1週間前の先週木曜日に、糖尿病外来の先生(大学病院糖尿病科)から、70歳男性の糖尿病教育入院をお願いしたいと連絡が来た。その日内科クリニックからの紹介で外来を受診していた。随時血糖439mg/dl・HbA1c13.8%。
現病歴を見ると、健診は毎年受けていたらしい(本人の話)。3年前に初めて糖尿病を指摘されたが、受診していない。2年前に8Kgの体重減少があり、内科医院を受診した。HbA1c15%。経口血糖降下薬(内容は不明)でHnA1c7%まで改善したが、倦怠感や口渇やなくなったので治療を中断した。今年の8月に別の医院を他の症状で受診した際に、HbA1c8%と指摘された。そこはかなり高齢の先生なので、今回紹介してきたクリニックへ紹介された。食事療法で様子をみていて、HbA1cが13%になったので、当院へ紹介されたという経緯だった。
7年前に当院消化器科に重症膵炎で入院していた(アルコール性)。膵頭部に石灰化があり、すでにアルコール性慢性膵炎になっていたので、急性増悪になる。門脈から脾静脈にかけて血栓症もあった。何とか軽快治癒して退院した。その時は糖尿病にはなっていなかった。
内科クリニックの紹介状にも、糖尿病外来の先生も、その既往は記載されていないので、患者さんが話していなかったらしい。患者さんにその話をすると、入院したことはしぶしぶ認めたが、病名は聞いていないという。重症の膵炎となっていますがと言うと、診断はつかないと言われたと主張する。急に顔つきが険しくなった。
単に症状もないので面倒で治療を中断するというだけではなさそうだ。話題を変えて、社会歴を訊くことにした。高校卒業後に就職して、同じ仕事を40年務めている。家族は現在は妻と二人暮らしで、子供は別に住んでいる。立派に社会生活をしてはいる(でも変だ)。
当面の糖尿病の話だけすることにした。食事摂取も良好で診たところは元気で動きも良い。入院ではなく、外来でインスリン導入することにした。インスリン注射が必要なことは案外すんなりと受け入れた(しないと言われても困るが)。持効型のトレシーバ6単位から開始することにした。
翌日も外来で指導して、問題なく注射手技はできた。初診時の検査でCA19-9が軽度上昇していたので、膵癌検索として今週の火曜日に外来で造影CTを行った。膵頭部の石灰化は増加していた。主膵管は不整があるかもしれないが、有意な拡張はなかった。膵癌はない。
ヒューマログ毎食直前3単位ずつを追加して、インスリン強化療法を開始した。2回目の受診の時から血糖自己測定も練習していた。最初指先から出す血液が少なくて何度かエラーが出たが、それも習得した。
腫瘍マーカー上昇があり、消化管の検査も行いたいというと、症状がないので必要ないと言われた。少なくともCTで明らかな腫瘤はないので、また改めて勧めてみることにした。
持効型インスリン少量を始めただけでも、体調が良くなったという。お世辞なのか、本当なのかわからないが。外注検査で血中Cペプチドは0.87ng/mlと低下して、インスリン依存状態相当だった。