5月初旬に皮膚科外来に86歳女性を家族が連れてきた。寝たきり状態で仙骨部に褥瘡ができていた。家庭ではあまり手をかけておらず、皮膚科医がそのまま自宅に置いては到底治らないだろうと入院治療にした。
入院当初は食事介助でほんの少しだけ食べていたが、発熱があり、誤嚥性肺炎を来した。点滴をしようとしたが、末梢静脈からの点滴は不可能だった。
言われて病棟に見に行ったが、両肘関節・両股関節が屈曲してやせた小さな老女が横向きに寝ていた。発語はない。血管から入れようとすれば、内頚静脈から入れるしかなかった。
放射線室まで降ろして、エコーガイドで右内頸静脈からCVカテーテルを挿入した。スルバシリン(ABPC/SBT)投与と点滴を行って、肺炎は軽快した。
しかし経口摂取はできなかった。1000ml/日の高カロリー輸液に切り替えて経過をみることにした。褥瘡の処置もあるので、そのまま安定すれば療養型病床のある病院に紹介して、治療継続となる。内科としては終了?だった。
その後に皮膚科医から、発熱してカテーテル挿入部から膿が出ていると言われた。病室に行くと、確かにカテーテル挿入部周囲の皮膚の発赤・腫脹があった。
カテーテルを抜去を温存して、抗菌薬を入れて頑張るのもあるかもしれないとは思ったが、それはカテーテル刺入部に異常が見られない場合だろう。カテーテルは抜去した。
そうすると、末梢静脈から点滴ができないので、皮下注射で入れるようになる。抗菌薬はセフトリアキソンは皮下注で使用できるはずだが、組織壊死を来しそうでためらわれた。抗菌薬なしで、カテーテル抜去だけで経過をみてもらうことにした。
その後の経過は、発熱もなくバイタルも安定していた。血液培養2セットとカテーテル先端の培養を提出していたが、結果はいずれも陰性だった。カテーテルは温存できたのかもしれない。
しかし患者さんの状態からは、皮下注(500ml/日)でいけるところまで経過をみるのが常識的なのだろう。皮膚科医が家族と話をして、今の対応で最期まで病院でみることになっている(誤嚥性肺炎を来した時からDNARにはなっていた)。