないので、純粋に?単位をとるためだけの出席だった。
唯一役に立ちそうな「好酸球性食道炎」の講演で始まったが、講師は急に言葉が出なくなり、そのまま講演は中止になった。「すみません」「大丈夫です」とは言っていたので、構語障害ではないようだ。心因性とも思えず心配した(救急車で運ばれたが、入院にはならず、帰ってきたそうだ)。消化器内科と消化器外科は会場中にいたが、これは脳神経内科の問題か。
その後の講演は問題なく行われて、参加証明書をもらって帰った。1時間ずつ2時間ほどマックとドトールをハシゴをして、徳田安春先生の本を自習した。
講演会のテキストは大抵役に立たないが、「好酸球性食道炎」はよくまとまっていて役に立つ(これだけが収穫という皮肉)。
「好酸球性食道炎 Eosinophilic esophagitis(EoE)」
好酸球性食道炎は、食物抗原に対する遅延型アレルギー反応によって食道に限局した好酸球主体の慢性炎症をきたす好酸球性消化管疾患。食道を含む全消化管に好酸球浸潤をきたしうる好酸球性胃腸炎とは別個の疾患単位。
症状は、食物つかえ感、嵌頓(impaction)。胸やけ、呑酸などGERD症状を呈し、GERDとの鑑別が必要になる。
診断は、自覚症状と食道粘膜生検で上皮内に15個/HPF以上の好酸球浸潤(数か所の生検が望ましい)。
内視鏡所見は、1)白色進出物(Exudates)、2)輪状溝(Rings)、3)粘膜浮腫(血管透見性低下・消失)(Edema)、4)縦走溝(Furrows)、5)食道狭窄・狭細化(Stricture)。
治療は、PPIが第一選択で、PPIが無効な場合にステロイド治療(嚥下療法)。
PPIは約60%で症候的寛解、約50%で組織学的寛解。PPIが効く機序は、1)酸逆流による粘膜障害を治癒させて内腔側からのアレルゲンの浸透を抑制する、2)PPIがもつ抗炎症作用。PPI不応例にボノプラザンが有用との報告もある。
ステロイド投与は食道局所投与(嚥下療法)を行う。気管支喘息用吸入型ステロイド製剤のプロピオン酸フルチカゾンかブデソニドを用いる。数%~20%に食道カンジダ症が発生するが、多くは軽度で問題にならない。50~80%で組織学的寛解に至るが、自覚症状の改善は組織学的な反応ほど顕著ではない。
健診の内視鏡検査を契機に無症状で見つかるペースが多いが、無症候例の予後は明らかになっていない。