なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

悪性貧血

2018年11月14日 | Weblog

 先週の月曜日に内科新患を受診した73歳男性のことで、内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)から相談された。主訴は2か月前からの両下肢の浮腫と易疲労感だった。

 血液検査で、RBC 95万・Hb 4.3g/dl・Ht 13.1%・MCV 137.5の著明な大球性貧血があった。WBC 3800・血小板数12.4万と軽度に減少している。汎血球減少相当だった。白血球分画は問題ない。LDH 879と上昇していた。BNP409.7と増加して、胸部X線で心拡大を認めた。

 心不全状態だが、心肺機能の問題ではなく、貧血によるものと判断された(心臓エコー施行)。MCVがここまで高値を示すのは、巨赤芽球性貧血だろう。胃切除術の既往はなく、悪性貧血に相当する。

 ビタミンB12は外注検査になる。入院でビタミンB12の投与だけでは間に合わないと判断して、2日間2単位ずつ輸血した(輸血量が多いと心不全の負荷になる)。同時にビタミンB12の投与も開始した。輸血後にHb 6.5g/dlとなり、その2日後にはHb 8.4g/dlと上昇してきた。

 治療前の血清ビタミン12は測定感度以下だった(葉酸値は正常域)。胃内視鏡検査は萎縮性胃炎のみ。ビタミンB12の連日投与を隔日にして、あとは外来通院となった。

 悪性貧血は数年にひとりくらいの割合でみかける。骨髄穿刺をやってもよかったが、若い先生があまり乗り気ではなかったのと、MCVからまず間違いないと判断されたので、今回は施行しなかった(ビタミンB12の値と治療反応性をみて、必要があれば骨髄穿刺としていた)。

 

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両側声帯麻痺

2018年11月14日 | Weblog

 入院している80歳男性が、月曜日に吸気時喘鳴を呈してた。酸素飽和度も一時的に少し経過していた。

 この患者さんは誤嚥性肺炎で入院して、肺炎自体は抗菌薬投与で軽快した。ST(聴覚言語療法士)介入で嚥下訓練を行ったが、経口摂取は無理と判断された。家族と相談して、胃瘻造設を行ったが、栄養剤注入開始前にまた肺炎になって、再度肺炎の治療をしていた。それもやっと軽快して、改めて経管栄養を開始しようとしていた矢先だった。

 舌根沈下を疑って経鼻エアウェイを挿入してみた。一瞬良くなった気がしたが、結局変わりなかった。耳鼻咽喉科医に依頼すると、病室まで喉頭鏡を持ってきて診てくれた。「両側声帯麻痺で正中位固定されている」と診断された。早急に処置が必要ということで、気管挿管を行った。酸素飽和度は改善した。

 診察やこれまでのCTでは頸部胸部の悪性腫瘍はない。両側麻痺なので、悪性腫瘍ならば広範囲に進展しないとこうはならないか。頭部CTでは著名な脳萎縮があるが、局所的な脳梗塞はない。かなりやせているが、栄養の問題なのか、神経筋疾患が潜在しているのか判断がつかない。

 この方は奥さんと娘(と孫)と生活している。介入している行政からの情報で、娘さんは精神的に問題があるということだった。話をした限りでは統合失調症ではないようで、理解力に疑問があることから軽度の知的障害なのかと看護師さんと話していた。

 病院に救急搬入された時、すでに1週間前から食事摂取ができなかった。たまたまその日はデイサービスに行っていて、酸素飽和渡低下に職員が気づいて救急要請した。自宅にいたら、呼吸苦を訴えることもできないのでそのままになっていたはずで、危なかった。

 患者さんは搬入されたが、奥さんも娘さんも連絡がつかず、連絡がついても今日は病院に行けませんという返事だった。近所に住んでいる市議会議員さんが、自分の車で家族を連れてきてくれた(行政で以前から注意している家族らしい)。

 肺炎のコントロールがつけば、1週間後には気管切開をしなければならない。胃瘻造設の時も、それでお願いしますとあっさり言われたが、どこまで理解されているのだろうと看護師さんと話していた。今回は電話は通じたが、今日は行けませんと言われた。

 2日後の今日娘さんが病院に来てくれた。びっくりした様子もなく、淡々と説明を聞いていて、(お金と手段の問題で)すぐは病院に来れないと言っていた。患者さんは今回のエピソードでまた誤嚥した可能性がある。挿管チューブが1週間は持つので(ぎりぎり2週間か)、その間に治療で見込みがつけば、気管切開を考慮する方針とした。

 

 

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