なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

油断して血糖高値

2020年06月01日 | Weblog

 昨年6月に動けない、食べられないと85歳女性が入院した。見るからに老衰という感じで、感染症や新規の脳血管障害もなく、治すところが見当たらなかった。

 点滴をしているうちに反応が良くなり、嚥下訓練をすると意外にも嚥下障害はなく、少しずつ食べられるようになった。後から考えると、ビタミン欠乏(特にB1)が影響したのかもしれないと思った。頭部MRIでウェルニッケ脳症の所見はなかったが、点滴に混合しているビタミンが効いたような印象だった。

 もっとも家庭で手をかけていない(そのままにしていて増悪した)ということもあったようだ。故意にではなく、どうしていいかわらないということのようで、病院で指導すると対応はきちんとしてくれた。

 この方は全盲で、糖尿病腎症からきたという話だったが、詳細は不明だった。糖尿病の治療期間はあまりなく、ほとんどが放置期間だったらしい。入院時はHbA1c6.0%で糖尿病の範疇には入らなかった。その後、外来で検査してきたが、ずっとHbA1cが6.0~6.1%で推移した。

 前々回にHbA1cが6.8%と出て、食事摂取が増えた分、血糖が上がり出していた。一回経過をみて、7%を越すようならDPP4阻害薬を開始するつもりだった。

 今日は予約日で普通に内科再来を受診したが、検査室から血糖が542mg/dLと高値と報告がきた。HbA1c11.4%とこちらも一気に上昇している。患者さんはというと、特にこれまでと変わりはないようだが、訊くとそういえば最近よく水分を欲しがると家族(娘さん)が言っていた。

 甘い飲み物をよく飲むというので、ソフトドリンクケトーシス(ペットボトル症候群)の要素もあるようだ。尿ケトン体は陰性だった。食事摂取も良好すぎるようだ。ご本人は意識も変わりなく(認知症で受け答えは関係ないことをひとこと言うくらい)、困った様子はないが。

 入院してもらって、点滴(リンゲル液)とインスリン注を開始して、できればDPP4阻害薬だけか、BOT(持効型インスリン少量)くらいにしたい。

 CTで確認したが、膵癌の像はなく、腫瘍マーカーも正常域だった。緩徐進行も否定できないので、抗GAD抗体(とCペプチド)も提出した。

 糖尿病の放置で網膜症から失明というのが、本当らしく思われた(前回入院時は本当?と疑っていたので)。

 

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