なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

下部胆管癌の血糖コントロール

2020年06月12日 | Weblog

 先週末に外科の先生(女性医師)に、下部胆管癌の88歳女性の糖尿病治療を依頼された。5月28日から急性胆管炎で入院していた。朝は血糖が60~80mg/dlだが、昼は200~300mg/dl台、夕は300~400mg/dl台になる。

 消化器科外来で処方されていた経口血糖降下薬は、DPP4阻害薬(ジャヌビア50mg)・SGLT2阻害薬(スーグラ50㎎)・SU薬(アマリール1mg)・ピオグリタゾン15mgだった。それにヒューマリンRのスケール対応だった。

 朝の血糖が低めで、ヒューマリンRは入らないので、昼の血糖から上がり始める。昼のインスリンでも下がりきらずに夕はさらに高血糖という経過だった。

 

 土曜日の日直の時に、これまでの経過を確認した。もともと内科医院に糖尿病で通院していた。処方はグラクティブ50㎎とグルベス3錠(グルファスト10mg+ベイスン0.2mg)でHbA1c8.5~9.5%だった。

 昨年の11月に閉塞性黄疸で当院の消化器科に紹介されたが、膵頭部癌疑いで地域の基幹病院消化器内科にさらに紹介となった。下部胆管癌と診断されて、胆管ステントが留置された。黄疸は軽快して、年齢的に治療としてはそこまでになるので当院に戻された。

 今年の4月になって、十二指腸下降脚の閉塞で嘔吐するようになった。当院外科で胃空腸吻合術が施行されて、食事摂取が可能となった。

 閉塞性黄疸時にHbA1c12.0%まで上昇して、減黄後は9.2%まで戻っていたが、十二指腸閉塞時には13.4%まで上昇していた。経口血糖降下薬の追加(SU薬とSGLT2阻害薬)で、5月初めに11.1%、5月末には8.7%と急激に低下した。

 

 空腹時血糖が70mg/dlで昼夕はかなりの高血糖になるパターンだった。胃空腸吻合術で食物が一気に腸管に流れ込んで血糖はoxyhyperglycemiaの形になるが、夜間~早朝はずっと(無自覚性?)低血糖になっていたはずだ。 

 ちょうど一時的に食事を中止して、経口血糖降下薬も全部中止になり、回復後に食事と内服が再開されるところだった。夜間~早朝に低血糖になっているので、そのまま内服薬を中止にして、インスリン治療で経過をみることにした。

 超速効型インスリンを毎食直後に3単位として、朝はそのまま同量、昼夕のインスリン量を血糖をみて1単位きざみで上げることにした。3単位のままでも、朝の血糖は同じで(これは薬の影響のない自然の血糖になる)、昼夕が200mg/dlちょっとになり、さらに100mg/dl台になった。

 そろそろ抗菌薬(ゾシンPIPC/TAZ)を中止するところだが、腹水が貯留していて、いったん退院できるかどうかはわからない。

 

 

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